fukuidayo

人と組織と、fukui's blog

32歳にして会社を辞め、小説家になることを志し、食うために起業したある男のblogです。

書評

3

分析とは何か/定量分析の3つの型

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」分析とは何か。

この問いに対して、明確な答を持つ人はそう多くはないだろう。

マッキンゼーで新人の教育担当をつとめ、脳科学のPh.D.を持つ安宅( kaz_ataka )氏はその著書、「イシューからはじめよ」の中で分析の本質を次のように述べている。


「分析とは比較、すなわち比べること」


安宅氏によると、分析の大半を占める定量分析においては、比較というものは3つの種類しかないと述べている。それは、比較、構成、変化だ。

pattern

比較は、何らかの共通軸で二つ以上の値を比べること。
構成は、全体と部分を比較すること。
変化は、同じものを時間軸上で比較すること。


安宅氏によると複雑に見える分析も基本的にはこの3つの組み合わせで出来ている、という。

ただ、その表現方法は多彩だ。
比較、構成、変化という基本のパターンをかけ合わせるだけでも実に多様な表現が実現されるという。

pattern2

以前、僕はデータ分析に自信を持ち始めたきっかけについて書いたが、この中で僕は残念ながら変化(同じものを時間軸上で比較すること)にしか触れていないことになる。

もちろん、それだけでも深い洞察は出来るのだけど、比較や構成という視点が加わるだけで、その分析の質はきっと何倍にも高まることだろう。

もっとも安宅氏は、こういった分析の型が大事と言っているわけではない。
より重要なことは、本当に答えを出すべき問題(=イシュー)を見極めることだと述べている。

イシューを見極めることによって、アウトプットの質を圧倒的に高め、投下する時間を徹底的に削ることが可能になる、とも。

分析は、イシューを検証するためのひとつのツールに過ぎないのだ。
自分の中に問題解決のための原理、原則を持っている人は強い。そして、早い。

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」
著者:安宅和人
英治出版(2010-11-24)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

29

書評:暗号解読

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)今さらではありますが、サイモン・シンの暗号解読を読みました。
フェルマーの最終定理の後に書かれた作品で、宇宙創成よりは前の作品です。

これで一応、文庫化されているサイモン・シンの作品は全て読破したことになります。
この作品もサイモン・シンの他の作品同様、非常に優れた作品です。

暗号の構造を素人にも理解できるようにわかりやすく解説しながら、暗号にまつわる様々な歴史の悲喜劇を紹介しています。

個人的に印象的なエピソードは、第二次世界大戦中にドイツ軍が採用した、世界最高の暗号機エニグマにまつわるエピソードです。

エニグマの暗号を破るきっかけとなった人物は3人います。

一人目がドイツに恨みを持つドイツ人、ハンス=ティロ・シュミット。
二人目がポーランドの数学者、マリアン・レイェフスキ
三人目が現代計算機科学の父と言われるイギリス人、アラン・チューリング

圧倒的な暗号性能によって解読不可能と言われたエニグマ。
例え暗号作成・解読機であるエニグマ本体が敵(連合国側)の手にわたっても暗号の解読は不可能と言われていました。

ハンス=ティロ・シュミットはそのエニグマの構造に関する情報をフランスに売り渡した男です。

フランスの諜報部はそれでもなお、エニグマに関してはお手上げで、ハンスの情報を同盟国であるポーランドに譲ります。ポーランドは戦争の危険をもっとも感じていた国であり、当時世界最高の暗号解読班を持っていたフランス・イギリスでさえ手を挙げたエニグマの暗号に粘り強く取り組み、ついにレイェフスキはエニグマの暗号解読の糸口を見つけます。

ポーランドは陥落寸前に、それまでにレイェフスキが発見してきた研究成果をイギリスとフランスに譲り渡します。

そして、レイェフスキの仕事を引き継ぎ、発展させ、ついに暗号を破るのがイギリスの暗号解読班であり、その中心となったのがアラン=チューリングです。

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エニグマの暗号を解読できなければ、第二次世界大戦の結果は今と異なったものになったかもしれません。

当時のイギリスはドイツの潜水艦であるUボートに対抗するすべを持たず、イギリス本国への物資輸送がままならない状態でした。長期間にわたり海上封鎖が続けられた場合、イギリスはドイツと講話するしかなかったかもしれません。

暗号の解読が可能になったために、連合国側はUボートの位置を知ることができるようになり、またドイツ陸軍の集結地点を把握することができるようになりました。

敵の作戦が把握できていれば、対抗するための準備をすることは容易くなります。
空で陸で、海で、イギリス軍は手痛い打撃をドイツに与え、戦局を覆します。

暗号の解読が歴史を変えた代表的な例といっていいかもしれません。

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歴史の背後にある、壮大な頭脳の勝負。
かすかな手がかりから暗号を解読する天才たちの偉業がわかりやすくまとめられた素晴らしい一冊だと思います。



4

【書評】完全教祖マニュアル を読んで

完全教祖マニュアル (ちくま新書)完全教祖マニュアル (ちくま新書)
著者:架神 恭介
販売元:筑摩書房
発売日:2009-11
おすすめ度:4.0
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TwitterのTL上で話題になっていたので、読んでみました。思いのほかいい本だったと思います。
本の魅力は、僕が言葉を尽くして説明するよりも、書籍内の見出しを見て頂くのが一番よく伝わると思いますので、いくつか興味を惹いたタイトルを列挙します。
  • 教祖はこんなに素晴らしい!
  • 既存の宗教を焼きなおそう
  • 大衆に迎合しよう
  • 現世利益をうたおう
  • 偶像崇拝しよう
  • 弱っている人を探そう
  • 金持ちを狙おう
  • 他教をこきおろそう
  • 甘い汁を吸おう
  • 奇跡をおこそう
こんな感じ。これでもほんの一部です。

そう、完全教祖マニュアルは教祖になるための方法と利益をマーケティング視点で合理的かつ冷静に、面白く書いた本なのです。

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26

「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト を読んで


「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト (光文社新書)「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト (光文社新書)
著者:酒井穣
販売元:光文社
発売日:2010-01-16
おすすめ度:5.0
クチコミを見る

Twitter上で「良書」と紹介されてたいので、読んでみることにした。

僕は人と組織の問題にとても興味を持っているし、そういった仕事を長い間してきたのだけれど、人材育成に関する本の90%(感覚値)は読むに値しない本だと思っている。何故なら、個人の価値観を押し付けるものであったり、特定の環境でしか参考にならない主張が多いからだ。

そういった書籍に比べると、「日本で最も人材を育成する会社」のテキストは良く考えられて作られている。
  • まず、ターゲットが明確だ。具体的な社内教育を欲している人事にフォーカスしている。
  • 主観を廃し、客観的な立場で述べらている。
  • 育成対象の成長に合わせた方法を提案している。
  • 様々な文献をわかりやすく紹介しており、更に深く学習する際の参考になる。
値段も手頃なので、教育や採用に携わっている方には是非読んで頂きたいと思う。
ここでは、僕が共感した点と、なるほど!と思った点をひとつずつ紹介したい。
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自己紹介
プロジェクトデザイナー。富山県在住。人と組織の問題に興味があります。小説の原稿の断片、日々感じる社会や経済に関する疑問、書評を徒然なるままに。

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