fukuidayo

人と組織と、fukui's blog

32歳にして会社を辞め、小説家になることを志し、食うために起業したある男のblogです。

多様性

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ビジネス視点からBOP市場を語る -市場を開拓する人材要件

ビジネス視点からBOP市場を語る
 その1:BOP市場の特徴
 その2:ターゲット市場の特定
 その3:マーケティング・ミックス Product / Price / Place / Promotion
 その4:日本企業への提言
 その5:市場を開拓する人材要件

さて、暫く更新が途絶えていた、BOP市場に関する一連のエントリを完成させたいと思います。7年前に出版された本を題材に取り上げながら、今も昔も新興市場を開拓する際に求められる能力はそう変わらないことについて、少し書いてみたいと思います。

かつての日本的経営手法、今のMBAで学ぶ一連の経営手法も、現地の文化や慣習を理解せずに導入しようとすると、下りのエスカレーターに向かって駆け上がるかのような徒労感を感じます。

一方、現地に関して詳しい理解を得た後で、それに迎合するのではなく、その文化や慣習すら業績向上につなげるように、培った知識や技能を活かすことができる人材が求められているということについて触れたいと思っています。

国が違えばもちろんのこと、都市と地方のように地域が変わることでも、組織が異なることでも、似たような壁にぶつかることはあるのではないかと思います。いかにそれを受け入れ、自分の知見を加え、より良い形に昇華させるか。それは現代を生きる多くのビジネスパースンに必要な能力ではないかと思います。

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ここに一冊の本があります。プロが教える問題解決と戦略スキルと題された文庫で、相葉宏二氏の手により2003年に刊行された日経文庫です。

2003年といえば、中国の躍進が目覚ましく、1990年代から続く日本企業の中国進出ブームを経て、中国進出に成功した企業とそうでない企業の違いが鮮明に見え始めていた頃です。この本でもそのような時代背景をもとに、冒頭で中国に進出したはいいが、その後の展開に苦労する日本企業の姿がケースドラマとして描かれています。

簡単に内容を紹介したいと思います。

日本の大手電機メーカーであるY社は中国広東省のパートナーと白物家電の基幹部品を生産する合弁会社を設立した。社長として現地に赴任したのは北村氏。現地パートナーから副社長として派遣されてきたのは張氏。合弁会社はY社として初めての試みではあるが、北村氏は日本の本社と密に連絡を取り、了解を得たうえでものごとを進めていくことが出来れば、時間とともに日本的経営と生産システムの良さは浸透していくだろうと考えていた。

立ち上がりは順調で、生産・営業ともに短期間で大きく拡大した。北村氏は事業の拡大とともに自信を深め、生産から営業等の分野への関与を深めていった。具体的には下記3点を提案する。
  • 歩合制で動いている営業担当の固定給割合を高める
  • 人事、購買、財務に対しての詳細な報告
  • 購買面での不正、リベート支払いの停止
以上を求めたが、張氏は北村氏が現地のビジネス慣行を分かっていない。と北村氏の提案をはねのける。二人は表立って対立するようになり、北村氏のもとにはいつしか正確な情報すら入らなくなってしまった。

そうこうしているうちに、営業担当が強引な拡販を続けた結果、支払い能力に乏しい企業との付き合いが増え、資金繰りに苦労するようになった。同時に、中国に展開する日本企業からは納期と品質が不安定という理由で、取引を停止されるケースが増えてきてしまった…

このような感じの内容です。

書籍の中では北村氏に代わり海外経験が豊富な新代表が派遣され、合理的な思考と柔軟な対策を実施することによって、見事立て直しに成功するというストーリーが描かれます。フィクションではありますが、このショート・ストーリーは当時の日本企業の多くが直面していた問題を一般化したものであり、日本企業が新興国やBOPといわれる市場に進出する際に抑えておくべき多くの学びが内包されているように感じます。



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国がトップダウンで決める教育のあり方では、もう間に合わない

今日はいくつか教育に関しての気になるエントリを見かけた。ひとつは下記。

教育の改革は火急の問題 - 松本徹三

前半部分の日本の塾システムの馬鹿馬鹿しさに関しては、一方的な見解で納得出来るものではないが、後半部分の松本氏の主張には賛同できる。
画一的な価値観ではなく、多様な価値観に支えられた教育。それぞれの人間の多種多様な興味を尊重し、それを育てていくような教育。表面的なものではなく、真に自らが誇れる「実力(競争力)」を身につけられる教育。そういう教育こそを、日本の若者達の為に、我々はこれから作り出していかなければならないのではないでしょうか。
もっとも、上記のような教育を実現するためには、教育システムの改革の前に親の改革が必要だ。(記事中に出てくる夫妻は、中高一貫校以外の選択肢を考えていないのだろうか?)

しかし、多様な価値観が認められ、多種多様な興味が尊重されるようになれば、それは個人が持つポテンシャルを最大限発揮する社会につながると思う。(この点に関しては、もし宜しければ過去エントリ 知能を幅広く捉える をご覧頂きたい。)

もうひとつは、Twitterでkojisato515さんが、大学の分野別品質保証の在り方検討委員会に呼ばれたという話だ。

前述のように、僕は教育に関して多様な選択肢が選べれば良い、と思っているのだが、行政主導のトップダウン形式で大学の学びの品質を定義することは危険を感じる。

現在、ゆとり教育が問題になっているが、ゆとり教育とは第二次ベビーブームの頃の過酷な受験戦争が社会問題化したときに、提唱された。実際に施行されたのは少子化が進み、大学全入時代が始まってからだった。この頃には学生の学力不足が問題にされるようになっていた。

たとえ良い施策であっても、時期を間違えると効果的に機能せず、逆に歪みを作り出す。
そして、政府や行政の意思決定は多くの場合において、市場の調整機能よりも遅く、硬直的だ。
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自己紹介
プロジェクトデザイナー。富山県在住。人と組織の問題に興味があります。小説の原稿の断片、日々感じる社会や経済に関する疑問、書評を徒然なるままに。

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