僕が新卒で入社した会社の直属の上司は素晴らしい方だったんだけど、当時の僕には理解できないことがひとつあった。それは、上司の上司(つまり当時の部門のトップだ)の仕事のやり方はもちろん、話し方からしぐさ、言葉遣いまで徹底的に真似していたことだ。

聞くところによると、僕の上司のそのまた上司もまた同じように、自分の上司の真似を徹底的に行なったそうだ。

それはつまり、関西人でもない人が関西弁になることを意味し、僕にとってそれはオリジナリティがないように感じられたし、プライドもないように感じられた。

「本当に尊敬する上司に出会ったら、自然と真似をしたくなるものだよ。」

当時の僕の上司は僕にそう説明してくれたし、僕に自分の真似をするよう強要するようなところは微塵もなかったけれど、僕にはその言葉の意味がさっぱりわからなかった。

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今でも僕は自分自身のオリジナリティというものを非常に大切にしているし、人の真似をしたいと思うことなんてほとんど無いけれど、自然と真似をしたくなる。という当時の上司の言葉は少しわかるような気がする。

自然と真似をしたくなるような上司に出会うことができたら、それはとても素敵なことなのだ。
人によってそれは、現実の上司ではなく、小説の中の龍馬や、漫画の中の海賊王だったりするかもしれない。それはそれで構わない。ロールモデルは心の中にあればいい。

気づくのには時間がかかるし、気づかずに一生を終える人もきっと多いだろうけれど。
僕はそう思う。