プロジェクトを設計(デザイン)し、前に進める。という仕事に取り組み始めてから、ありがたい事に多くの仕事の相談や依頼を受けるようになった。やってみて感じるのは、企画するだけでなくて、ものごとを確実に前に進めてくれる人をどこの企業も求めているんだなー、ということ。

プロジェクトを設計し、前に進める。というと大層なことをやっているように思えるかもしれないけれど、実は僕がやっていることは本当に単純で、

・アジェンダをつくり
・会議をファシリテートし
・議事録を作成する

ということをしているだけだ。もちろんプロジェクトを円滑に進めるために必要であれば、情報共有やプロジェクト推進のツールを提供したりもするけれど、基本的には無料で利用でき、汎用性の高いものしか使わない。

プロジェクトを前に進めるために、ちょっとしたTIPSのようなものも身につけてはいるつもりだけど、基本はやっぱり議事録だと思う。

企業の中には、一番若い、あるいは役職的に一番下の人が議事録を書くというケースも多いと思うけれど、ことプロジェクトの推進に関わる会議ではこれはダメだと思う。そんなプロジェクトは失敗する確率が高い。基本は、

1)会議をファシリテートする人がアジェンダをつくり、議事録をとるべきだ。
2)それが無理なら、会議をファシリテートする人と同じレベルでものごとを考えられるNo.2がそれに取り組むべきだ。
3)それも無理なら、優秀な若手にアジェンダ作成と議事録を任せ、ファシリテーターがすぐに、かつしっかりと目を通してアジェンダと議事録をレビューすべきだ。

それが出来ているプロジェクトは、力強く前に進む。
出来ていないプロジェクトは前に進まない。

それだけのことだ。
本当にわかりやすい。

逆に言うと議事録を任せられた若手は「めんどくせー」と言わず、自分が実質的なプロジェクトリーダーになったつもりで、議事録作成にあたるべきだ。実際に、議事録の担当になった人はそれぐらいの権利を持つことになる。

何故なら、

アジェンダを作成できる:これは実質的に会議で決めること、話すことの主導権を握ったも同じことだ。会議の前に自分の考えをファシリテーターにぶつけ、吟味することが出来る。

議事録を作成できる:これにはいくつかのメリットがある。
・プロジェクトの全体像、推進すべきタスクに関して誰よりも詳しく理解できる。
・進捗が滞っているものや人、明確になっていないものに関して立場上確認が取れる。

まさに、議事録担当はプロジェクトの実質的なリーダーと言えよう。自分が未熟であれば、実質的なリーダーになるための最良のトレーニングの場だとも言える。(その意識をもって議事録作成にあたるのであれば。)

さすがに毎日毎日議事録を書いていると、どのような議事録が簡単で、プロジェクト推進に効果的なのかわかってくる。

というわけで、僕が普段利用しているアジェンダ、議事録のテンプレートを紹介したいと思う。

議事録ってどうとればいいの?と悩んでいる企業経営者や若手社員の方にも読んで頂き、事業の推進や若手社員の育成に役立てて頂ければと思う。

テンプレート:アジェンダ

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ABCmtgアジェンダ 20XX年XX月XX日
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参加者: Aさん、Bさん、Cさん、fukui(議事録)
使用資料:

■プロジェクトのゴール確認    ========================================

(ゴール)
・ ○月○日までに、売上○万円を達成する。
(マイルストーン)
・ ○月○日までに、商品販売用のサイトをオープンする。
・ ○月○日までに、試作品を作成し、テストマーケティングを行う。

■本日のアジェンダ    ================================================

1)タスクの進捗状況の確認
1-1.○○紹介ページの原案を作成する            1月20日    A氏
1-2.○○店頭ディスプレイ用の箱を探す            1月26日    B氏
1-3.○○社に商標利用の許可をとる                1月27日    C氏
1-4.○○に関する商品提案 書の原案作成            1月31日    fukui

2)大見出し
2-1.小見出し
2-2.小見出し

3)大見出し
2-1.小見出し
2-2.小見出し

4)大見出し
2-1.小見出し
2-2.小見出し

※各部門から追加の議題があれば○月○日○時までに、コメントをください。



アジェンダ作成の注意点

・アジェンダに盛り込むもの

タイトル:何の会議か、どういうメンバーが集まる会議か分かりやすく
日時:いつ集まるのか。必要であれば会場も。
参加者:参加を呼びかけるメンバーの名前を記載します。議事録作成担当の指定なども。
使用資料:会議で用いる資料を記載します。必要であれば添付します。
プロジェクトのゴール、マイルストーン:時として、プロジェクトのゴールとマイルストーンが忘れ去られ、枝葉末節の議論になってしまうことがあります。毎回記載するわけではないですが、特にスタートしたばかりのプロジェクトではメンバーの意識をゴール達成にフォーカスさせるために、毎回書くようにします。
大見出し・小見出し:検討項目を書きます。僕は一つ目の議題は前回の会議で設定したタスクの確認から入ることが多いので、一つ目の議題は前回の議事録のNextAction欄のタスクをコピー&ペーストします。

僕の議事録テンプレートの特徴は、プロジェクトのゴールとマイルストーン、それを達成するためのタスクを毎回参加メンバーに意識してもらうことだと思います。ゴール/マイルストーン/タスクが毎回設定されていたら、スピードに差はあるかもしれませんが、確実にプロジェクトは前に進み始めます。
タスクを考えるときに意識しなければいけないのが、負荷が集中することを防ぐことです。特定の人物に負荷が集中し、タスクが遅れ気味になっている場合は全員で解決策を検討すべきでしょう。またファシリテーターから会議の合間に進捗状況に関しての確認やアドバイスもすべきでしょう。

・アジェンダはテキストで作成し、メールで送る。

僕はテキストでアジェンダを作成し、メールで送ります。その後Sitesなど、プロジェクトメンバー用の情報共有サイトにも載せます。これは閲覧性と検索性を重視しているためです。立場も使える時間もばらばらな人が集うプロジェクトでは、どうしてもアジェンダや議事録は見てもらいにくくなるためです。しかし、メールの本文を読めばいいだけであれば余計な操作も必要ありませんし、後で検索したいと思った時も容易です。
もちろん、テキスト&メールではしっかりした議事録がかけない。という企業の方も多いと思いますし、社内や特定のクライアントとの限定のmtgであれば、ExcelやWordの議事録でも問題ないと思います。

・アジェンダ作成後はプロジェクトのリーダー、ファシリテーターに確認をとる。

自分が会議のリーダーでなければ、アジェンダに関して事前にリーダーの確認をとる必要があります。ファシリデーターでもなければ、ファシリテーターからも確認をとる必要があります。確認する場合は、

・○月○日までに確認してくださいという記載。
・気になる点を確認、意見を求める。

ことを忘れないようにすべきです。逆に言うとアジェンダを作成し、リーダー、ファシリテーターと毎回このように密接にコミュニケーションをとるからこそ、アジェンダ・議事録作成者は、実質的にプロジェクトを仕切ることになるのです。

リーダー、ファシリテーターに内容の確認をとったあとはメンバーから追加の議題がないか確認します。

・アジェンダは可能であれば、数日前。遅くとも前日には送る。

数日前にアジェンダを送ることが出来れば、会議までに未達となるタスクは減りますし、達成されたタスクに関してもひとつひとつのクオリティが高まります。これはプロジェクトの推進に無駄が生じるのを防ぎます。前日におくると、達成できてないタスクに気づいても慌てて取り組むことはほぼ不可能になりますから、アジェンダ送付が直前になる場合には重要なタスクに関しては、事前に電話やメールでリマインドを担当者にしておくといいかもしれません。


テンプレート:議事録

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ABCmtg 議事録 20XX年XX月XX日
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参加者: Aさん、Bさ ん、Cさん、fukui(議事録)
使用資料:

■決定事項          ==================================================





■今後のAction      ==================================================

(タスク)
・○○紹介ページのデザインを依頼する            1月20日    A氏
・○○店頭ディスプレイ用の箱の見積をとる        1月26日    B氏
・○○社に対してのテストマーケティングを行う。    1月31日    fukui

(継続検討事項)

■本日のアジェンダ    ================================================

1)タスクの進捗状況の確認
2)A 社から指摘を受けた問題点に関して
3)B交通による流通の改善に関して
4)C分科会のミーティング体制に関して
※各部門から追加の議題があれば○月○日○時までに、コメントをください。

■具体的検討内容    ==================================================

1)タスクの進捗状況の確認
1-1.○○紹介ページの原案を作成する            1月20日    A氏
    - 発言(名前)
    - 発言(名前)
1-2.○○店頭ディスプレイ用の箱を探す            1月26日    B氏
    - 発言(名前)

1-3.○○社に商標利用の許可をとる                1月27日    C氏
    - 発言(名前)
    - 発言(名前)
    - 発言(名前)
1-4.○○に関する商品提案書の原案作成            1月31日    fukui
    - 発言(名前)
    - 発言(名前)

2)A社から指摘を受けた問題点に関して
2-1.
    - 発言(名前)
    - 発言(名前)
2-2.
    - 発言(名前)
    - 発言(名前)

3)B交通による流通の改善に関して
3-1.
    - 発言(名前)
    - 発言(名前)
3-2.
    - 発言(名前)
    - 発言(名前)

4)C分科会のミーティング体制に関して
4-1.
    - 発言(名前)
    - 発言(名前)
4-2.
    - 発言(名前)
    - 発言(名前)

以上



議事録作成の注意点


・議事録にはまず、決定事項を書く。

議事録には決定事項を書きます。その会議で皆の合意がとれたもの。あるいはプロジェクトのリーダー等から指示が出たものに関しては決定事項として、議事録の最初に記載します。詳細を読まなくともこの決定事項欄と次のタスク欄に目を通しておけば、他の会議の参加者に迷惑がかかることを防ぎ、次の会議にスムーズに入っていけるように書きます。
大事なことを要約する力が必要になるので、会議で決まったこと、大事なことを見逃さない力が必要になります。また、本来決めるべきことを決めずに会議が進むようでしたら、議事録担当者として、リーダーなりファシリテーターなりに、その議題に対しての扱い(結論をだすのか、未決事項として次回におくるのか)に関して確認をとるようにします。

・今後のアクションには、担当者名と納期をしっかりと書く

今後のアクションを毎回設定し、各自が滞り無くその仕事をこなすよう、会議を誘導するのがファシリテーターの役割です。会議の参加者が自分の役割をすぐに理解できるよう、今後のアクション欄には、担当者名と納期をしっかり書くようにします。
会議で決まりきらず、次回の会議に持ち越しとなったものに関しては、継続検討事項として別途書きだしておきます。

・大見出し、小見出し、発言

議題は大見出しと小見出しをつけます。これは論点を整理し、読み手が会議の流れスムーズに理解できるようにするためです。ここらへん、トピックの関連性を理解し、構造化する力が求められます。考える技術・書く技術が必要となるのは何も戦略立案の時だけとは限らないんですね。

発言を書くかどうかは思案のしどころです。発言を書くと、後で問題になったときに追求されるから嫌だ。という理由で発言を記録しない議事録も多いと思います。また、それ以外の理由でも発言を書くと議事録が冗長になってしまうから、いらない。という場合もあります。

僕はこれは企業の体質やプロジェクトの性質に合わせて発言を書き取るかどうか(名前を入れるかどうか)を決めればいいと思います。個人的には後で問題になったときに、名前が残るのは嫌だ。という理由で議事録に名前が残るのを嫌がる人には(もちろん後で問題になったときに名前をもとに個人を非難する人にも、ですが)プロジェクトには入ってほしくないですね。そういうプロジェクトは必ず失敗しますから。

誰が言った意見か、によって受け止め方や重みが異なってくることもあるので、基本は名前を書くのが良いのではないかと思います。

・文章は簡潔に。必要な発言のみを残す。

会議で話される発言は膨大なので、それらを全て書き取ると議事録はとても読めたものではなくなります。だから、発言自体を短く(100字以内)表すのはもちろんのこと、会議の流れや今後の検討に不必要な意見や感想は思い切って削除していく必要があります。この削除の基準はリーダーやファシリテーターとすりあわせながら精度を高めていくのがいいように思います。


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なにやら最初考えていたよりも随分長いエントリになってしまったけれど、しっかりした議事録を作成することによるプロジェクト推進のスピードアップ効果と、議事録担当者の能力向上効果は凄いものがある。是非、積極的に議事録作成に取り組んでみてもらいたい。

そしてそれ以上に、上司やプロジェクトのリーダーは、部下やメンバーが作成したアジェンダや議事録に簡単に目を通すだけでなく、しっかり時間を書けて内容を読み、レビューして欲しい。それがプロジェクトメンバーの能力向上にも、プロジェクトの成功にもつながることになるのだから。



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※不幸にも議事録の重要性がわからない上司、内容のレビューをしてくれない上司に出会ってしまったら、この本でも読んで毎回時間をかけてわかりやすい議事録を書くよう、自分で努力するしかないかもしれない。でも、それだけの価値はきっとあるはず。