例えば何万人という人間が絡む、戦争や政治の世界では、一人の兵士が果たせる役割などたかが知れている。どんな勇者がいても、一人で戦局を打開することなんて出来やしない。

政治や大企業の中で働いている人の中には戦局を動かすだけの力のない自分の立場を嘆きたくなる人もいるだろう。

一方、そういう厳しい現実があるからこそ、アニメや漫画には、一兵卒の活躍からはじまり英雄譚へとストーリーが昇華する物語が描かれるわけだし、それを読んで僕たちはワクワクする。

戦局を変えた白い悪魔の物語が「ガンダム」なわけで、一隻の潜水艦が国際政治を動かせるかどうか夢想した作品が「沈黙の艦隊」だ。戦場の圧倒的な巨大さと小さな軍隊の頼りなさを描いた物語としては、(マイナーだと思うけれど)PS2の「絢爛舞踏祭」なんかがいい味だしてたと思う。ほんの小さなボタンの掛け違いの連鎖をおこすことが出来れば、銀河に100年の平和をもたらすことが出来るというような、ミクロからマクロへの挑戦という設定は、現実には大変厳しいからこそ、ロマンをかきたてられる。

では、現実世界では、自分という一人の小さな個人が大きな組織を動かすことは出来ないのか。というと、完全に不可能というわけでもなく。

例えばディー・エヌ・エーを例に挙げると、モバゲータウンを開発した一人のエンジニアや、「怪盗ロワイヤル」の開発者なんかは、確かにディー・エヌ・エーの大きな変化を産み出す震源地となったわけだ。

もっとも、じゃあ彼らのようなスーパーな結果を残さねば組織は動かせないのか。というと必ずしもそうではない。彼らを採用してきた採用担当者や、知恵を蓄えてきた開発陣、ここまで企業を存続させてきた営業・マーケティング担当者一人一人が大きな変化を産み出す活動に一役買っているわけで、そう考えると、一人一人の小さな努力や生み出してきたちょっとした「違い」がバタフライ・エフェクトとなって、世界を変える。なんてことが起こりうるのが人生の面白いところじゃないかと思う。

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さて、猛烈に前置きが長くなってしまったけれど、こんなことをふと考えたのは、やはり県の青年議会の活動の影響だろう、と思う。
以前、ブログにちらっと書いたのだけれど、僕は7月から県の青年議会なるものの活動に取り組んでいる。100日間の活動をへて、模擬的な議会で、県知事にふたつほど提案(質問)が出来るという活動なのだけれど、可能であれば何らかの変化を起こすことが出来ればいいな。と漠然と考えている。

もっとも、変化を起こすことが出来なくとも、週に一度程度集まって話しあうメンバーの皆さんとの会話は大変勉強になったし、刺激も受けた。当初の目的はほとんど果たしているといっていいのだけれど、ここまできたらちょっとした変化を起こしてみたい、と思う。

その小さな動きから大きな変化を産み出す一手は何なのか。
それを考えるのが最近は楽しいわけです。

今のところ質問のテーマに掲げたいと考えているのは、富山県への定住促進。

どの地方自治体でも人口の減少は大きな問題になっていて、今後は減り続ける人口とどう付き合っていくかを考えなければいけない時代に入ってきているわけです。

富山県では2005年に110万人だった人口が2035年には85万人まで減ると試算されている。
しかも、減少するのは若年人口及び、15~64歳までの生産年齢人口だ。(高齢者の人口は6万人ほど増加する。)

県としては、人口減少を食い止めるまではいかなくとも、なんとか減少のスピードを抑えたいと考えているわけで、それを実現するための方法は大きく分けると3つしかない。
  1. 出生率を高める。
  2. 県外への転出人口を減らす。
  3. 県内への転入人口を増やす。

この中で、僕たちのチームが注目しているのは県内への転入人口を増やす。という考えだ。出生率を高めるよりも比較的短期間で効果が出る可能性があるし、県外への転出人口は年間21千人程度でほぼ一定だ。それに比べて、転入人口は近年大きく落ち込みを見せている。

もし今後25年間にわたって3000人ずつ県外に人口が流出するとなると、人口減少の影響は7.5万人に達する。もしこれをゼロにすることができたら、それは凄いことじゃないかと思うわけです。

population

graph


転入数の増加にしても、個別の施策で出来ることは限られているし、ひとつひとつの施策でもたらされる影響は限定的だろう。

転出数は進学率の向上により少子化の影響が顕在化していないだけとも取れるし、転入数は平成14年にも落ち込みを見せていることから、景気・就職といったマクロの経済動向の影響が大きいだけとも考えられる。

大きな流れの中で、個別の小さな提案なんてほとんど意味が無い。そういってしまうことは簡単だけれども、そういった現状を踏まえつつ、千丈の堤を崩す蟻の一穴となるような案が出せないか、知恵を絞るところに人生の面白みがあるはずだ。

発表は10月29日。まだ準備する時間は充分ある。