パンとハムとレタスは既にあった。
カードをしながら食事を摂りたいと考えたある紳士が、ハムとレタスをパンに挟んで食べることを思いついた。
こうして、サンドイッチが生まれた。

この短い伝説は「デザイン」が持つひとつの価値を端的にあらわしている。

既に保有しているモノの価値を掘り起こし、結びつけ、パッケージし直し、時代のニーズにあった新たなものにつくりかえる。そこに付加価値が生まれ、時に爆発的にヒットする。

もともとある価値を掘り起こすわけだから、投資に必要なコストは少なく、市場に投入するまでの時間が短時間で済む。

衰退市場で苦戦している企業が「事業ドメインの再定義」を行うことで、復活するケースもこの"デザイン"があたったケースと言える(メーカーからの脱皮を遂げたIBMなんかが良い例か)だろうし、任天堂が得意とする枯れた技術の水平思考も、価値を掘り起こし、パッケージし直し、時代のニーズにあったものにつくり変えている例と言えるだろう。

簡単か、と言われるとそうでもない。

しかし、資源に限りがある企業経営者や行政担当者にはこういった視点が必要だ。
強みは既にある。それをいかに結びつけ、パッケージし直し、世に送り出すか。

最近はそういった仕事にこの上ない魅力を感じている。