忘れかけていた大切なことを思い出させてくれる記事があったので、ご紹介。

村上春樹ロングインタビュー -勇気と想像力、そして少々のお金

村上:習慣はすごく大事です。とにかく即入る。小説を書いているときはまず音楽は聴きませんね。日によって違うけれども、だいたい五、六時間、九時か十時ころまで仕事します。

- 朝ごはんは食べずに。

村上:朝ごはんは、七時ころにチーズトーストみたいなのを焼いてちょっと食べたりするけど、時間はかけない。

- あとはひたすら書いているのですか。

村上:そうですね。だれとも口をきかないで、ひたすら書いています。十枚書くとやめて、だいたいそこで走る。

- 十枚というのは、四百字づめの原稿用紙に換算しての十枚。

村上:そう。僕のマックの書式だと、二画面半で十枚。書き終わると、九時か十時くらいになります。そしたら、もうやめてしまう。即やめる。

- そこから先は書かないんですか。

村上:書かない。もう少し書きたいと思っても書かないし、八枚でもうこれ以上書けないなと思っても何とか十枚書く。もっと書きたいと思っても書かない。もっと書きたいという気持ちを明日のためにとっておく。それは僕が長距離ランナーだからでしょうね。だってマラソン・レースなら、今日はもういっぱいだなと思っても四十キロでやめるわけにはいかないし、もっと走りたいからといってわざわざ四十五キロは走らない。それはもう決まりごとなんです。

- たとえば青豆と天吾の章が交互に出てくるBOOK2で、青豆とリーダーの対決のシーン
が終わったところが、その日の六枚目だとしても、つぎの章を四枚書くわけですか。

村上:もちろん。

- どうしてペースを守ることが大事なんでしょう。

村上:どうしてだろう、よくわからない。とにかく自分をペースに乗せてしまうこと。自分を習慣の動物にしてしまうこと。一日十枚書くと決めたら、何があろうと十枚書く。それはもう『羊をめぐる冒険』のときからあまり変わらないですね。決めたらやる。弱音ははかない、愚痴は言わない、言い訳はしない。なんか体育会系だな(笑)。

こんな秀逸なインタビューがあることと、その存在を教えてくれたブログ主に心から感謝したいと思います。

このインタビューを見たときに思い出したのが、次の言葉。

思いの種を蒔き、行動を刈り取り、
行動の種を蒔いて、習慣を刈り取る。
習慣の種を蒔き、人格を刈り取り、
人格の種を蒔いて、人生を刈り取る。

昔、この言葉を目にしたときは、「いい言葉だな」と思ったものの、実は自分にはいまひとつピンときていませんでした。「思いが行動をつくる」ところまでは、当時の僕の乏しい頭や心でも理解できたものの、習慣の重要性はまるでわからなかったし、ましてや人格の重要性なんてさっぱり理解できませんでした。

人生を思うように刈り取りたい。という野心だけはあったから、なんとなくフレーズは覚えていたものの、そうでなければこの格言すらさっぱり忘れてしまっていたと思います。

正直な話、今でも人格の重要性を理解しているとはいい難いです。ただ、村上春樹のインタビューを読んで、習慣の重要性に関しては閃くものがありました。

習慣と人格の繋がりはまだわからないけれど、習慣が成果を産み出す。ということは言えるのではないかな、と。

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村上春樹さんに限らず、大きな成果を残した人は自分のルール(習慣)を持ち、それを頑なに守っているような気がします。

小さな例ですが、名刺交換した方に必ずその日のうちにお礼のメールを出す。という人が、僕の後輩にいました。もちろん、一定の文面を送るだけではなく、きちんと一人一人に対して異なる内容のメールを書くわけです。お礼だけでなく、相手の悩みや問題の解決につながるような内容をそっと盛りこむようにしていました。

その後輩はいつしか誰よりも多くの顧客を持ち、信頼される営業担当になっていました。こういった小さな成功を産み出す習慣は実は誰もが多かれ少なかれ持っていることのような気がします。

気づかぬうちに身につけた「良い習慣」は、意識していないとあっという間に失われてしまいます。

  • 自分にはどのような「良い」習慣があるか。
  • これからどのような習慣を身につけたいか。

それは定期的に考えてみる価値のある問いのように思います。


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