チェスや将棋など、洗練されたシンプルなゲームを遊ぶときに、

  1. 多くの選択肢を考えて、その中から最適なものを選ぶ、という人と
  2. 思いついたひとつの発想を夢中になって実行しようとする人

以上のように、思考のスタイルは大きく2種類にわかれる。深く考えず手を進める人もいるかもしれないが、それは除外する。もちろん強いのは、「多くの選択肢を考え、最適なものを選ぶ人」なのだが、残念ながら僕は「ひとつの発想を夢中になって実行する」傾向がある。

これはかつて上司に指摘されたこともあるし、僕自身も仕事がうまくいかないときは、大体「ひとつの発想」にとらわれてしまっているケースが多い。
孫正義は、最初の事業を興すときに、毎日ひとつの発明をするという取り組みを365日にわたって続け、その中で最も最適と思われたプラン ―自動翻訳機を形にし、最初の事業資金を得ることに成功した。
これなんかは、「現実社会で」多くの選択肢を挙げ、最適なものをひとつ選んだ分かりやすい例だと思う。

ただ、現実社会では必ずしも「多くの選択肢を考え、最適なものを選ぶ人」が成功するとは限らない。これは、選択肢を考えるのに時間をかけすぎて、最適なチャンスを失ってしまうからだろう。いってみれば、チェスや将棋の持ち時間がなくなってしまった状態だ。現実にはそのようなケースが非常に多い。

また、戦場に霧がかかったような状態であれば、動くことによって見晴らしの良い状況になることも少なくない。これはリスクを抑えたトライ&エラーにあたる。

だから実際には、時と場合に応じて最適と思われるだけの時間をかけることが重要。という非常につまらない答えに落ち着きがちなのだけれど、自分がどのような傾向(思考の癖)があるかを把握しておくだけでも、意思決定の精度は随分高まるのではないかと思う。

例えば僕の場合は、ひとつの発想に夢中になる傾向がある。

だから、僕みたいな人は時間にさえ余裕があるのであれば、可能な限りプランを出し、最も良いものをひとつ選ぶという活動をする努力をしてみるべきなのだろう。

シンプルなゲームは、自分の思考の傾向を客観的に掴むのに役に立つ。
現実の世界は油断していると際限なく複雑になっていく。
その現実の波から逃れるために、僕は時々ゲームをする。