今日、黒沢さん( post_office0328 )、斉藤さん( ryu_saito )と、Skypeでちょっとした会議をしていたのだけど、斉藤さんから、アフリカビジネスの現状に関して、いろいろと興味深い話を伺った。
これまでハッキリと言葉に出来ていなかったが、いくつかの「混同」がアフリカについて語ったり、理解することを難しくさせているような気がするので、その点について少し書いてみたい。(斉藤さんは、ケニア・ソマリアを中心に活動する、紛争解決のNGO職員。昨日の会議もSkypeでの参加だった。)
■アフリカの多様な国々
アフリカには、南アフリカ共和国のように急速に豊かになっている国もあれば、世界最貧国のブルンジ共和国のような国もある。宗教のもと、政治的に安定している国もあれば、紛争が絶えない国もある。
本来、歴史も経済状況も異なる多様な国が集まっているのが「アフリカ」なのだが、アフリカという名のもと、様々な一般化をして考え、語ってしまいがちなところが、「アフリカ」を理解することを難しくさせている。
これが第一の混同だ。
これまでハッキリと言葉に出来ていなかったが、いくつかの「混同」がアフリカについて語ったり、理解することを難しくさせているような気がするので、その点について少し書いてみたい。(斉藤さんは、ケニア・ソマリアを中心に活動する、紛争解決のNGO職員。昨日の会議もSkypeでの参加だった。)
■アフリカの多様な国々
- アフリカには53の国があり、9億6345万人の人が住む。
- GDPはアフリカ全体で1兆3000億ドル。日本が5兆6000億ドルだから、アフリカ全体で見て、日本のGDPの4分の1弱のGDPだ。
- 大きく5つの地域にわかれ、北アフリカは文化・宗教的にアラブと深いつながりがあり、中東・アラブと一括りにされることも多い。
- それ以外の地域はサブサハラと言われ、言語も、所得水準も、政治の安定度も、国ごとに大きな違いがある。
アフリカには、南アフリカ共和国のように急速に豊かになっている国もあれば、世界最貧国のブルンジ共和国のような国もある。宗教のもと、政治的に安定している国もあれば、紛争が絶えない国もある。
本来、歴史も経済状況も異なる多様な国が集まっているのが「アフリカ」なのだが、アフリカという名のもと、様々な一般化をして考え、語ってしまいがちなところが、「アフリカ」を理解することを難しくさせている。
これが第一の混同だ。
■存在感を示すのは一部の限られた企業
第ニの混同は、日本企業の存在感に関するものだ。
斉藤さんからは、ケニアで起業した芝さん(@you_shiba)の話を伺った。芝さんは、「今、事業をおこさなければケニアのIT分野は中東やインド資本に全て抑えられてしまう。」という危機感から事業を立ち上げられたそうだ。現地にいるからこそ、強い危機感を肌で感じることができるのだろう。
もっとも、日本企業がアフリカ全土で存在感がないかというと、そんなことはない。
トヨタ自動車はアフリカの自動車シェアの18%を抑え、トップブランドとなっている。シェアこそ劣るが日産も8%のシェアを持ち、近年積極的に展開している。
自動車以外の分野でも、ヤマハ発動機はオートバイや船外機の分野で活躍しているし、パナソニックやソニーなど家電の進出も進んでいる。教育分野では、理想科学工業の印刷機や公文の学習法などは広く浸透しはじめている。
ただ、このようにアフリカでの進出例として語られる企業の多くは大企業だ。
旺盛な起業家精神を持ち、トップダウンでスピーディーな意思決定を行う中国、インド、中東などの企業に対抗するには、芝さんのように日本の中小企業やベンチャー企業が先頭にたって、アフリカという市場に目を向けるようにならなければいけない、と感じる。
中国などは、国を挙げてアフリカの資源獲得に取り組んでいるが、大企業が抑えきれていない細かなニーズを、小規模な企業や個人事業主が巧みに埋めている。
日本の製造業は世界に誇る産業だが、起業家精神をもった中小・ベンチャー企業がアフリカに進出するようにならなければ、今後、日本企業の存在感は急速に薄れていく。また、アフリカ各国の市場が急成長をはじめたときに、その波に乗り遅れてしまう可能性も高くなるだろう。
特定の業種や特定の規模の企業だけをピックアップして、日本企業のアフリカでの存在感を語るのは、ミスリーディングに繋がる。
■アフリカという市場の可能性
アフリカは最後の新興市場と言われる。それは経済発展に必要不可欠な、次の条件を満たす国が増えつつあるからだ。
豊富な若年人口は、労働供給と需要の急速な拡大をもたらす。
充実した教育は労働の品質を高める。(植民地時代に十分な義務教育が行われなかったことが、今のアフリカの多くの問題の原因となっている。)
政治の安定は、企業家精神の発揮を促し、海外資本を引き寄せる。
中国は、世界2位のGDPを持つ大国となっている。これからも市場は伸び続けるだろうが、今後は急速な高齢化社会の到来が考えられ、多くの社会問題との闘わなければならなくなる。
注目される市場は中国からインドやベトナム、インドネシアやバングラデシュに移り、アフリカの国々に至る。もちろん国によって発展に到るまでの時間はそれぞれ異なり、3つの条件を満たした国から成長が始まる。
確実に来る未来に対して、日本の企業も積極的に手を打ち始める時期ではないかと思うが、どうだろうか。
第ニの混同は、日本企業の存在感に関するものだ。
斉藤さんからは、ケニアで起業した芝さん(@you_shiba)の話を伺った。芝さんは、「今、事業をおこさなければケニアのIT分野は中東やインド資本に全て抑えられてしまう。」という危機感から事業を立ち上げられたそうだ。現地にいるからこそ、強い危機感を肌で感じることができるのだろう。
もっとも、日本企業がアフリカ全土で存在感がないかというと、そんなことはない。
トヨタ自動車はアフリカの自動車シェアの18%を抑え、トップブランドとなっている。シェアこそ劣るが日産も8%のシェアを持ち、近年積極的に展開している。
自動車以外の分野でも、ヤマハ発動機はオートバイや船外機の分野で活躍しているし、パナソニックやソニーなど家電の進出も進んでいる。教育分野では、理想科学工業の印刷機や公文の学習法などは広く浸透しはじめている。
ただ、このようにアフリカでの進出例として語られる企業の多くは大企業だ。
旺盛な起業家精神を持ち、トップダウンでスピーディーな意思決定を行う中国、インド、中東などの企業に対抗するには、芝さんのように日本の中小企業やベンチャー企業が先頭にたって、アフリカという市場に目を向けるようにならなければいけない、と感じる。
中国などは、国を挙げてアフリカの資源獲得に取り組んでいるが、大企業が抑えきれていない細かなニーズを、小規模な企業や個人事業主が巧みに埋めている。
日本の製造業は世界に誇る産業だが、起業家精神をもった中小・ベンチャー企業がアフリカに進出するようにならなければ、今後、日本企業の存在感は急速に薄れていく。また、アフリカ各国の市場が急成長をはじめたときに、その波に乗り遅れてしまう可能性も高くなるだろう。
特定の業種や特定の規模の企業だけをピックアップして、日本企業のアフリカでの存在感を語るのは、ミスリーディングに繋がる。
■アフリカという市場の可能性
アフリカは最後の新興市場と言われる。それは経済発展に必要不可欠な、次の条件を満たす国が増えつつあるからだ。
- 豊富な若年人口
- 教育の充実(識字率の向上etc..)
- 政治の安定
豊富な若年人口は、労働供給と需要の急速な拡大をもたらす。
充実した教育は労働の品質を高める。(植民地時代に十分な義務教育が行われなかったことが、今のアフリカの多くの問題の原因となっている。)
政治の安定は、企業家精神の発揮を促し、海外資本を引き寄せる。
中国は、世界2位のGDPを持つ大国となっている。これからも市場は伸び続けるだろうが、今後は急速な高齢化社会の到来が考えられ、多くの社会問題との闘わなければならなくなる。
注目される市場は中国からインドやベトナム、インドネシアやバングラデシュに移り、アフリカの国々に至る。もちろん国によって発展に到るまでの時間はそれぞれ異なり、3つの条件を満たした国から成長が始まる。
確実に来る未来に対して、日本の企業も積極的に手を打ち始める時期ではないかと思うが、どうだろうか。
Comment
アフリカに企業が進出すべきということでしたが、私は以前ポートハーコートに滞在していた折の激烈な治安の悪さは今でも覚えています。一緒にランチをした石油会社の社員が翌日遺体で発見される、ということも何度か経験しました。欧米企業は自己責任の考え方が定着していますが、日本の会社がそのリスクを背負えるかという点はどうなのでしょう。
教育の充実のためには政治の安定が不可欠ですが、政治の安定のためにも教育が必要です。このコンプレックスを解決できる手段はいまのところ見当たりません。トレードオフの関係なのではないかとすら思えてきます。
また、歴史的に見て英国系の植民地と仏国系の植民地では、既存の行政・社会システムに決定的な開きがあります。南アやジンバなど英国系はシステムが整備されていますが、仏国系は無きに等しいです。その割に、天然資源を始め仏国系のエリアのほうが魅力的に映ります。
最後に、現在進行形でアフリカ諸国は欧米諸国の経済的な植民地になっています。ミッテランがかつてアフリカをどのように表現したのか御存じであれば理解頂けているとは思いますが。
現地で仕事をしていた私としては、「手を打ち始める云々」というには、日本側の理解や勉強が決定的に不足していると感じています。
仮に官民一体でやるとしても、諸外国に比べあまりにも外務省を冷遇しすぎている現在の日本の状況を見ると、大火傷に終わる気がするのですが。
私は、アフリカへの進出は時期尚早だと思います。
コメントありがとうございます。現地の体験から来る貴重なご意見参考になります。
「日本の会社がそのリスクを背負えるか」という点に関してですが、私もほとんどの会社はこういったリスクを回避する。と思います。これは企業の問題もありますし、メディアや報道の傾向もその「リスク回避」に拍車をかけていると思います。
そういった、「リスク回避」傾向が、現在日本企業が世界で遅れをとっている原因にもなっているのではないかと思いますが、これは個々の企業の考え方、価値観によりますので、企業の自己責任ですね。かつての日本企業がそうだったように、企業家精神に溢れた中小・ベンチャー企業が中心となって新たな道を開拓することができればな。と考えています。
教育と政治の問題は(もっといえば、経済も含めてですが)、私としては、相互に影響を与え合って時間をかけて伸ばしていくものだと思います。難しくはありますが、前進させることは可能と思います。
「日本側の理解や勉強が決定的に不足」 この点は非常に同意です。そして、私もまた理解不足に陥っている一人です。
官民一体には、それほど期待していません。むしろ、それをやろうとすると失敗すると思いますので、ビジネス機会を見つけた一人一人の個人が自分が許容できるリスクの範囲で動くべきときだと感じます。
もっとも、たとえばクェート資本の携帯電話大手のZain(http://en.wikipedia.org/wiki/Zain)がアフリカ事業だけインドの会社に売却したりということが普通に起こっているので、書かれていることは誤りではないです。日本企業が「勉強」している間に、「リスク」の捉え方が違う他国の資本にオイシイところは全部持ってかれるんだろうな、という話しをしていました。
官民連携については、発電プラントを円借款でとか日本の強みが活かせる分野でそれなりに機能してるとは思いますが、福井さんがおっしゃってる中小、ベンチャーでどこまで出来るのか疑問です。JETROが情報提供するくらいでしょうか?
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