みなさんコンニチハ!
「大切なことはみんな、マンガが教えてくれた」の著者(※)fukuiと申します。
本日ご紹介するのは、5月に発売されたバガボンド最新刊。
バガボンド(33) (モーニングKC)
著者:井上 雄彦
販売元:講談社
発売日:2010-05-27
おすすめ度:
クチコミを見る
年内に完結するという噂のバガボンドですが、井上雄彦の筆は完結を前に鈍るどころか、ますます冴え渡っています。この漢(おとこ)、やはり神というしかない‥。
----
さて、個人的にバガボンドには非常に深い思い入れがあります。主人公の武蔵の成長とともに、僕も心の成長を遂げてきたといってもいいくらいです。ちと今日はその思い出をまとめてみたいと思います。
自分でも顔から火が出るくらい恥ずかしいのですが、かつての僕はいろいろなものと闘っていたように思います。ちょうど大学時代は今と同じぐらいの非常に厳しい就職氷河期でしたし、ネットバブルのただ中でもありました。
その頃は、ビジネスで成功したい!皆を見返してやりたい!という思いで頭が一杯で、それこそ脳の8割ぐらいはそんなことばかり考えていたように思います。人の痛みとか、世間に対する興味・関心よりも、とにかく自分の成功。そんな感じです。まさに、天下無双を志す武蔵のような気持ちでした。
その気持ちが変化してきたのが、社会人6年目ぐらいの時だったように思います。体を壊すぐらい働いて、周囲の人にも迷惑をかけて、得たものは、残ったものは何か。ふと、そういうことを考えるようになったのです。
自分はいつも何かと戦っている。何かを敵に見たて、そこに対して怒りをぶつけることで、自分自身の力に変える。見えない敵と必要もないのに戦っている自分がいる。そんな風に思うようになりました。
そんな時に、以前見たときはなんとも思わなかったバガボンドの台詞が目に飛び込んできたのです。それは、辻風黄平(宍戸梅軒)が武蔵との戦いに敗れた後に吐く言葉。
「殺し合いの螺旋から、俺は降りる」
いろいろな解釈の仕方があると思うのですが、剣のみに生き、強さを追い求めてきた武蔵達、剣客の生き方は、現代に置き換えていうと、権力なり収入なりを追い求める生き方と似たものがあるのではないかな。とその時思ったのです。
もちろん、それは悪いことではありません。まだ見ぬ高みを目指し、己を磨く。それ自体は素晴らしいことのはずです。
しかし、見えていた位置にたどり着いてみると更に上が見えてしまう。終わりのない、螺旋。これは、何なのか。
そんな中、小次郎と武蔵に破れた黄平。自分を信頼する小さな家族が出来、家族とともに生きることを決意したことを匂わせる黄平の言葉からは、敗北したにも関わらず、今までとは異なる形の勇気と神々しさを感じます。
世界と闘い、人との差を創りだしていくことを幸せと感じていた自分に、「自分にとっての幸せとは、本当のところ何なのか」を問い直すきっかけを与えてくれた一言です。
僕はこのバガボンドで提示された問いがきっかけとなり、一度生まれ育った地元である富山に帰り、限りある時間を家族とともに過ごすことにしました。
さて、辻風黄平は小さな家族が出来たこと、そして戦いに敗れたことをきっかけに、武蔵よりも一足早く「殺し合いの螺旋」から降りることになります。しかし、武蔵は随分長い間、天下無双という亡霊と戦い、その先にあるものを探し続けます。そしてついに天下無双というものが単なる幻に過ぎないことに気付きます。
私は、これですっかり武蔵が心の成長を遂げ、この精神状態のままエンディングに向かうと思い込んでいたのですが、
まさか、その先に更なる心の成長があったとは!!
(※以下、ネタバレ含みます。)
「大切なことはみんな、マンガが教えてくれた」の著者(※)fukuiと申します。
本日ご紹介するのは、5月に発売されたバガボンド最新刊。
バガボンド(33) (モーニングKC)
著者:井上 雄彦
販売元:講談社
発売日:2010-05-27
おすすめ度:
クチコミを見る
年内に完結するという噂のバガボンドですが、井上雄彦の筆は完結を前に鈍るどころか、ますます冴え渡っています。この漢(おとこ)、やはり神というしかない‥。
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さて、個人的にバガボンドには非常に深い思い入れがあります。主人公の武蔵の成長とともに、僕も心の成長を遂げてきたといってもいいくらいです。ちと今日はその思い出をまとめてみたいと思います。
自分でも顔から火が出るくらい恥ずかしいのですが、かつての僕はいろいろなものと闘っていたように思います。ちょうど大学時代は今と同じぐらいの非常に厳しい就職氷河期でしたし、ネットバブルのただ中でもありました。
その頃は、ビジネスで成功したい!皆を見返してやりたい!という思いで頭が一杯で、それこそ脳の8割ぐらいはそんなことばかり考えていたように思います。人の痛みとか、世間に対する興味・関心よりも、とにかく自分の成功。そんな感じです。まさに、天下無双を志す武蔵のような気持ちでした。
その気持ちが変化してきたのが、社会人6年目ぐらいの時だったように思います。体を壊すぐらい働いて、周囲の人にも迷惑をかけて、得たものは、残ったものは何か。ふと、そういうことを考えるようになったのです。
自分はいつも何かと戦っている。何かを敵に見たて、そこに対して怒りをぶつけることで、自分自身の力に変える。見えない敵と必要もないのに戦っている自分がいる。そんな風に思うようになりました。
そんな時に、以前見たときはなんとも思わなかったバガボンドの台詞が目に飛び込んできたのです。それは、辻風黄平(宍戸梅軒)が武蔵との戦いに敗れた後に吐く言葉。
「殺し合いの螺旋から、俺は降りる」
いろいろな解釈の仕方があると思うのですが、剣のみに生き、強さを追い求めてきた武蔵達、剣客の生き方は、現代に置き換えていうと、権力なり収入なりを追い求める生き方と似たものがあるのではないかな。とその時思ったのです。
もちろん、それは悪いことではありません。まだ見ぬ高みを目指し、己を磨く。それ自体は素晴らしいことのはずです。
しかし、見えていた位置にたどり着いてみると更に上が見えてしまう。終わりのない、螺旋。これは、何なのか。
そんな中、小次郎と武蔵に破れた黄平。自分を信頼する小さな家族が出来、家族とともに生きることを決意したことを匂わせる黄平の言葉からは、敗北したにも関わらず、今までとは異なる形の勇気と神々しさを感じます。
世界と闘い、人との差を創りだしていくことを幸せと感じていた自分に、「自分にとっての幸せとは、本当のところ何なのか」を問い直すきっかけを与えてくれた一言です。
僕はこのバガボンドで提示された問いがきっかけとなり、一度生まれ育った地元である富山に帰り、限りある時間を家族とともに過ごすことにしました。
さて、辻風黄平は小さな家族が出来たこと、そして戦いに敗れたことをきっかけに、武蔵よりも一足早く「殺し合いの螺旋」から降りることになります。しかし、武蔵は随分長い間、天下無双という亡霊と戦い、その先にあるものを探し続けます。そしてついに天下無双というものが単なる幻に過ぎないことに気付きます。
私は、これですっかり武蔵が心の成長を遂げ、この精神状態のままエンディングに向かうと思い込んでいたのですが、
まさか、その先に更なる心の成長があったとは!!
(※以下、ネタバレ含みます。)
武蔵には7年間の空白の日々があります。武蔵はその期間を、暖かいある家族のもとで過ごします。
そこで、生命の終りと誕生を見、人生の素晴らしさ、世界の素晴らしさを強く感じます。
そして、自分が斬り殺してきた様々な剣客たちの家族のことを想います。
武蔵は自問します。
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流浪の日々は終わり
殺し合いの螺旋を降り
それで何かの上がりのような気がして
重荷をおろした途端に
何故だ?
光も見失った
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そして、武蔵は自分の心の声に気付きます。
「俺はまだ強いのか?」
「もう一度だけ‥本当に強い人間と闘いたい」
その武蔵に、仏彫りの親父はつたえます。
----
あきらめろ
あきらめたら、そこで闘いは終わりだ
剣を手放せる
----
しかし、武蔵は旅に出ます。
さて、殺し合いの螺旋から一度降りたにも関わらず、
再度、闘いの道に身を投じることを決意する武蔵。
以前の武蔵と今の武蔵は、同じ武蔵でしょうか。違うのでしょうか。
違うとしたら、何が違っているのでしょうか。
武蔵が、今から向きあおうとしているのは、何なのでしょうか。
そこにある、武蔵が見る答えは、
きっと僕にも新たな道を示してくれることと思います。
※もちろん、そんな本はありません。僕の妄想の中だけの産物です。残念ながら。
そこで、生命の終りと誕生を見、人生の素晴らしさ、世界の素晴らしさを強く感じます。
そして、自分が斬り殺してきた様々な剣客たちの家族のことを想います。
武蔵は自問します。
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流浪の日々は終わり
殺し合いの螺旋を降り
それで何かの上がりのような気がして
重荷をおろした途端に
何故だ?
光も見失った
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そして、武蔵は自分の心の声に気付きます。
「俺はまだ強いのか?」
「もう一度だけ‥本当に強い人間と闘いたい」
その武蔵に、仏彫りの親父はつたえます。
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あきらめろ
あきらめたら、そこで闘いは終わりだ
剣を手放せる
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しかし、武蔵は旅に出ます。
さて、殺し合いの螺旋から一度降りたにも関わらず、
再度、闘いの道に身を投じることを決意する武蔵。
以前の武蔵と今の武蔵は、同じ武蔵でしょうか。違うのでしょうか。
違うとしたら、何が違っているのでしょうか。
武蔵が、今から向きあおうとしているのは、何なのでしょうか。
そこにある、武蔵が見る答えは、
きっと僕にも新たな道を示してくれることと思います。
※もちろん、そんな本はありません。僕の妄想の中だけの産物です。残念ながら。
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