先日、Living in Peaceが主催するセミナー「投資が社会にもたらすもの~インパクト・インベストメントの可能性~」に参加してきました。講師は徐勝徹(@cloudgrabber)さん。

徐さんはミシガン大学の院で公共政策を学んだ後、ユネスコ、国際赤十字と経て、その後戦略コンサルティング・ファーム。ケロッグでMBAを取得した後、ウガンダや日本でビジネスと社会貢献の両立を目指すベンチャー・キャピタルや株式会社を立ち上げておられます。

非営利組織からスタートしたキャリアだからこそ、何かプロジェクトを成すにあたっての「お金の重要性」の話は非常に説得力がありました。また、非営利組織で学んだ「The power of Humanity」の素晴らしさを、効果的に実現するためのインパクトインベストメント、という話もおおいに納得できるものでした。

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インパクト・インベストメントという言葉自体、詳しくは知らなかったのですが、簡単に述べると、

・従来の投資が、Financial Return を目的とするもの
・寄付が、Social Returnを目指すもの

であるとすると、その間を目指す投資の考え方、手法とのことです。図で表すと次のようになります。

Impact

徐さん自身もおっしゃっていましたが、このインパクト・インベストメントの話をすると、必ず出てくるのが、「投資に8割、寄付に2割というように、個人の価値観や判断によってポートフォリオを組んで、自由に配分すればいいんじゃない。」という意見だそうです。

実際に収入の一部を寄付に回すという活動をしている人はいらっしゃいますし、その意見には頷ける部分も多々あります。ただ、徐さんのプレゼンを聞く中で、そういった考えの限界も知ることが出来ました。

限界の理由として、一番大きいと感じたのは、「寄付市場の市場規模は米国が22兆円に対して、日本は7,000億円(または2,000億円)と非常に小さい。」という点です。

この差は様々な理由から生まれていることと思いますが、これでは出来る活動に限界があります。
しかし、社会に対して役立つことはやりたいけれど、自分の手元からお金がなくなってしまうのには抵抗がある。という人はやはり多いと思います。

インパクト・インベストメントの効果を説明するのに、徐さんは「現在の寄付は投資に対するリターンがマイナス100%だ。仮にリターンが数%と言わず、0%でも実現できたら、これは面白いことになる」と仰ってました。

寄付することで、そのお金は自分の手元から消えてなくなるので、確かに投資に対するリターンは-100%です。これがもし、投資に対してのリターンが数% と言わないまでも、ゼロ%を実現(元本が戻ってくる)できる組織が増えたら、そういう活動に遊んでいる資金を提供しよう。と考える人は増えると思います。(潜在的にそのような考えを持っている人はそもそも多いと思います。必要なのはきっかけや、取り組みやすい仕組みやパッケージなのでしょう。)

また、こういった考え方が増えれば、NPO等が効果的に資金を集めることも可能にもなると思います。

そういう意味では、インパクト・インベストメントというフラッグシップとなるわかりやすいコンセプトを提示し、日本に眠っている膨大な余裕資金を、生きたお金として活用することは本当に素晴らしいことなのではないかと思いました。

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さて、このインパクト・インベストメントという言葉は、「社会起業家」や「BOPマーケット」といった言葉同様、新たなコンセプトの提示に過ぎないともいえます。

ただ、だからこそ素晴らしい。

既存の仕組みを活用することで実現することが出来、特に新たな法律やルールを作る必要もない。新たな考え方を世に提供することで、一気に認知が広まり、取組む人が増える。そういう素晴らしさを持っていると思います。

これから日本にもこういった「一人ひとりが持つ、The power of humanity」を活用する仕組みが整っていくことを切に願います。

というか、自分も一人のActorとして動かねばなりませんね。


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