昨日、世界を変えるデザイン展に参加してきました。最近は新興国や途上国への進出に関する相談を受けることも徐々に増えてきたのですが、BOPビジネス等に対する国内の興味・感心も高まっているのだろうと思います。

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会場は、東京ミッドタウンタワーの1フロアを利用。会場があまりに立派だったので、会場を借りる費用などはどうしているのだろう。と、あらぬ心配をしてしまいました。実際には持ち主である三井不動産などと話をつけ、無償提供してもらっているのだと思いますが、そういう交渉をまとめる力は見習わなくてはいけないな。と強く思いました。

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展示されているプロダクトは本当に素晴らしいアイディアを形にしたものばかりでした。泥水を安全な水に変えるストローや、圧力を調整することで、自分で度を調整出来るメガネなど、ウェブではGreenzのサイトなどを通じて見知っていたものの、実物を見るのは初めて。という産物に数多く出会いました。

上記は展示されているプロダクトのひとつで、普通の黒板です。NGOを通じてカンボジアの学校に配布されているとのことです。カンボジアは内戦の時代に知識階級のほとんどが殺された(小学校教師の8割が虐殺)こともあり、識字率は30%強に過ぎないそうです。そういった国に対して、書いて覚える。という基本的な学習をさせるのに役立っているそうです。

ローテクであっても、あるいはローテクだからこそ提供出来る価値もあるのだなぁ。と感心しました。

国の復興や経済成長に必要な要素は、若年人口、教育水準(識字率)、政治の安定と言われます。時間はかかりますが、様々な形で教育機会を提供することは本当に大事なことだと感じます。

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こ ちらは逆にハイテク機器。Nコンピューティングという名称で、キーボードとディスプレイを増設することで、一台のPCのリソースを複数人で活用出来るよう にする機器だそうです。確かにネットを見るだけであれば、そんなにリソースは必要ないし、こういう機器があると多くの人が情報にアクセス出来て、便利だろう、と感じます。

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さて、その後はワークショップに参加してきました。貿易ゲームを活用して、南北問題を学ぶというもの。このデザイン展に足を運んだ目的のひとつでもあります。

僕たちのチームはBチーム。封筒を開けると、技術と情報に圧倒的なアドバンテージを持つ先進国を担当しました。足りないのは資源だけ…。

最初は技術と交換に後進国の資源を手に入れてたりしたのですが、その後は様々なスキームを用いて、貿易相手も、自国も儲けることが出来るようなスキームを築きあげ、結果1位でゲームを終了しました。

しかし、このゲームは本当に良く出来ていて、後進国はとことん何もなく、何もないが故に先進国にまったく相手にされない。話も聞いてもらえない。という状況が生まれます。後進国や新興国が頑張って先進国と同じような商品をつくって持っていっても、マーケットで買い叩かれたりします。

非常に不公平なルールのもとで世界のゲームが設計されているのだな。と感じました。しかし、それでも、全ての自分だけの利益を求めるのではなく、全体の利益を考えることができれば、結果的に全体が豊かになる、という設計になっているわけですから、一人ひとりがそういう発想を持つようにならなければいけないのだろう。と感じました。

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その後は、NGOで働かれている方を招いてのパネルディスカッション。規模も活動内容も異なる3つのNGOの方が参加されていました。活動内容に関してのプレゼンのあと、質疑応答だったのですが、運営費に関しての質問に対する答えが大変興味深いものでした。

シャンティというカンボジア等を中心に活動しているNGOは、年間の運営予算が6~7億円。8割が寄付、2割が助成金という状況。寄付の内訳は10%が収益事業によるもの、15%が会費収入、それ以外が個人・企業からの寄付という状況です。

ジュレー・ラダックというNGOは、年間の運営予算は1,000万円以下。職員はほぼパートタイムで、運営費はスタディツアーやイベントで得ているとのこと。助成金は申請はするものの、なかなか通らないということでした。

プラン・ジャパンというNGOの年間の運営予算は35億円。こうなってくるとちょっとした大企業です。個人と企業からの寄付金が運営予算の99.9%を占め、寄付金の中でもスポンサーシップというタイプの寄付金が7割を占め、7万人の方が毎年寄付しているそうです。

できたばかりの団体はやはり運営費用が厳しく、長期にわたって活動しているところは、それなりの支援を得られるようになっているところは、企業と似ているな。と感じました。

また、参加されていたパネラーの方は全員女性で、本当にこのBOPや国際支援という分野に関しての女性の力や役割は強いのだな、と感じました。

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僕は、BOPビジネスの研究をしていることもあり、世の中の多くの問題はビジネスを通じて解決出来ると考えているほうですが、NGOのみなさんの話を聞いて、確かにNGOのほうがやりやすいことがある、と感じたことがありました。

それは、政治も安定しておらず、教育も機能しておらず、資源もない。世界の最貧国と言われる国への支援です。BOPビジネスは、現地の人々に購買力をつけることが最初に取り組まなければならないことなのですが、国によっては企業がその活動を行うのはあまりにリスキーで、リターンが読めない国や地域があります。

そういった地域への進出や支援は、やはり理念をもったNGOのほうが活動しやすいように感じます。また、しっかりしたNGOであれば、ODAなどが賄賂になってしまって本当に困っている現地の人々に届かないような場合でも、直接支援が行き渡っているかどうか最後まで追跡調査できる。と感じました。

お互いの強みをしっかりと把握して、初期段階ではNGOの活動を企業が後方支援して、ある程度発展の素地が出来てきたら、企業の活動をNGOが支援するという健全な役割分担がある。と感じることができたのは、今日の収穫の一つでした。

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展示されているプロダクトも大変興味深いものでしたし、様々な発見が得られることは間違いないと思いますので、興味のある人は是非一度世界を変えるデザイン展に足を運んでもらえればと思います。