個人的にチャレンジしていることとして、ルパン型組織をつくる。という取り組みがあります。

アニメのルパン三世って、子供向けにかなりカスタマイズされているけれど、原作のルパン三世は随分とハードボイルドだ。気が乗らないプロジェクトがあると、仲間は「俺は降りるぜ。」といってその盗みには二度と出てこないし、受けた依頼によっては、仲間同士敵対したりもする。不二子ちゃんに至っては、ルパンに「使えないから」という理由で、「お前とくむのはベッドの中だけと決めてるんだ。」という暴言をはかれたりしている(そんな二人の関係がアニメ版であんなに変わってしまうとは‥)。まぁ、とにかくルパンの仲間はプロフェッショナルなのだ。

ドラクエやFFに代表される国産RPGは皆レベル1でパーティをくんで、魔王を倒すまで生死をともにするわけだけど、現実世界ではこんなことはないと思うんですよね。殿様を江戸まで送り届けなきゃいけなかったら、その目的に合わせた最適なパーティをくむし、田畑を荒らす猪を退治するには、それに最適なパーティをくむ。近くに財宝が埋まっているという噂があれば、山っ気のある若者たちが、年寄りが静止するのもきかず、森に繰り出す。

そんな感じだったと思うんですよ。

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そんなわけで、何か儲け話があって、その儲け話を達成するのに最適なメンバーを集め、儲け話を実現する。そういうプロフェッショナルたちが集まったチームを僕はルパン型組織と勝手に名付けているわけです。(参考:ルパン型組織でいこう!

で僕はそんなルパン型組織をつくって、いくつも面白いプロジェクトを回したいわけです。実際にはなかなか難しいけれど、成功例はあります。それもスゴイのが。

一つは孫正義さんが最初に手がけたプロジェクト。以下、孫正義Live書き起こしより一部引用させて頂きます。

マイクロコンピューターを使った、世界初のポケットコンピューター。今ではiPhoneのはしりのようなね。これを19歳のときに発明しました。

自分ひとりじゃものは完成しないんで、仲間を集める。僕を手伝ってくれ。
世界的に有名な大学教授、5、6人集めた。それでプロジェクトチームができた。

僕は学生なんで1日5分しか時間がないんで、先生手伝ってくれ。先生に給料払う。先生に空いてる時間で僕のためにアルバイトしてくれと。1時間いくら、先生に払います。

教授を雇った。

ネゴをするのはいやだから、
「先生、1日にいくらかは先生が自分で決めてくれ。先生がほしい金額を出します」
ということで「なんちゅーことを言う学生だ」という話でしたが、

「ひとつだけ先生、条件がある」

それは

「先生が書いたとおり申告してください。だけど、できあがったら全額払います、申告どおり全額払います。だけど僕には今金ない。できあがって完成して特許が売れたら、売れた金額から先生に全額払う。だからうまくいかなかったら先生ただ働きです。うまくいったら先生方の申告どおり満額出します。そういう条件でどうですか?」

笑い出した先生たちがね。おもしろいことを言う学生だ。わけわからん話だけど、やってみるか。

ということで僕の発明を実現するプロジェクトチームができたということであります。

同じような話は他にもある。初期サイバーエージェントの成長の原動力となったクリックインカムというサービスの開発だ。僕が学生の頃だったから、1998~1999年にリリースされたサービスだ。このサービスを開発したのは、ホリエモン率いるオン・ザ・エッヂ。後のライブドアだ。これも、藤田さんが、ホリエモンに開発を依頼して、営業はサイバーエージェント、開発はオン・ザ・エッヂ。売上は折半という形をとった。

似たような話で、教訓となる話としては、ウシ殺しの大山倍達の話がある。彼は戦後知人二人に誘われて、米軍相手のちょっとしたビジネスをしたそうだ。大山倍達は英語が出来たので、通訳兼交渉担当。利益は3人で折半するという話になっていた。ビジネスは成功し3人は大金を手にしたが、大山倍達をのぞく二人が報酬の分配をめぐって喧嘩をはじめたそうだ。大山はそれを「人はカネのことになるとかくも醜い」と感じ、怒りと切なさに任せ、二人からカネを奪って、火の中に投げ入れたという。3人はせっかく得た利益を失ってしまったが、知人はこの出来事を大山倍達に感謝しているという。(空手バカ一代より)

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さて、ルパン型組織の成功はなかなか難しい。

  • まず最初に一人一人がプロフェッショナルである必要がある。
  • 成果に対する分配に関して一人一人が真摯でなければならない。
  • プロフェッショナルが時間を割くだけの魅力がある絵(儲け話)でなければいけない。
  • プロジェクトを円滑にゴールまで導くよう、マネジメントがしっかりしてないといけない。(そうじゃないと大体途中で責任をなすりつけあって、空中分解するか、自然消滅する。)

規模が小さければ、数人のチーム(孫正義、大山倍達の例)になるだろうし、もう少し大きくなれば、会社をひとつ作って責任者をたて、それぞれが出資する形になる(切込隊長がよくやる例か)だろう。さらに大きくなれば、会社と会社のプロジェクト(藤田さんとホリエモンの例)になる。

将来の儲けと、プロとしての矜持を頼りにプロフェッショナルたちが貴重な時間を割くわけだからマネジメントはなかなか難しいかもしれない。

しかし、得られる利益が出資者(時間であれお金であれ)にダイレクトに還元されるというメリットもある。現代のようなデフレ&IT環境下においては、中間に挟まるプレイヤーと間接部門を出来る限り小さくし、利益率を高めるというのは効果的な経営スタイルだ。得られる利益が一回限りのものでなく、継続的な収入をもたらすものであれば、プロフェッショナルたちも参加しやすくなるだろう。

大きな絵を描いて、プロフェッショナルたちと楽しんで仕事をしたい。
クエスト毎にパーティを組んで、何度も何度もダンジョンに潜りたい。
そんな飽く無き欲求を満たすために、今日もまた、いろいろ考え込むわけです。

何かとんでもないものを創って、いつか銭形をうならせたいものですね。