どのような会社に入ればいいのでしょう?
どのような事業を興したらいいのでしょう?


多くの方からこのような質問を頂きます。ぶっちゃけ、自分の人生だから自分の好きなように選べばいいのですが、自己分析にはたっぷり取り組むにも関わらず、ビジネスモデルに関して十分な研究や理解をしないまま入る人がまだまだ多いなと感じます。

特に新卒で会社に入る人などは、「社風が好きだから」「商品やサービスが好きだから」といった理由で会社を選んだりします。別にそれでもいいのだけれど、そうやって仕事を選んだ結果、疲弊し心が病んでいく人を何人も見てきたようにも思います。

仕事には、「働けば働くほど、楽になる仕事」と「働けば働くほど辛くなる仕事」の2種類があると思います。そして、後者の「働けば働くほど辛くなる仕事」を知らず知らずの間に選んでしまっている人が多い。これが不幸の一つの原因だと思うのです。

そこで、図を用いてどんなタイプの仕事があるか見てみたいと思います。
あれこれ考えたのですが「金持ち父さん、貧乏父さん」で紹介されていた例えが一番わかり易いと感じたので、それをアレンジして紹介します。


■労働集約型のビジネス


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ここで紹介するのはやる気のある青年の話。村には井戸がなく、数キロ離れた川から水を汲んでくるしかありません。青年は毎日バケツをもって川へ行き、水を汲んでは村に届けます。そうして青年は毎日10,000円の収入を得ています。これは労働をお金に変える、もっとも基本的なビジネスです。

労働集約型というと、ここで紹介した「バケツで水を汲む」ような肉体労働をイメージしますが、「弁護士」や「建築士」といった士業も、教師や経営コンサルタントと言われる職業も、労働時間に応じてお金をもらっている限りはこのビジネスモデルを踏襲しています。(だから、コンサルタントは時に知的ブルーカラーと言われたり、派遣労働と言われたりするのです。時間に応じてお金をもらっている限り、このビジネスモデルですね。)

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こういった、労働をお金に変えている人が「もっと稼ごう」と思ったときはバケツを増やします。ようは一度に受ける仕事を増やすのです。一度に二つ、三つの案件をこなし、収入を増やします。実際には一度に二つの仕事を受けるとその分重くなりますし、疲労します。

残業を重ねてノルマを達成している営業担当者や、システムエンジニア、世の多くのビジネスパースンたちは知らず知らずの間にこのような働けば働くほど辛くなる状態に陥っている場合も少なくないのではないでしょうか。

■人を雇ってはたらかせる

さて、自分の労働時間には限りがありますし、いくら効率良く仕事をすすめることが出来るようになっても一日に運ぶことのできるバケツの数(=仕事の数)には限界があります。そこで、自分で仕事をするのではなく、人を雇うようになります。

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実際に、バケツも持っていない、水の運び方も知らない新卒入社の社員のような人が世の中にはたくさんいるわけです。そういう人たちを雇い、バケツをもたせ、運び方を教え、モチベートし、途中でサボらないか監督して村に水を運ばせるわけです。そういった雇われ人が稼ぐお金は一部を雇い人に渡します。

そうしなければ、バケツも持てなかったし、運び方も知らなかったので、しょうがないのです。こうすることで雇い人はより多くの収入を得ることができるようになるのです。

不幸なのは、しっかり独り立ちできる実力を持っているにも関わらず、安い給料でバケツを運び続けている人たちかもしれませんね。

さて、雇う側になると随分効率がよくなったように見えますが、それでも雇える人数によって収入に上限は出てしまいます。力のある人は10人、20人と見れるかもしれませんが限界はありますし、しかもバケツの運び手たちは、「給料をあげてほしい」「福利厚生を充実してほしい」と騒ぎます。時にはストライキだっておきますし、最低賃金を8000円にせよ!というルールが定まったりします。

人を雇用しても、雇用している人の頭数に応じた売上しか見込めないビジネス(=労働集約型のビジネス)は非常にリスキーだし、儲かりにくいのです。


■資本集約型のビジネス

じゃあ、どのようなビジネスが理想なのか。それは川から村まで水道を引くようなビジネスです。

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最初はお金も時間もかかります。でも一度水道を引いてしまえば、バケツで水を運ぶ100倍以上の水を村に安定的に送り届けることが出来ます。自分が働く必要はほとんどありません。新しい「仕組み」を創りだすことに頭を使えばいいのです。これが、仕組みをつくるビジネスです。資本集約型のビジネスといってもいいでしょう。

人が働くかわりに、モノやお金や情報といった、資本に代わりに働いてもらう。これが目指すべきビジネスの姿です。

  • メーカーであれば、手で商品を作る代わりに工場に働いてもらうことになるでしょう。
  • 金融であれば、投資や貸付を通じ、お金に働いてもらうことによってお金を増やすことでしょう。
  • IT系の企業であれば、インターネット上のツールや情報に働いてもらうことによってお金を増やすことでしょう。
水道を作るのに測量技師や設計士にも活躍してもらわなければいけないので、雇う人をゼロにすることは出来ないかもしれません。(でも、それも信頼できる外部に出してしまえば、雇う必要すらなくなります。)

こういった企業は少数の仕組みを作ることに貢献した人が仕組みから得られる多くの利益を受け取ることが出来ます。しかも、その仕組みは一度つくってしまえば、自分が動かなくても富を産んでくれるのです。働けば働くほど楽に多くの収入が得られる仕事です。目指すのであれば、最終的にはこのような企業を作ることを目指すのがいいことは言うまでもありません。


■ 実際に仕事を選ぶ際にはどう選ぶ?

最後に、これらの前提を抑えた上で、どのような仕事が望ましいかを考えてみましょう。稼ぐということを前提に考えると、望ましい順に、

  1. 水道で水を引く仕事 (ビジネスオーナー = 資本集約型)
  2. 人を雇って働かせる仕事 (ビジネスオーナー = 労働集約型)
  3. 自分の労働をお金に変える仕事 (独立事業主 = 労働集約型)
  4. 人に雇われて労働をお金に変える仕事 (被雇用者 = 労働集約型)
の順になるのではないでしょうか。

ただし、人に雇われて労働をお金に変える仕事でも、優れた人を継続的につなぎとめておかなければならない会社は、自ら仕組みをつくれる優秀な人が独立したりビジネスオーナーになるのを防ぐためにびっくりするぐらいの給料を出すところがあります。(総合商社や、勢いのあるITベンチャー、投資銀行、一部のコンサルティングファームに勤める人など。この中ではコンサルティングファームが一番労働集約的で過酷な気がします。)

特に実力のないうちは、これらの会社にうまく入り込んでしまえば、当面は高い給料をもらえるのですから、こういう企業で働くのも一つの手だと思います。

一番ダメなのが、人に雇われて労働をお金に変える仕事なのですが、十分な力がない人はここしか選べなかったりするので、ここで力を積む必要があります。ただし、ここで力を積む場合も、バケツを持つ数を増やす能力を身に付けたり、他の人にバケツを運ばせる能力を身につけるだけでは、決して、水道で水を引く仕事が出来るようにはなりません。

なので修業をするのであれば、早い段階で水道で水を引く仕事を作らせてもらえるような会社に行くべきだと思います。

今、自分が勤めている(あるいは内定を承諾しようとしている)会社は、早い段階で水道で水を引く仕事(=仕組みをつくるビジネス)をさせてくれる会社かどうか、よく検討してみるといいと思います。

また、今自分が事業をしているとしたら、水道で水を引く仕事をしているかどうかを確認し、もしまだであれば、どうすればその状態をつくれるか、時間をかけて熟考してみることをおすすめします。

頑張ることは本来大事なことだと思うのですが、頑張る方向が違えば、頑張りは苦しみを産むばかりになってしまいますから。


さて、次回のエントリは実践編と言うことで、ちょっとした小規模ビジネスを題材に具体的に「労働集約型とはどういうことか」「資本集約型とはどういうことか」見ていきたいと思います。


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