「成長市場」と「衰退市場」、どちらでビジネスにチャレンジする?

そういった問いをすると、9割の人は「成長市場で勝負をする。」と答えると思う。しかし、実際には知らず知らずのうちに「衰退市場」で勝負してしまっている人も多いと思う。

過去のエントリ( 就職せずに起業して、成功するために必要なこと )でも述べたけれど、ビジネスを成功させる上で「成長市場」で勝負すると言うことは非常に重要な要素の一つだ。「わかっているが、出来ていない」という人は次のような事態に陥っている可能性が高い。(もちろん、衰退市場で勝つための戦略もあるが、成長市場で勝負するより遥かに難しい戦略なので、今回は考えないことにする。また、衰退市場を復活させたケースは多くの場合、市場を定義し直した場合が多い。ことにも注意する必要がある。)

  1. 自社のコア・ビジネスに選択と集中をしようとしている。
  2. 過去の成功体験に囚われている。
  3. 与えられた裁量や資源を前提として考えてしまっている。

そんなところだろうか。いってみればこれらはすべて「外部環境の変化ではなく、内部環境に最初に目を向けてしまっている。」ことから生じる問題だ。
とっても簡単な事業企画のたて方で書いたけれど、外部環境の変化という強いうねりに、自社固有の状況を載せてビジネスプランを練るのが望ましい。しかし、前提条件や現在の状況に縛られて、豊かな発想ができない人も多い。(だからこそ、ゼロベースで考えることが重要だといわれるのだろう。)

実 は学生の方にケーススタディーに取り組んでもらうと、外部環境の変化から考える人が結構多い。企業に属していない分だけ、外部環境と内部環境をフラットに 考えることが多いからだろう。出てくるアウトプットは9割以上が一度は経営者も考えたことのあるアイディアになるが、時たまハッとするような提案が出てく る場合もある。

逆に社会人になると(組織に属すると)、企業固有の情報(内部環境)に関しては、学生よりはるかに多くの洞察を得られる。(これは、「優秀な学生と優秀な社会人の違いは何なのでしょう。」とスカイライトコンサルティングの羽物社長(@thabutsu )に質問したときに教えて頂いた答えだ。なるほどと思うところが多い。)

この企業固有の情報をうまく生かすことが出来ればいいのだが、内部環境のことばかり考えて、外部環境の変化に関しては考えない人も多い。そういった方々の答えは大体パターン化出来て、

「ウチでは難しい」「古い会社だから」「予算がない」「本業じゃないから」「リスクが高い」

といった答えが返ってくる。

  • 自社のコア・ビジネスに集中するのはいいが、コア・ビジネスが衰退市場だった場合はどうするのだろう?(コア・ビジネスを「好きなこと」と言い換えてもいい。)その場合はセグメントを切り直すなりなんなりして、改めて成長市場を見つけ出さなければならない。(それが出来なければ、コストをカットして縮小均衡をはかるべきだろう。)

  • 過去の成功体験に囚われているのはよくあるケースだ。「こだわりの強い経営者」というのは確かに存在する。しかし、最悪なのは「こだわりの強い社員」だ。経営者の場合は自分でリスクをとっているし、豊富な経験に裏打ちされた直感だから、どちらかというとプランを出した側の煮詰め方が不十分であることも多いだろう。しかし、「こだわりの強い社員」は過去の前例を踏襲するばかりで自分の頭で考えていないことが多いと思う。

  • 与えられた裁量や資源は「思い込み」であるケースが強い。予算や人がいなければ外から引っ張っることができれば解決してしまう。権限がなければ、魅力的なプランをつくり、権限のある人を担いでしまえばいい。裁量や資源を自分である程度 コントロール出来るようになってはじめて、戦略家といえる。(戦略立案のコンサルティングをしていないとどうしてもこういった発想ができなくなり、出来る 範囲での「改善」に終始してしまう。)


こういう時代だからかもしれないけれど、セミナー等を行っていても、自社の状況に発想が縛られている人は考えている以上に多いように感じる。「国内市場で」「紙媒体で」「技術を活かして」都合の良い前提条件を並び立てることよりも、前提条件を排除して考えた方が、より豊かな発想が生まれるのだが。

学生であれば外部環境の変化に関して社会人よりも深く理解し考察することで、社会人以上のパフォーマンスをあげることができるかもしれない。

逆に社会人であれば、自社の内部環境にとらわれた発想から逃れることで大きな機会を手に入れることが出来るのではないだろうか。