最近、立て続けに学生時代の友人から転職の相談を受ける。3~4月は節目の季節で就職・転職が決まりやすい時期ということもあるけれど、10年間働いてきて、一区切りついたので、転職を考え始めた。ということもありそうだ。

20代の半ばぐらいまでは、学歴を活かしての転職も可能だ。ポテンシャルに期待してくれる企業も多いだろう。大企業に勤めていれば、そのネームバリューを活かして中小やベンチャーに転職することも比較的容易だろう。

しかし、20代後半からは実力と職歴が純粋に評価されるようになる。ある意味、キャリア選択が激変する時期だ。僕と同世代のアラサーたちの中にはこの変化に戸惑うひとも多い。そして、35歳転職限界説みたいな話もある。人材紹介会社を活用しての転職は35歳が限度という転職マーケットでまことしやかにささやかれる噂だ。

さて、今日は転職活動というものについて整理してみようと思う。
特定の組織に属さず、転職相談をビジネスにもしていない僕だから書ける話というものもあるだろう。


■人材紹介は、ごく一部

リーマン・ショック以来激減したけれど、地下鉄の車両内広告が人材紹介会社(リクルートエージェントやインテリジェンスetc..)の広告でジャックされているような時期があった。自分の年収について確認する意味でも、人材紹介会社にとりあえず登録している人は、少なくないのではないだろうか。

けれど、人材紹介会社を通じて転職する人は、本当にごくごく一部に過ぎない。

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さてデータで見ると、転職者の入職経路は多い順に次のようになる。(数字は2007年実績)ちなみに、この人数は新卒・既卒の区別はされていない。全体の10~15%ぐらいは新卒の人だと思う。

  1. 求人広告 226万人
  2. 縁故 167万人
  3. 職安(ハローワーク) 160万人
  4. その他 84万人
  5. 学校による紹介 38万人
  6. 民間の人材紹介会社 14万人

僕はこの数字を見たときに、人材紹介会社の割合が少なすぎないか?とさすがに疑問に思ったのだが、仮に人材紹介会社が年間14万人の転職活動を成功させるとすると、市場規模は1500億程度になり、これは人材紹介会社の市場規模として非常に妥当な数字だ。人材紹介会社をつかって転職する人はごくごく一部ということがわかる。もちろんその分サービス品質は高いけれど、紹介手数料は企業経営者にとっては莫大な額だし、紹介会社もビジネスだから紹介して採用されないような人は求人案件の紹介や面談も控えるだろう。人材紹介会社しかつかっていない、という人が転職活動に苦労するのはあたりまえだと思う。
人材紹介だけでは限界があるので、転職活動を始めた人は広告を見る。ただ、広告は求職者側から見たら、「自分が求められているのかどうなのかわから ない」ので応募や面接の効率が悪い。という欠点はある。どちらかというと、求職者側というより、企業側に都合がいいマッチング方法だ。履 歴書を見て、ターゲットに合致しない人は、落とせば良いわけだし。

結局のところ、一番力を発揮するのは縁故なんじゃないかと思う。
多くの社会人が縁故を通じて職を決めている。企業経営者による直接のヘッドハンティングも縁故のひとつだし、普通に行われている。(大企業であれば、さすがにエグゼグティブサーチなどの専門サービスを利用するだろうが。)


■30代以降の「転職力」を確認するためのふたつの問い

僕はコネも実力のうちだと思っている。コネがない、という人もいるがそれはコネをつくる努力をしていない。とほぼ同義だと思う。新卒での就活の時はどうしても「コネ」に抵抗感があるものだけれど、最終的に親や知人の紹介で採用が決まるという例は少なくない。お互いにプロフィールがわかっているので、情報の非対称性による損失も少ないはずだ。

さて、あなたが仮に退職することになったとして、これまでにメールのやり取りをした方々(仕事、プライベート問わず)に「退職のご報告」の一斉メールをするとしよう。下記二つの問いに対して、あなたはどう答えるだろうか。

  • 何件、個別具体的な仕事の依頼がくるだろうか?
  • 是非わが社に来てください、という誘いは何社からくるだろうか?

どちらも最低5~6件は話がくる自信がないようであれば、30代になってから転職活動を行い望みの職につくのは難しいかもしれない。(自信があったのに、誘いがこないようであればそれは悲劇だ。あなたの能力ではなく、あなたの地位や権限や動かせる予算に魅力を感じてのお付き合いだったのかもしれない。参考:営業の思い出。立場の逆転はいつでも起こりうる。

逆に言うと、5~6件誘いがくるようであれば、独立してもいいし、転職活動も容易に進むだろうし、転職によってよりよい条件の仕事に就くことも可能だ。将来の転職の可能性がゼロでない人(ほとんどの人はそうだろう)は、仕事を通じて上記の問いに対して自信のある答えを返せるようになっておくことが必要だ。そのためには次のような取り組みが考えられる。

  • 仕事をして成果をあげる。
  • 社外の勉強会に出て能力を高める。
  • 仕事、プライベート問わず、信頼できる人脈をつくる。

以上の活動をして、いつでも自律的にキャリアを選べる人材になっておくことが、これからの時代必要なことだと思う。もちろん、既に出来ている人も多いが、あまりにも無防備に仕事について考えている人が多いことも確かだ。


■変化に備えよう

ちなみに、先程のグラフで、「その他」の項目が2004年から急拡大しているが、増加分の多くは派遣労働者と思われる。2004年に行われた派遣労働法の改正の時期とも一致する。

広告や縁故での入職者も増えていることから、景気回復と、団塊世代の大量退職を見越しての採用が一気に増えた時期だったのかもしれない。

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正規雇用者の人数は1997年をピークに2005年に底をうつ。非正規雇用の増加が問題視されているが、底をうった後は正規雇用者は若干回復傾向にあり、全体の雇用者数は高止まりしている。

トレンドとしては、全体として雇用者数は増加傾向で、正規雇用者の数は一定から微減。非正規雇用の人数は増加傾向にある。

非正規雇用から正規雇用になるケースは確実に存在しているし、一方で正規雇用だった人が離職・転職を通じて非正規雇用になるケースも増えていると思う。

もはや、自分がどのような形で雇用されているかに関わらず、社外で学ぶ。信頼できる人脈をつくることが必要だということに気付き、いち早くその行動を起こすことが必要なのではないだろうか。早晩、正規雇用が持つ既得権は薄れ、実力で評価される時代になる。

自己啓発本やビジネス書をあまり読まなかった人、会社の研修以外で学ぼうとしなかった人も多くいると思うが、そういう人たちよりも、なんだかんだいわれながら継続的に学んできた人のほうがスッと仕事を決めているような気がする。(これは僕の感覚値)

既得権にあぐらをかいて、自分を磨く努力を怠れば、いざ既得権を失ったときのギャップが激しい。
30代、40代の方の転職相談に乗るようになって、一層強くそう思うようになった。