遅ればせながら、センゴク天正記8巻を読みました。
以下、ネタバレ含みますので、読んでない方はご注意ください。
センゴク天正記(8) (ヤングマガジンKC)
著者:宮下 英樹
販売元:講談社
発売日:2010-03-05
おすすめ度:
クチコミを見る
僕は歴史オタクまでいかないまでも、歴史好きで、フィクションが含まれる歴史モノであっても結構楽しんで読むことが出来ます。
このセンゴクという漫画は結構スゴくて、もちろん戦国時代を舞台にした漫画なので、どうしても戦いのシーンが中心になるんですが、合戦のシーンのみならず、戦国時代の経済やテクノロジーの発展の描写も細かくて、あたりまえだけど、戦国時代と言うのは戦いの巧拙だけではなくて、国全体を巻き込んだサバイバルだなぁ。と改めて感じさせてくれる点で大変素晴らしい漫画だと思います。
センゴク第8巻は、マンガのオビに、
----
「信長公記」「歴代古案」「越賀雑記」
あらゆる史料から手取川合戦を多角的に検証!!
「北徴遺文」「北越軍記」「長家家譜」
そこで何があったのか?
----
とでかでかと書かれているのですが、今回のメインテーマは、織田軍(総大将:柴田勝家)と上杉謙信の激突。上杉軍がさんざんに織田軍の打ち破った、手取川の合戦がテーマです。一番の見所は、上杉謙信のすさまじさ。
岩明均の名作、雪 の峠・剣の舞にも上杉謙信は出てくるのですが、
雪の峠・剣の舞 (KCデラックス)
著者:岩明 均
販売元:講談社
発売日:2001-03-21
おすすめ度:
クチコミを見る
上杉謙信と言えば、当時の戦国武将にとって、カリスマだったみたいですね。
自分のことを毘沙門天の生まれ変わりだと信じていて、単騎城の間近までいって、鉄砲の弾幕に身をさらしながらゆうゆうと酒を飲みながら敵を偵察したり、と狂ったようなエピソードがわんさと出てきます。
まぁ、当時の鉄砲の射程距離と命中精度を知り尽くした上での偵察とも取れますが、やはり戦場の運を味方につけていたというのはあるのかもしれません。
戦場の運と言えば、東郷平八郎ですよね。日本海海戦の司令官に東郷は「運が良い」から選ばれたというのは有名な話ですが、(もちろん他にも国際法に詳しいとかあったのでしょうが、運はかなり多真面目に理由にされたみたいです。)実際にもの凄く強運だったらしく、日本海海戦の時に艦橋に身をさらし、周囲が砲撃される中、東郷平八郎のいる周囲だけは、最後まできれいなままだった。というのも伝説のひとつでしょう。ここらへん、艦橋に身をさらしつつ指揮をとり、その身と引換に英国を守ったネルソンに比べ、格の違いを感じさせます。(もっとも、艦砲に対する信仰と現人神とされた東郷元帥が、その後の日本軍の硬直化を招いた可能性は否めませんけどね。)
----
さて、余談が過ぎました。
以下、ネタバレ含みますので、読んでない方はご注意ください。
センゴク天正記(8) (ヤングマガジンKC)
著者:宮下 英樹
販売元:講談社
発売日:2010-03-05
おすすめ度:
クチコミを見る
僕は歴史オタクまでいかないまでも、歴史好きで、フィクションが含まれる歴史モノであっても結構楽しんで読むことが出来ます。
このセンゴクという漫画は結構スゴくて、もちろん戦国時代を舞台にした漫画なので、どうしても戦いのシーンが中心になるんですが、合戦のシーンのみならず、戦国時代の経済やテクノロジーの発展の描写も細かくて、あたりまえだけど、戦国時代と言うのは戦いの巧拙だけではなくて、国全体を巻き込んだサバイバルだなぁ。と改めて感じさせてくれる点で大変素晴らしい漫画だと思います。
センゴク第8巻は、マンガのオビに、
----
「信長公記」「歴代古案」「越賀雑記」
あらゆる史料から手取川合戦を多角的に検証!!
「北徴遺文」「北越軍記」「長家家譜」
そこで何があったのか?
----
とでかでかと書かれているのですが、今回のメインテーマは、織田軍(総大将:柴田勝家)と上杉謙信の激突。上杉軍がさんざんに織田軍の打ち破った、手取川の合戦がテーマです。一番の見所は、上杉謙信のすさまじさ。
岩明均の名作、雪 の峠・剣の舞にも上杉謙信は出てくるのですが、
雪の峠・剣の舞 (KCデラックス)
著者:岩明 均
販売元:講談社
発売日:2001-03-21
おすすめ度:
クチコミを見る
上杉謙信と言えば、当時の戦国武将にとって、カリスマだったみたいですね。
自分のことを毘沙門天の生まれ変わりだと信じていて、単騎城の間近までいって、鉄砲の弾幕に身をさらしながらゆうゆうと酒を飲みながら敵を偵察したり、と狂ったようなエピソードがわんさと出てきます。
まぁ、当時の鉄砲の射程距離と命中精度を知り尽くした上での偵察とも取れますが、やはり戦場の運を味方につけていたというのはあるのかもしれません。
戦場の運と言えば、東郷平八郎ですよね。日本海海戦の司令官に東郷は「運が良い」から選ばれたというのは有名な話ですが、(もちろん他にも国際法に詳しいとかあったのでしょうが、運はかなり多真面目に理由にされたみたいです。)実際にもの凄く強運だったらしく、日本海海戦の時に艦橋に身をさらし、周囲が砲撃される中、東郷平八郎のいる周囲だけは、最後まできれいなままだった。というのも伝説のひとつでしょう。ここらへん、艦橋に身をさらしつつ指揮をとり、その身と引換に英国を守ったネルソンに比べ、格の違いを感じさせます。(もっとも、艦砲に対する信仰と現人神とされた東郷元帥が、その後の日本軍の硬直化を招いた可能性は否めませんけどね。)
----
さて、余談が過ぎました。
僕は以前にも、武田信玄ネタで、ひとつエントリを書いている(参考:シナリオを、描け)のですが、このセンゴクでも素晴らしい台詞が出てきます。
理の信玄、勘の謙信
根本は違えど、合戦の到達点は同じ。
(羽柴筑前守秀吉)
この戦いを描くために、作者である宮下英樹はもの凄く緻密に謙信を描き、伏線を張っています。謙信の台詞が神秘的で、なんでこういう台詞をいうのかわからない。それを必死で解釈しようとする部下。そういう演出ですね。実際に、時に天才は何故そういう結論に至るのか自分自身でもわからない。というところがあるのだと思います。それに翻弄されつつ、惹かれていく部下。信玄の持つ限りない合理性に裏打ちされた戦略・戦術とはまた違った魅力があります。(人にオススメできるようなものではありませんけどね。凡人が目指すならやはり、信玄であり、信長なのでしょう。謙信だと言葉が通じませんから。)
さて、この巻の中で、僕の心が震えたのは、
七尾城を包囲した謙信の軍勢の兵が、目を盗んで民家で酒盛りしている場面。
雑兵A:「バレたら事だぞ。攻城中に民家に押入って泥酔などと」
雑兵B:「ま~さか不識庵様(謙信)が民家一軒一軒見回りにくるってか」
こんな話を雑兵がしている時点で、死亡フラグ立ちまくりなのですが、案の定、雑兵が立小便にたった後ろに謙信が立っていて、扇子で激烈な一撃を雑兵にお見舞いするのです。そして、
謙信:「城攻めを続けよと申したはずだが」
と述べるわけです。上杉軍の規律の厳しさ(そして、兵の強さ)は戦国時代屈指だったようですので、それを彷彿とさせるエピソード(フィクション)をうまく入れていると思います。ここに至る前にも、重臣から国の政策を問われたときに「兵を鍛えよ」とだけ答えていたりして、一貫しています。
で、こういった一連の上杉軍の規律の厳しさが伏線としてはられた上で、センゴクでの手取川の戦いの勝敗を分けることになった、上杉軍の完全な情報封鎖が実現するわけです。
織田側としては、手取川を渡河せず、手取川を挟んで鉄砲を中心に防戦に徹すれば、いかに上杉軍といえども、その防衛ラインを突破することは出来なかったはずなのです。しかし、織田の友軍で手取川を超えた先にある、七尾城が織田に救援を求めている。七尾城は既に謙信の手におちているのですが、完全な情報封鎖と、偽装により、織田軍はそれに気付かず、じれて渡河してしまう。
そこに上杉軍が襲いかかる…。
そういう展開です。
----
いまも昔も、戦いの本質のひとつは、情報戦を制したものが勝利を得る。だと思います。
多くの人がそのことを理解しているのですが、情報というものは漏れやすく、コントロールが利きにくいものでもあります。そこを圧倒的な規律によって統制した上杉軍には、現代に生きる我々も学ぶべきところが多々ありそうです。
組織の規律と情報の操作、そしてそれを実現可能にする信賞必罰とリーダーシップ。
これは現代の企業戦略にも活かせるところが多々ありそうです。
勘の謙信と言いながら、勝利を手中に収めるために、必要な組織づくりと戦術をきっちり描いているんですね。凄いことだと思います。そして、それを描ききった作者に感謝。
信長の洞察力 秀吉の速断力―歴史に学ぶ組織管理 (学研M文庫)
著者:樋口 晴彦
販売元:学習研究社
発売日:2006-05
おすすめ度:
クチコミを見る
※もう少し真剣に、戦略や組織を戦国時代の歴史から学びたい人はこちらの本をどうぞ。戦国時代の合戦や組織の成功例を、具体的に現実に落とし込んで考えられています。普通に読み物としても楽しいと思います。
理の信玄、勘の謙信
根本は違えど、合戦の到達点は同じ。
(羽柴筑前守秀吉)
この戦いを描くために、作者である宮下英樹はもの凄く緻密に謙信を描き、伏線を張っています。謙信の台詞が神秘的で、なんでこういう台詞をいうのかわからない。それを必死で解釈しようとする部下。そういう演出ですね。実際に、時に天才は何故そういう結論に至るのか自分自身でもわからない。というところがあるのだと思います。それに翻弄されつつ、惹かれていく部下。信玄の持つ限りない合理性に裏打ちされた戦略・戦術とはまた違った魅力があります。(人にオススメできるようなものではありませんけどね。凡人が目指すならやはり、信玄であり、信長なのでしょう。謙信だと言葉が通じませんから。)
さて、この巻の中で、僕の心が震えたのは、
七尾城を包囲した謙信の軍勢の兵が、目を盗んで民家で酒盛りしている場面。
雑兵A:「バレたら事だぞ。攻城中に民家に押入って泥酔などと」
雑兵B:「ま~さか不識庵様(謙信)が民家一軒一軒見回りにくるってか」
こんな話を雑兵がしている時点で、死亡フラグ立ちまくりなのですが、案の定、雑兵が立小便にたった後ろに謙信が立っていて、扇子で激烈な一撃を雑兵にお見舞いするのです。そして、
謙信:「城攻めを続けよと申したはずだが」
と述べるわけです。上杉軍の規律の厳しさ(そして、兵の強さ)は戦国時代屈指だったようですので、それを彷彿とさせるエピソード(フィクション)をうまく入れていると思います。ここに至る前にも、重臣から国の政策を問われたときに「兵を鍛えよ」とだけ答えていたりして、一貫しています。
で、こういった一連の上杉軍の規律の厳しさが伏線としてはられた上で、センゴクでの手取川の戦いの勝敗を分けることになった、上杉軍の完全な情報封鎖が実現するわけです。
織田側としては、手取川を渡河せず、手取川を挟んで鉄砲を中心に防戦に徹すれば、いかに上杉軍といえども、その防衛ラインを突破することは出来なかったはずなのです。しかし、織田の友軍で手取川を超えた先にある、七尾城が織田に救援を求めている。七尾城は既に謙信の手におちているのですが、完全な情報封鎖と、偽装により、織田軍はそれに気付かず、じれて渡河してしまう。
そこに上杉軍が襲いかかる…。
そういう展開です。
----
いまも昔も、戦いの本質のひとつは、情報戦を制したものが勝利を得る。だと思います。
多くの人がそのことを理解しているのですが、情報というものは漏れやすく、コントロールが利きにくいものでもあります。そこを圧倒的な規律によって統制した上杉軍には、現代に生きる我々も学ぶべきところが多々ありそうです。
組織の規律と情報の操作、そしてそれを実現可能にする信賞必罰とリーダーシップ。
これは現代の企業戦略にも活かせるところが多々ありそうです。
勘の謙信と言いながら、勝利を手中に収めるために、必要な組織づくりと戦術をきっちり描いているんですね。凄いことだと思います。そして、それを描ききった作者に感謝。
信長の洞察力 秀吉の速断力―歴史に学ぶ組織管理 (学研M文庫)
著者:樋口 晴彦
販売元:学習研究社
発売日:2006-05
おすすめ度:
クチコミを見る
※もう少し真剣に、戦略や組織を戦国時代の歴史から学びたい人はこちらの本をどうぞ。戦国時代の合戦や組織の成功例を、具体的に現実に落とし込んで考えられています。普通に読み物としても楽しいと思います。
Comment
コメントする