僕は1999年に就職活動をしました。会社は全部で8社ぐらい?受けたのかな。

受かった会社の選考よりも、落ちた会社の選考のほうが覚えているもので、あるシンクタンクを受けたときに提出したレポートの出来の悪さと、あるコンサルティング会社を受けたときに出たケーススタディーの答案を前に、頭が真っ白になったときのことは、今でもたまに思い出します。

どうやって分析し、自分の見解を示せば良いのか、まるでわからなかったのです。

それから数年がたち、僕はケーススタディーを受ける側ではなく、つくる側になりました。
データの見方を教え、伝える側になったのです。

そうなれたのは、データを分析する。ということに関して、助言を与え続けてくれた先輩・上司がいたことと、何冊かの良書に巡りあえたからだと思います。これからの時代、事実をもとに分析をするという行為が今まで以上に大事になると思うので、データ分析をするにあたって、僕の助けになった一番大きな発見について記したいと思います。

これから就職活動をする人、ビジネスプランコンテストに参加する人、若手社員で事業計画の立案を任せられた人など、参考にして頂ければ幸いです。


■時系列データの分析:変化には3タイプある

データの変化を時系列に追うやり方は、もっとも簡単で、かつ効果的な分析の方法だと思います。ぼくも何から分析すればいいかわからない場合、年次報告書のデータや、社内にある販売データ、主要な経済指標など重要と思われるものを、グラフにして眺めることから分析をはじめていました。

時系列のデータを追うことで、どのようなタイプの変化が起きているのか。ということがわかります。具体的には、1)直線的変化、2)循環的変化、3)構造的変化のうち、どのタイプに属する変化なのか、見極めます。

henka

1)直線的変化

これは一方向に伸び続ける変化で、将来をかなり確実に予測出来る。という特徴があります。例えば、コンピューターの性能向上を表すムーアの法則や、世界全体で見た場合のGDPの増加、経験曲線に代表される、製品一つあたりの生産コストの低下などがこれにあたります。


2)循環的変化

これは、定期的に同じような動きをする変化です。これも予測がしやすく、例えば季節性のある商売や、景気動向などは、循環的変化と呼ぶことが出来るかもしれません。

henka_2
3)構造的変化

僕がデータを見る際に一番注意して探すようになったのは、この構造的変化です。構造的変化はいったん変わると後戻りしない。いったん変わると、急に変わる。という特徴があります。例えばプロダクトライフサイクルなどは、分かりやすい構造変化の一例といえるでしょう。ある程度までは順調に伸びるけれど、急に売れなくなり、一度売れなくなると後は下がる一方。そういう変化です。

プロダクトライフサイクル以外にも至るところに構造的変化はあります。例えば、グローバル化の進展テクノロジーの進化による変化は、市場を一方向にガラリと変えるインパクトがあります。(今だったら、スマートフォンの普及や、電子書籍の普及などがそれにあたるでしょうか。)

以前、環境分析の考え方を書きましたが、外部環境分析をする際には、確実に予測出来る直線的変化(人口動態)を抑えるのは当然として、今、どのような構造的な変化(テクノロジーの進化や規制緩和、グローバル化の進展etc..)が起きているかを他社にさきがけて分析し、戦略に活かすことが重要になります。

内部・外部の構造的変化を見抜き、戦略に活かす。これが出来ればデータ分析の8割は成功したも同然です。(ちなみに、ウェブ上のエントリでも、良記事とされるものは構造的変化を的確に見抜き、文章なりデータなりで明示されているものが多いと思います。)

■3つの変化を組み合わせてデータを読み解く:日本経済の例

4400

さて、変化には3つのタイプがある。ということを念頭において、データを眺めてみたいと思います。特定の企業をサンプルにすべきか迷ったのですが、誰にでもわかる、身近なデータということで、日本の実質GDP成長率をサンプルとして用います。

先程の3つの変化をもとにデータを眺めてみると、いくつかの興味深い事実に気付きます。
日本はどうやら、戦後2回(1974年、1991年)ほど大きな構造変化に直面していることがわかります。

この構造変化はどうして起こったんだろうなー。

と、深く細かく考えて行くことが、データ分析です。

ぱっと思いつくのは、1973年に起きたオイルショックと、1989-90年の消費税導入・バブル崩壊などです。しかし、これらが真の原因であれば、オイルショックの狂乱が落ち着いたら成長率はもとに戻るはずです。また、バブル崩壊から復興すれば、成長率はもとに戻るはずです。

それが起きていないのは、オイルショックやバブル崩壊は変化のトリガーに過ぎず、何らかの構造的変化が日本の政治・経済で起きている。と考えるべきなのです。そこを考えるのが面白く、またコンサルタントなり、アナリストなりの腕の見せ所でもあります。(だから、経済評論家は○○という構造変化が起きている。と繰り返し述べるのです。表面的な変化ではなく、その裏の変化を読み取れよ。と)

また、何らかの直線的変化と組み合わせて、この数値を眺めてみるとまた面白いことに気付きます。たとえば、日本の労働力人口は2000年までは、一方的に増え続けています。しかし、長期的に見ると、GDP成長率は一方的に減り続けているようにも見えます。

本来であれば、人口増加は生産力と需要(内需)を高めるもののはずですが、成長力は落ち続けている。(実質GDPは増え続けていますが。)これは、人口増加に頼った成長が限界に来ている。という構造変化を示しているとも取れます。だとすれば、今の少子化対策というのは本当に適切なのでしょうか。そういう分析も出来るのではないかと思います。


■まとめ

さて、以下がもっとも簡単なデータ分析の流れです。

  1. 時系列にデータをまとめ、変化を見る
  2. 変化の原因を深く細かく分析する

本当はこの後に、水平比較(ベストプラクティスとの比較)や、外れ値の発見など、細かい分析が必要になってくるのですが、まずは今回述べたことを抑え、身につけておけば、問題の原因を発見したり仮説を立てたりしやすくなるのではないかと思います。

証券会社のアナリストも、経済評論家も、企業再建のプロフェッショナルも分析するデータは各々少しずつ違うとは思いますが、変化を読取り、深堀りする(考察する)基本は一緒だと思います。そういったプロフェッショナルと同じ視点で、経済や経営を分析出来るようになるとまた、一段と働くことが面白くなるのではないかと思います。

機会があれば、ベストプラクティスとの比較や、外れ値の発見のポイントなども紹介したいと思います。
今日はともかくこのへんで。

それでは、また。