はじめに
序章:市場と政府の役割
1章:市場
2章:供給
経済学素人(←つまり、僕のことです)のためのミクロ経済学、三回目は「市場」について整理します。
例によって、ネタもとは八田達夫先生のミクロ経済学です。
■企業の役割
企業は土地や機械など投入物(=input)を生産工程に投入して、産出物(=output)を生み出します。投入物には一定期間内に投入する量を変化させることが出来る可変投入物と、変化させることができない固定投入物にわけることが出きます。期間によって、何が可変投入物で何が固定投入物になるかは変化します。
■供給曲線
企業はある財・サービスに関して、個別の供給曲線を持ちます。(100円という価格で、財・サービスを20提供できる企業もあれば、50提供できる企業もある。)
企業が個々に保有する供給曲線を足し合わせると、産業全体の供給曲線となります。
企業の供給曲線が曲線になっていて、供給する量が多くになるにつれ、価格の上昇スピードが早くなるのは、限界生産力逓減の法則があるからです。
■限界生産力逓減の法則
生産物はある水準までは、一定の投入物に対して比例的に増えていきますが、ある水準を超えると、混み合いが発生して、生産力が減っていきます。これを限界生産力逓減の法則といいます。
上記の左図では、点線の傾きは投入物を1単位増やすことで得られる生産量の増加(=限界生産力)を示します。点線の傾きは徐々に水平に近く(=限界生産力が低下)していきます。
また、x軸とy軸を反転(上記右図)させると曲線への接線は、ある生産量1単位増やすのに必要などれだけの投入物(この場合は労働力のみを投入物を想定)が必要かを示します。(=限界必要労働力)
■利潤
利潤は
利潤=収入-費用
で示されます。また企業の収入は、生産したものが全て売れると仮定すると、
収入=価格×生産量
になります。この関係をグラフに表したものが上図です。総費用曲線は限界生産量逓減の法則にしたがって、生産量が増えるに従って投入量(すなわち生産にかかる費用)が高くなっています。総費用曲線のスタート地点が0ではないのは、生産量が0でも発生する固定費用があるからです。
また、企業の収入は価格×生産量なので、直線で表されます。このとき、生産物の価格は直線の傾きになります。
企業の収入直線と、財・サービスの生産にかかる総費用曲線の差が利潤になります。
利潤が最大になるのは、総費用曲線の傾き(生産量をひとつ増やすのに必要な費用)が収入を示す直線の傾きと等しくなった地点です。
■生産者余剰
上図は、先程のグラフで用いた総費用曲線の限界費用(生産量を1単位増やすのに必要になる費用)をグラフにしたものです。ある水準の生産量までは限界費用は一定ですが、ある水準を超えると限界費用は(限界生産量逓減の法則に従って)上昇します。
上図の灰色の線は財・サービス一個あたりの価格です。この価格と費用の差が利潤になります。限界利潤の総和が生産者余剰(利潤+固定費用)を示します。色分けしたSの部分はは企業の利潤が最大化されたときの生産者余剰を示します。生産量がそれ以上になると逆に損失が増加します。
また、限界費用曲線の下側の面積は可変費用を示します。
----
さて、ここまでは経済学の基本中の基本という感じでしたが、次の章は余剰と参入規制ということで、実例をもとにした解説が増えそうです。
供給の章を読んで感じたのは、経済学って会計学、あるいは経営学との親和性です。歴史的には会計が一番古いので、会計学の考え方が経済にも反映され、経済学の考えが経営に反映されるようになってきたと思うのですが、会計や経営についての知識のある人であれば、経済学の考えに関しても理解しやすいかもしれないですね。(もちろんちょっとずつ異なるので、若干混乱するところもあるかもしれませんが。)
あと、ここらへんの限界利潤とか、そういう部分でつまづく人も中にはいるのかなぁ。と感じました。八田ミクロは微分や積分を知らない人でも理解できるように書かれているので(その分、説明が冗長になってしまう部分もあるかと思いますが、そこは致し方ないかと)、数学は得意じゃなかったけど、経済学を勉強してみたいという人には向いているんじゃないかな、と思います。
ミクロ経済学〈1〉市場の失敗と政府の失敗への対策 (プログレッシブ経済学シリーズ)
著者:八田 達夫
販売元:東洋経済新報社
発売日:2008-10
おすすめ度:
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生産物はある水準までは、一定の投入物に対して比例的に増えていきますが、ある水準を超えると、混み合いが発生して、生産力が減っていきます。これを限界生産力逓減の法則といいます。
上記の左図では、点線の傾きは投入物を1単位増やすことで得られる生産量の増加(=限界生産力)を示します。点線の傾きは徐々に水平に近く(=限界生産力が低下)していきます。
また、x軸とy軸を反転(上記右図)させると曲線への接線は、ある生産量1単位増やすのに必要などれだけの投入物(この場合は労働力のみを投入物を想定)が必要かを示します。(=限界必要労働力)
fukui's メモ:
八田ミクロでは、生産力が低下する理由を、一定の農地に労働者を投入したときに得られる生産物の量で示しています。一定の人数までは耕す耕地が存分にありますが、一定の人数を超えると他の労働者の耕地を邪魔する形になるので、労働者一人が耕作できる面積は徐々に小さくなり思うように生産量が伸びなくなります。これを混み合いと表現しています。
実際のビジネスでは、生産力は一定の人数までは逓増して、一定の人数からは逓減するようにも感じます。FFSと呼ばれる組織論では、アメリカの軍隊の研究から、同じようなタイプの人材が集まったときは6人の組織、かつ短期のプロジェクトの時にもっとも一人当たりの生産性が高く、異なるタイプの人材が集まったときは8人の組織かつ、長期のプロジェクトでもっとも成果が高くなる。という研究結果が残されています。(国内外の多くの企業でこの理論を元にしたチーミングが実行され、成果を上げました。)8人以上の組織になるとどのようなケースでも生産性は落ちていきます。
工場やオフィスなどの資本に関しても、過剰な工場設備は無駄になることもあるので、これも限界生産力逓減の法則が働くような気がします。
■利潤
利潤は
利潤=収入-費用
で示されます。また企業の収入は、生産したものが全て売れると仮定すると、
収入=価格×生産量
になります。この関係をグラフに表したものが上図です。総費用曲線は限界生産量逓減の法則にしたがって、生産量が増えるに従って投入量(すなわち生産にかかる費用)が高くなっています。総費用曲線のスタート地点が0ではないのは、生産量が0でも発生する固定費用があるからです。
また、企業の収入は価格×生産量なので、直線で表されます。このとき、生産物の価格は直線の傾きになります。
企業の収入直線と、財・サービスの生産にかかる総費用曲線の差が利潤になります。
利潤が最大になるのは、総費用曲線の傾き(生産量をひとつ増やすのに必要な費用)が収入を示す直線の傾きと等しくなった地点です。
■生産者余剰
上図は、先程のグラフで用いた総費用曲線の限界費用(生産量を1単位増やすのに必要になる費用)をグラフにしたものです。ある水準の生産量までは限界費用は一定ですが、ある水準を超えると限界費用は(限界生産量逓減の法則に従って)上昇します。
上図の灰色の線は財・サービス一個あたりの価格です。この価格と費用の差が利潤になります。限界利潤の総和が生産者余剰(利潤+固定費用)を示します。色分けしたSの部分はは企業の利潤が最大化されたときの生産者余剰を示します。生産量がそれ以上になると逆に損失が増加します。
また、限界費用曲線の下側の面積は可変費用を示します。
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さて、ここまでは経済学の基本中の基本という感じでしたが、次の章は余剰と参入規制ということで、実例をもとにした解説が増えそうです。
供給の章を読んで感じたのは、経済学って会計学、あるいは経営学との親和性です。歴史的には会計が一番古いので、会計学の考え方が経済にも反映され、経済学の考えが経営に反映されるようになってきたと思うのですが、会計や経営についての知識のある人であれば、経済学の考えに関しても理解しやすいかもしれないですね。(もちろんちょっとずつ異なるので、若干混乱するところもあるかもしれませんが。)
あと、ここらへんの限界利潤とか、そういう部分でつまづく人も中にはいるのかなぁ。と感じました。八田ミクロは微分や積分を知らない人でも理解できるように書かれているので(その分、説明が冗長になってしまう部分もあるかと思いますが、そこは致し方ないかと)、数学は得意じゃなかったけど、経済学を勉強してみたいという人には向いているんじゃないかな、と思います。
ミクロ経済学〈1〉市場の失敗と政府の失敗への対策 (プログレッシブ経済学シリーズ)
著者:八田 達夫
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発売日:2008-10
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