ミクロ経済学〈1〉市場の失敗と政府の失敗への対策 (プログレッシブ経済学シリーズ)ミクロ経済学〈1〉市場の失敗と政府の失敗への対策 (プログレッシブ経済学シリーズ)
著者:八田 達夫
販売元:東洋経済新報社
発売日:2008-10
おすすめ度:5.0
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僕は学生時代に比較的熱心に経済学を学んだのだけれど、BlogやTwitter上で経済学に関する記事を見かけるたびに、経済学を学び直したい気持ちを強くしてきた。

  • スゴく賢そうな人たちが、全く異なる見解を持つのは何故なのだろう?
  • 初歩的な経済知識があればわかるような間違った見解を、声を大にして語る人がいるのは何故だろう?
  • 部分ばかり論じて、全体最適の実現に関して論じられないのは何故だろう?

そんな疑問を持ちながら、BlogやTwitter上の議論を見ていたが、経済についてよく理解し、適切な投票行動をとったり、社会や経済に対して働きかけを行っていくためには、結局のところ投票者たる僕たちが、経済について最低限の理解をしていないといけないと感じるようになった。

そこでオススメされたのが、上記の八田先生によるミクロ経済学。人から勧められたものを鵜呑みにするのは余りよくないことだと思うが、手に取り、しばらく読み進めて行く中で、八田先生の細かなところまで配慮された文章構成に思わず唸らざるを得なかった。読み進めて行くうちに、八田先生は学者と言うよりも教育者だな。という感想を強く持つようになった。このミクロ経済学の教科書の素晴らしい点は次の通り。
  1. 加減乗除以外の数式を用いず、需要・供給分析の応用で全てを説明している。
  2. 日本の現実の経済政策問題をケース・スタディーとして用いている。

他にもあるが、以上の2点を実現するだけでも大変な工夫をされていることと思う。
何故、このような工夫をされたかに関しては、謝辞の欄に書かれている。
理論的な事柄に関する本書の説明方法の中で新しいものの多くは、私が大学2年制の時にEconomicsを読んだ時に持った疑問が原動力になっています。この本は、書いてあることの先を考えさせる力があったので、当時持った疑問が強く印象に残り、長年考え続けました。
八田先生は、国際基督教大学の2年時にSamuelson教授が書いた教科書の第5版をもとに英語で経済学を学んだという。Samuelson教授の偉大さは僕も以前のエントリで紹介したが、原書をもとに必死に考えるタイプの講義が八田先生を育んだのだろう。その精神はこの本にも受け継がれている。
Samuelson教授の教科書は、版が変わるたびに、その時の経済問題に的確な経済分析の光を当てるので、新しい版になるのが待ち遠しかったものです。
学問と現実社会のリンク。原則を現実経済に応用させる技術。これは学者であり教育者であったSamuelson教授の真骨頂といって良いだろう。

さて、この本は序章から終章まで24の章で構成されている。(Ⅰでカヴァーされているのは11章までだ。)僕自身の学びの意味を込めて、週に1回のペース で、この本の各章で気になった箇所を重点的に紹介し、可能であれば、自分自身の経験を元にした事例みたいなものも紹介したいと思っている。

現代のマーケティングやファイナンスは経済学の考え方を応用したものだ。経済学を現実経済に応用して考えることはなかなかできなくても、ビジネスに応用して説明する方法だったら自分でもできるかもしれない。そう感じた。

これから定期的に半年ぐらいかけて、ミクロ経済学の紹介文を書いて行く予定ですのでツッコミよろしくお願いします。また、エントリを見て、経済学学ぼうかな、と感じた人がいらっしゃれば、是非一緒に学びましょう。たぶん、一気に一冊の教科書を読むよりは、少しずつ時間をかけて理解した方がいいんじゃないかなと思います。

それでは、また。