<就活>廃止論~会社に頼れない時代の仕事選び~

が、本日出版された。2章までは就活<廃止論>ブログで読むことが出来る。経済を取り巻く環境の変化にあわせて、今までのような採用媒体に企業が採用広告を出し、大規模なセミナー会場に多くの学生を呼び、たくさん集めてたくさん落とす。という不思議な<就活>の仕組みも終わりを告げていくのだろう。

就活の仕組みが変わる、終りを告げる。ということは、リクナビやマイナビ、ジョブウェブといった就活サイトの役割も変わらなければいけないことを意味している。

しかし、どのようなサイトに変化すべきなのか。
そのことについて本日は考えてみたい。

■企業は力のある学生しか欲しくない

城繁幸氏が興味深い考察をしている。

新卒神話の終焉が意味するもの:Joe's Labo

ただし、求人倍率的には“元祖氷河期”の方がよっぽど低い。最低は00年卒業者に対する0.99。本年卒業予定者は1.62と、求人倍率だけを見れば氷河期とはいえない数字だ。
つまり、求人は出しても内定は出さない企業が増えたということになる。この事実は、新卒採用のトレンドが、過去10年の間に大きく変わったことを示している。
この事実は、伸びそうな学生であれば採用していた時代から、既に力をつけている学生しか企業は採用しなくなっている。ということを示している。就活廃止論ブログでは同様のことを次のように表現している。
この十五年ほどの間に、企業は人を内部で育てていく力を急速に失っている。企業と個人の関係が「一生の付き合い」を保証しきれなくなっているため、リスク丸抱えでゼロから人を育てることに腰が引けるようになってきている。つまり、できることなら、なるべく高いレベルまで自力で育ってきてくれた人を採りたいと思うようになってきたのである。これが最近企業のよく言う「人材の即戦力性」である
リクナビ、マイナビといった、新卒採用サイトは
  1. 企業を見つける
  2. 企業の情報を伝える
  3. 簡単にエントリーできるようにする
という機能を学生には提供してきた。(企業には、さらに学校名や属性で学生を絞り込む。という機能も提供している。)しかし、この機能の価値はここ1,2年の間に急激に低下している。特に多くの学生が就職を希望するような人気企業では、採用サイトを利用するのを辞めるところが次々と増えている。

今、企業が求めているのは、多くの人を集めることではなくて、優れた能力を持った人だけを集め、採用することだからだ。


■新卒採用サイトはコンセプトを変更しなければならない

2年前、僕も東洋経済にコラムを投稿した。

誰も語らない、新卒採用市場の深刻で根深い問題:東洋経済オンライン

「いい人を採用しようと思ったら、たくさんの人を集めないとダメですよ」

という意見を述べる「自称」採用コンサルタントのなんと多いことか。業界で当たり前のように語られている話ではあるが、私はこの意見が諸悪の根源であり、ひいてはミスマッチを生じさせている原因にもなっていると思う。

インターネットが普及しておらず、自由に企業についての情報を調べることができなかった時代(今となっては、記憶も曖昧な遠い昔の話だ。)は、「たくさん集めて、たくさん落とす」採用活動が有効だった時代もあっただろう。しかし、その時代のモデルを引きずり、結果として、ターゲットでない学生をわざわざお金をかけて集めて、お金をかけて落としている。なんと無駄で、失礼なことか。

説明会では、企業理解度の低い学生のために、わざわざレベルを下げて話をする必要が出てくる。結果として、志望度が高く、よく調べてきている学生にとっては、つまらない話に終始し、志望度が下がってしまう。面接の場では、志望度の高い人も低い人も同様に面接しなければならないので、面接官は消耗する。たくさん集めることで、本来のターゲットが取れなくなっている可能性がおおいにあるのだ。

もし、これからの時代、新卒採用サイトが生き残るとしたら、これまでの学生を集め、絞る。というコンセプトから、学生を集め、育てる。というコンセプトに変更しなければならないだろう。大学や企業が提供出来ていない、オンライン上の学びの場・議論の場を提供することで、優秀で意欲の高い学生を集め、育てるのだ。(それが無理なら、たくさんいる営業担当者やコンサルタントの数を減らし、営業を自動化し低コストで媒体を利用出来るようにすることだ。Find-jobのように。)

さらに、その成長や学びのプロセスがオープンに開示され、学生のバイオグラフィとなるようなサイトが望ましい。学生に対して社会人から推薦文が添えられるような機能も必要となるだろう。

学生は、そのバイオグラフィを企業への自己PRに使い志望企業に応募する。一方で、企業からもヘッドハントの連絡がくる。そんな状態を作るべきだ。

TwitterやBlogでいいんじゃない?という意見が出てくると思うが、それは確かにそのとおりで、採用サイト内でクローズドに情報がおさまるのではなく、オープンなプラットフォームのもとで情報が集約されるような状況を作るべきだろう。海外では実質的にFacebookがこの機能を担っているのだろう。


と、まぁこのようなことを書いてきたが、実際にはこのような状況をつくるのはなかなか難しい。何故、難しいのか、その点に関しては、また後日にでもまとめてみようと思う。


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著者:佐藤 孝治
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