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前回のまとめになりますが、学生時代に起業し、成功した経営者にはいくつかの特徴があります。今回は、「起業し、成功するために必要な力」について考察していきたいと思いますが、その前に、前回の振り返りをしたいと思います。


■学生時代に起業し、成功した人の共通項

前回のエントリでは、学生時代に起業して成功した人の共通項として下記の3つを挙げました。
  1. 事前にビジネスの修行をし、勝算を持って起業する
  2. 自分が持っているリソースを活用する
  3. お金を稼ぐために起業する
どれも当たり前のことのように思われますが、3の条件に関しては、意外と見落としがちな視点ではないかな。と思います。お金を稼ぐことを念頭においてないと、「立派なことは謳っているけど、回っていないNPOやベンチャー」になりがちです。そういう会社はいつしか人が離れ、潰れてしまいます。

何かビジョンを実現しようと思ったら、ビジョンに向けて車を動かすためのガソリン(=お金)がどうしても必要になるのです。

一方で、「稼ぐ」ということだけを目的にしていると、事業が小さなままで終り、大きい事業に育たなくなることも多いのでしょう。人材が集まらなかったり、あるいはすぐに離れていってしまったり、商品・サービスの質が低下してしまったり。そこで初めて、ビジョンを描くことや、クレドをまとめることなどが必要になってくるのだと思います。

学生時代に起業する。ということは不利でもありますが、(大学で優秀な)人材が集めやすかったり、メディアに注目されたり、年輩の経営者が支援してくれたり。というアドバンテージも得られます。このアドバンテージがえられている間に、一気に稼げる状態をつくり、その後、事業を転換・拡大する。というしたたかさが学生起業家には必要とされているのだと思います。

さて、本日はもう2つほど、共通項を挙げたいと思います。

4. 小資本で実行できるビジネスを手がける

5. 外部環境の変化を利用し、先人がいない分野で勝負する

です。


4.小資本で実行できるビジネスを手がける

在庫を持たないビジネスといってもいいかもしれません。江副氏は広告販売、孫氏はソフトウェア卸売、堀江氏はウェブ制作、内藤氏はブログサービス提供と、設備投資が必要なく、在庫を持たないビジネスを展開しています。知識と労働をお金に変えるようなビジネスです。身軽さと、社員の知恵が何よりの商品だったのでしょう。労働集約型のビジネスのため、自ずと稼げる金額には限界がありますが、利益が増えるに従って、社員を増やし、もっとレバレッジの利くビジネスに事業領域をシフトしていったところが、スゴイと思います。


5.外部環境の変化を利用し、先人がいない分野で勝負する。

江副氏は、日本が「東洋の奇跡」と言われる高度経済成長期の初期に起業しました。大学の数はまだまだ少なく、大卒社員・中でも東大などの有名大学を出た人材が一人でも多くほしい時代です。(今より遥かに採用において学歴が重視された時代でもありました。)この時代に求人広告の事業を手がけることは合理的なことだったと思います。

同様に、孫氏はコンピューターの主役がハードウェアからソフトウェアに移行する時代に起業しました。まだ、零細ソフトウェアメーカーが流通ルートを持たない時代に、一気にそれを束ねました。

堀江氏は、インターネットが話題に出始めた頃に、ウェブ制作の会社としてデビューしましたし、内藤氏はブログというものが世に認知されはじめたときに、いち早く開発に着手し、主力商品に仕上げました。

全て、新たな時代な変化を読み取り、これからメジャーになる分野に機会を見つけ、いち早く乗り出したことが成功の要因と成っています。

また、その分野に先人がいないため、20代の若者であっても、その道のトップに立てる。という点も学生起業家に有利な点でしょう。

私がかつて、コンサルタントとして仕事をしていたときに、ある上場企業の社長に教えて頂いた言葉で大変印象に残っている言葉があります。
「fukui君、僕もかつてはコンサルタントとして多くの会社の経営を見てきたんだ。大きな会社もあれば、小さな会社のコンサルティングも手がけた。社長は優秀な人が多かった。でも、優秀な人でも潰れる会社はあるし、いっちゃ悪いけど、馬鹿みたいな社長でも大成功する会社もあった。その時に気付いたんだ。経営者の能力と企業が成長するかどうかはあまり関係がない。企業が成長するかどうかの80%は成長産業に身をおいているかどうかで決まる、ってね。」
経験の浅い僕にも理解出来るように多少オーバーにお話頂いたと思うのですが、僕はこの話はかなり真実を突いていると思います。もちろん、成長産業を見抜く力や、衰退産業から効果的に撤退する能力が経営者に求められますから、経営者の能力が必要ない。ということはないと思います。

しかし、短期間に上場出来るほど事業を成功させようと思ったら、成長産業を見抜き、いち早くその分野のリーディングカンパニーになる必要があるのだと思います。小資本で事業を始めざるをえない、学生起業家であれば、なおさらそうなのだと思います。


■起業に必要な能力

さて、最後に起業に必要な能力に関して見ていきましょう。ここではECナビ社長の宇佐美氏のTwitter上の発言を引用したいと思います。(余談ですが、宇佐美氏はTwitter上で非常にフランクに学生からの質問に対して答えておられます。経営者と直接対話できるというのは素晴らしいことではないでしょうか。)

usapon: 成長領域を見分ける力。強い意志。仲間を集める力。情熱。 RT @nakahachi: ですよね(苦笑)では、逆に企業に必要な能力(感覚?)って何なんでしょうか?RT @usapon: コンサルで起業のノウハウなんて学べないよ。


宇佐美氏は起業に必要な力を
  • 成長領域を見分ける力
  • 強い意志
  • 仲間を集める力
  • 情熱
とされています。成長領域を見分ける力は、なんとなく聞いているだけではその重要性を見過ごしてしまいそうですが、本エントリをここまで読んでくれた方には、その重要性が非常によくご理解頂けるのではないでしょうか。

まずは、成長領域を見極める力が何より必要です。これには、最新の経済・技術・政治の動向にアンテナを高くはっておくことが、助けになるでしょう。もし、成長領域を見極めたら、その分野の知識なり、技術なりが身につく可能性が高い企業のもとで、アルバイトもしくはインターンシップ生として働くのが良いのではないでしょうか。(例えば、資源問題に興味があるのであれば、レアメタル専門の商社など。)働く先の社長が優秀かどうか、人物が魅力的かどうかはあまり関係ないでしょう。逆にチャンスが広がるかもしれません。(堀江氏が修行したウェブ制作の会社について、当時の社長を褒める記事を見かけたことがありません。)

成長領域を見極めたとしても、その分野にいち早く進出できなければ、大資本の会社に先をこされます。だから、次に仲間を集める力が必要になります。

ドリコム取締役井上氏「社長の一声でブログシステム開発がスタート
から内藤社長の当時の意思決定の様子を引用します。

内藤(社長)がコンビニでYahoo!の雑誌を見て、その中にアメリカでBLOGが流行っているという記事があったらしく、すぐに社長指示で「やろう!」ということになり、そのまま「作って!」と任されました。

はじめてBLOGを見たときは、日記ツールとの違いもわからなくて、いまさら日記ツール作ってどうするんだと思っていました。(笑)でも、様々なBLOGを見たり、BLOGのツールを試してみたりして、いろいろ面白そうなことがわかってきて。一方で難しいものが多いとも感じました。

ベンチャー経営者の嗅覚と意思決定の速さがよく理解出来る記事だと思います。
ただ、成長領域を見極め、仲間を集めたとしても、ビジネスをローンチするまでは多くの困難に直面することでしょう。その時に必要になるのが、困難を乗り越えるための強い意志と、情熱になるのだと思います。