fukuidayo

人と組織と、fukui's blog

32歳にして会社を辞め、小説家になることを志し、食うために起業したある男のblogです。

2009年11月

30

代表的な文学新人賞と投稿計画 まとめサイト

自分に追い込みをかける意味でも、来年投稿予定の新人賞の一覧をあげておく。今の自分からみると遥か遠くに見える頂きのように思えるが、それでも一歩一歩進めていくしかない。


代表的新人賞一覧

文藝賞(河出書房新社)    3月末日締切    400字詰原稿用紙100枚以上400枚以内    賞金50万円
新潮新人賞(新潮社)    3月末日締切    400字詰原稿用紙250枚以内    賞金50万円
小説すばる新人賞(集英社)    3月末日締切    400字詰原稿用紙250枚以内    賞金200万円
文學界新人賞・前期(文藝春秋)    6月末日    400字詰め原稿用紙100枚    賞金50万円
群像新人文学賞(講談社) 10月末日締切    400字詰め原稿用紙100枚    賞金50万円
文學界新人賞・後期(文藝春秋)    12月末日締切    400字詰め原稿用紙100枚    賞金50万円

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30

弱者のキャリア、あるいは妄想という名の切符


3月のライオンというマンガがある。作者は「ハチミツとクローバー」などで有名な羽海野チカさんだ。厳しいプロ将棋の世界を、優しいタッチで描いた作品だが、プロフェッショナルとは何か。キャリアとは何かを考える際に参考になる話がいくつも出てくる。そこだけ取り上げると「働きマン」みたいだ。

さて、その話の中に、主人公の桐山零がトーナメント戦の、次の対局相手のベテランの研究をそこそこにし、決勝で当たると思われる相手(後藤)の研究を一心にする。という場面が出てくる。その研究中の姿をたまたま見かけたのはスミスと呼ばれる別の棋士。零の友人でもある。

スミスは後藤の準決勝で当たることになっていた。スミスが勝ち抜くとは微塵も考えず、後藤の研究を一心にする零。その姿を見てスミスは心を痛めるが、「勝てるかもしれない。」「優勝できるかもしれない。」そう考えるやつじゃなきゃ、プロの世界の頂点には絶対に立てない。と思いを馳せる。

零は後藤と当たることはかなわず、研究をないがしろにしていたベテラン棋士、島田に敗れる。そして、スミスは後藤に敗れる。そして、お互いがお互いを恥じ、悔いる。プロの厳しい世界を描いた良作だ。

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29

習作)丸太小屋づくり-1


「思ってたより、はるかに大きいんですけど。」
目の前に近づいてくる80本の丸太を見て僕は少し気が遠くなる。

「確かにでかいな…」
彰文が答えるようにつぶやき、乗ってきた中古のレガシィを降りる。僕たちは、思い出したように軍手を取り出し、慎重にはめる。2,3度手を閉じたり開いたりして、そのフィット感を確認し、丸太に近寄る。僕は積み上げられた丸太の一本に手を触れ、押す。丸太はぴくりとも動かない。

僕たちはこれからログハウスを建てるのだ。
言いだしっぺは僕だ。
なんであんなことを言ってしまったんだろう、と、今はかなり後悔しているけれど。

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はじまりは2か月前、高校時代の仲間と地元で集まって飲んだときのことだ。
仲間の多くは地元で働いているけれど、僕のように東京で働いているひとも少なくはない。いったん集まればいろんな話をする。20代の頃は、誰と誰がつきあったとか、誰がどんな仕事をしているとか、そういう話で盛り上がることが多かったけれど、最近はすっかり新しい話題も少なくなった。

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26

今週の一冊) 『海辺のカフカ』 村上春樹 -11冊目

kafuka
村上春樹の小説を紹介するとしたら、最初の一冊は何がいいだろう?
最初の一冊はすごく大事なんだ。
つまらない。と思われてしまったら、二冊目を手に取ってもらうのはずいぶん後になるだろうから。

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僕が春樹作品とはじめて出会ったのは、中学3年の頃だったろうか。
とにかく、現国の問題集の題材が「ノルウェイの森」の一部を読んだことだけは覚えている。

正直言って一部だったし、何が面白いのか、何が言いたいのか全く分からなかった。村上春樹を理解するには若すぎたし、当時の僕を取り巻く世界は今よりもずっとシンプルだった。

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24

Googleの評価制度

IT業界徹底研究就職ガイド 2011年版 (日経BPムック)IT業界徹底研究就職ガイド 2011年版 (日経BPムック)
販売元:日経BP社
発売日:2009-11
おすすめ度:5.0
クチコミを見る

日経BPさんから機会を頂き、「IT業界徹底研究就職ガイド 2011年版」のネット業界に関するページを書かせて頂いた。昨年までIT業界の中にネット業界を特に含めていなかったとのことだが、市場的にも人気的にも取り上げざるを得ない状況になったとのことだ。執筆させて頂いた「ネット業界特集」はありがたいことに巻頭に持ってきて頂いたが、ムックの中で僕が最も興味深く読んだのは、「Googleの人事評価制度」に関するインタビュー項目だ。

評価制度は難しい。組織の規模によって、構成員によって、時代によって、文化的背景によって、その他様々な要因によって、最適な評価制度は異なる。かつては最高だった評価制度が、現代では機能しなくなることだってあるのだ。

Googleは人材の評価を「ページランク」方式でやっているとのこと。もちろんそれだけで評価しているわけではなく3つほどの評価方法を組み合わせているらしいが、「ページランク」による評価は人材評価の中でも大きなウェイトを占めるという。ページランクと言えば、Googleの検索システムの考え方の根幹を担っている考え方で、「他からよく閲覧される、引用の多いウェブサイトはページランクが高くなる。」というものだ。人事評価に応用すると、他人から評価の高い人が評価した人は、高い評価になる。という考え方だ。そして、その評価は相互に(名前入りで)完全にオープンにされる。続きを読む »
23

習作)Home -2


前回まで
習作)Home -1

「隆の家は何人家族?」シングルモルトに口をつけながら、立見さんが唐突に訪ねる。
「4人家族です。父と母と妹。」
「昔から、そう?」
「そうですね。ずっと4人でした。もっとも今は一人暮らしですけど。」
「僕は学生時代はずっと、7人家族だったんだ。今は、知ってのとおり一人暮らしだけどね。姉と妹は結婚したので、田舎では父と母が二人で暮らしている。」そういって、立見さんは静かに話し始めた。

僕-立見高彦は、北陸の田舎町の出身だ。田舎だからスモッグなんてかかっていない。だけど、北陸の空の色は鉛色だ。そういう記憶が強いだけかもしれないけれど、とにかく、雨と雪の記憶ばかり残っている。空を見上げると、真っ白な雪が鉛色の空から落ちてくる。結晶まで見えてしまいそうな、大粒の雪。目を閉じるとそんな記憶ばかり思い出される。

両親が共働きだったから、小さい頃は、祖父母が遊び相手だった。祖母は教養のある人で、勉強は祖母から。遊びやスポーツは祖父から教わった。

祖父は若い頃柔道をやっていて、かなり有名な選手だったらしい。そのせいなのかはわからないけれど、祖父からはいくつも「奇妙な教え」を受けた。たとえば、「歩いている時にポケットに手を入れるな。」という教え。これは、交通事故とか、いつ、どんな不測の事態が起きても「受け身を取れるように」という理由から、繰り返し教え込まれた。柔道を学ぶと最初に徹底的に教え込まれるのが受け身なのだけど、祖父は受け身さえしっかり取ることができれば、車にはねられても、家の二階から落ちても大丈夫だと信じていたふしがある。そんなわけで、祖父の前でポケットに手を入れて歩くことは、絶対にやってはいけないことの一つだった。続きを読む »
23

「豊かさ」のダブル・ミーニング


来週の日曜日から、坂の上の雲が始まります。
坂の上の雲は司馬遼太郎の作品の中で、僕が最も好きな作品です。

明治という時代の中で、坂の上に見える雲を目指して人々が力強く歩んでいくような物語を書きたかった。と司馬遼太郎氏は述べていますが、本当に素晴らしい作品だと思います。

ただ、最近の政治や経済、労働環境を見ていて思うのは、「目指すべき雲が今は、見えないのではないだろうか。」ということです。目指すべき雲が確かに見えている間は、貧しくとも、力が足りずとも幸せだった。どのように努力し幸せを掴み取れば良いか、道筋が示されていたから。

今、日本は豊かになった。これは素晴らしいことだと思います。
ただ、以前とは比べものにならないぐらい、娯楽も知識も、情報も増え、衣食住満たされるようになった。

豊かになること、と稼ぐこと、がほぼ同義であった時代から、「稼いでいるけど、イマイチ幸せじゃないぞ。」ということを多くの人が感じるようになってきたのではないかと思うのです。言い方を変えると、自分自身が目指すべき雲を一人一人が考え、見いださなければならない時代になった。とも言えます。

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20

執筆記録 11/20

実は今日はあんまり執筆していない。
昨日、村上春樹の東京奇譚集を読了した。春樹の短編は2万字程度。文庫本にしたら40ページぐらいだ。

春樹の本って、なんであんなに読んでいるだけで気持ちがいいんだろうな。面白いストーリーを書く作家はたくさんいて、それぞれに尊敬するけれど、文章読むだけで心地いい。ってのはひとつの才能だ。小説と言うよりも詩なのか。音楽なのか。

プロの作家になると、2万字ぐらいであれば1日で書き上げるのだろう。
僕も企業向けのレポートを書いている時は1万字ぐらいであれば、1日で書き上げていた。
もちろん、提案のプロットなり、シナリオなり、ロジックなりが見えている状態で。だが。

小説家も、話の筋書きが見えた状態であれば、1日で短編を書き上げてしまうのだろう。
ちょっとだけ、そこをめざしたい。土日は休むとしても、200本の短編を書き上げた1年。とか、そういう時期がが必要な気がする。とにかくたくさん、作品を作る時期を持ちたい。

小室哲哉の復活ライブは一気に50本の新曲を発表するそうだ。

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19

習作)Home -1

「時間が経つにつれ、深く重くなっていく後悔ってある?」
突然の質問に僕はとまどい、少しだけビールを飲み、口に手をあて考える。口に手をあてるのは小さい頃からの僕のくせだ。

「えぇと、そうですね。あると思います。僕は後悔だけは人一倍しているほうだと思います。受験に失敗して、浪人しましたし、大学時代は好きになった女の子に二股をかけられました。就職してからだって、1年目に起こした大きなクレームのことは忘れようにも忘れられませんよ。あのときは随分、立見さんにお世話になりました。」
僕は苦笑いをしながら答える。立見さんよりは、随分失敗してるし、後悔もしてるはずだ。

「なるほどね。まぁ、そういう後悔もあると思う。」
立見さんは、シングルモルトに静かに口をつける。ウイスキーが似合う人というのはこういう人のことを言うのだろう。
「でも、その後悔は今でも続いている?時間が経てばたつほど深く重くなっているかな。」

「うーん。そういわれると自信がなくなりますねぇ…。」
僕は少し迷う。確かに大学受験にも失敗したし、大好きだった彼女には裏切られたし、仕事だって忘れたい失敗が一杯だ。でも、よくよく考えてみると「後悔」 しているようなことを思い出しても、胸がきゅっと締め上げられるような気持ちになるのは一瞬で、あとは懐かしい思い出を愛でるような気持ちになる。浪人時代に出会った友達や先生は、かけがえのない財産だし、女性に対する理解だって深まった。あんな辛いクレームは仕事の励みになったし、後輩が問題を起こしたときにどのように振る舞えば良いかもわかるようになった。つまり、いろいろな辛い体験はあったし、二度と同じ経験はしたくないと思うけれど、後悔してるか。っていわれるとそうでもない。どちらかというと、「良い経験だった。」という表現が適切なのかもしれない。続きを読む »
19

今週の一冊) 『ポトスライムの舟』 津村記久子 -10冊目

potos小説家になるためのトレーニングの一環として、少しテーマを決めて小説を読むことにしてみました。
とりあえず、過去10年分の芥川賞・直木賞の受賞作を全て読み込んでみよう。と思い、まず最初に手に取ったのが、本作『ポトスライムの舟』。

2008年下半期の芥川賞受賞作で、地下鉄の中吊り広告で紹介文を見かけたとき、「これは読まねば!」と思ったものの、ずるずる1年が立ってしまったのでこれを機会に読んでみることに。

中吊りでの紹介文はどんなだったかもう記憶もおぼろげなのですが、「工場で働く30間近の女性の日常」を描いた小説だということだけは覚えています。リーマンショック前後の受賞作だったので、妙に鮮明に記憶に残っています。

主人公のナガセは工場で働く29歳。
新卒で入社した会社から激しいモラルハラスメントを受け1年で退社。
勤めるのが怖い時期が暫く続き、今もそれは完全には直っていない。
周囲に支えられ、現在の工場に仕事を見つけ働き初めてからもう4年がたつ。
そんなとき、工場の休憩室に「世界一周ピースボートの旅」のポスターが貼られる。
渡航費用は163万円。それは、ナガセの年収とほぼ同じ金額だった…。

導入はこんな感じなのですが、本当に日常を丁寧に、職場や女性の心の移り変わりを本当に丁寧に描いています。続きを読む »
自己紹介
プロジェクトデザイナー。富山県在住。人と組織の問題に興味があります。小説の原稿の断片、日々感じる社会や経済に関する疑問、書評を徒然なるままに。

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