先日、東京での仕事を終え、富山に戻る新幹線の中で、余りにも時間に余裕があったので、「今日、派遣をクビになった」という本を読んだ。コンビニにおいてある擦り方の粗い本で、よくある「派遣批判本」かと思ったのだけれど、結構中立的な立場で書かれたインタビューレポートで参考になった。
僕自身も、10年近く「人と組織」をテーマに仕事をしてきた経験から、自分の意見を少しまとめて見ようと思う。
さて、よくある話として「小泉・竹中路線」が格差を拡大させた。という意見がある。「格差拡大」の根拠として、派遣切りにあった人たちのドキュメンタリーが流されたり、ワーキングプアの話を持ち出したりする。最近見かけるのは、OECDの貧困率を持ち出して、格差の拡大を指摘する話だ。
僕自身も、10年近く「人と組織」をテーマに仕事をしてきた経験から、自分の意見を少しまとめて見ようと思う。
さて、よくある話として「小泉・竹中路線」が格差を拡大させた。という意見がある。「格差拡大」の根拠として、派遣切りにあった人たちのドキュメンタリーが流されたり、ワーキングプアの話を持ち出したりする。最近見かけるのは、OECDの貧困率を持ち出して、格差の拡大を指摘する話だ。
個別のドキュメンタリーはマクロでどういう現象が起きているか説明するのに不足で(N=10とか20で、現象を語られても…)、プロパガンダとして活用されるのがせいぜいだし、OECDの貧困率なんて、調査方法を見ればわかるけれど、非常にいい加減な統計だし、日本は今でも貧困率は世界の中でも最低クラスだ。今までの日本が異常値で、世界標準に近づこうとしているだけと考えた方がより理解できる。
しかし、労働市場に身をおいていると「確かに苦しんでいる社会人が大勢いる」これは肌で感じていた。この苦しみがどこからきているか調べて行く中でもっとも説得力のあった資料が下記のグラフ(平成19年度版 法人企業統計調査より作成 縦軸の単位は億円)だ。
これによると、
さて、もうひとつグラフを紹介したい。これは、総務省による労働力調査(平成21年度版)より作成した資料だ。
この資料によると、1998年から2008年の11年間で、
ここらへんの話は
2008-08-03 正社員ポジションはどこへ?
にも詳しいので、是非読んで頂きたい。実はこの11年間で見るから正規雇用が減っているようにも見えるけれども、20年と言うスパンで見ると、正規雇用の人数はあまり変わっていない。より正確に言うと、年配の方の正規雇用が増えて、若年層の非正規雇用が増えている。これは人口動態の変化(いわゆる団塊世代が高齢者になったことと、少子化)と女性の就業機会の増加による変化と考えられる。
ちなみに1998年から2008年の11年間で日本の実質GDPは10%程度成長したが、11年間の間に他の先進国のように平均して3%程度成長すると、11年間で40%近い成長となる。日本は過去10年間の間に最も成長しなかった国なんだね。
それで、今出来ることって何なの?っていう話しなんだけど、世界で最も成長していない国なのであれば、成長戦略を描くことがなにより大事になってくるのは当然だ。で、その成長を実現するひとつの方法が雇用の流動化なんだな(もちろん他にもたくさんある)。
仮に解雇規制を緩和することができたら、力のない社員を解雇して、力のある社員を採用するってところは増えるだろうな。将来の成長性を保つためにやれるならこれはやったほうがいい。短期的には、ローンを返せなくなって自殺とか、妻に愛想をつかされて自殺。って社会問題は起きると思うので慎重に取り組まないといけない。段階的に規制緩和せざるをえないだろうね。中期的には能力に応じた給与を与える市場は、流動的で効率的になる。特定の会社に入社(してゴール!)ってインセンティブよりも、自分自身の力を高め続けようってインセンティブが働くし。結果、生産性は高まる。
一方、雇用規制を強める(あるいは維持する)とどうなるかっていうと、産業構造が変わったのに解雇できないって会社が増えて、倒産する会社があふれることになるだろうな。すごく短い期間で時代の花形となる産業は変わっていくのに、雇用規制のおかげで、売上が減ったのに社員を解雇できなくなる。優秀な社員は花形の産業に移り無能な社員だけが残るようになる。一部の例外を除いて、企業の寿命は人の寿命よりも短いんだ。
雇用規制を強めるとこっちは短期的には需要はほんの一時的に維持できるかもしれないけど、中長期的には事業の成長性にあわせて労働力を調整できなくなるので、成長率をあげることができなくなる。だから、企業ごと、国ごと沈没する。どっちを選ぶべきかっていうと自明だと思うな。今、痛みが激しいからといって、これだけはやっちゃいけない施策のひとつ。
最初に「給与所得が減っている」というグラフを見せた理由もここらへんと関係していて、まずは実際に給与が減った人がいるんだから怒るのもわかるよ。っていうところが第一。第二に、経常利益にいくべき配分が給与などの形で従業員に配分されていたとしたら…、これも短期的には延命されるかもしれないけど、将来の成長に対する投資の原資を失って中長期的には国家沈没ということになるだろうね。
ちなみに僕は個々の企業が戦略の一環として、終身雇用や年功序列をうたうことはまぁ、構わないと思う。採用戦略のひとつにすぎない。将来「嘘ついてました」って事になる可能性は高いと思うけど、それを信じて目指すことと、それを信じて入る社員がいてもまぁいいかな。とは思う。自己責任でね。また、極めて優れていて、一生成長を続ける優秀な社員を少数だけとり続ける会社であれば、そういうことも可能かもしれない。ただし永遠にその状態を続けることは不可能だ。永遠に続く会社はないのだから。20年や30年、あるいは最高50~60年ぐらいであれば可能かもしれないけれど。
本の感想がかけなかった。
意見が乱暴で説明不足な点もあるので、言い足りなかったことは次の機会にでも書くとしよう。
あとは、ここ10年の産業の構造変化で苦しんでいる人たちへのメッセージも。
(学生だったらまずは必死に勉強して力をつけよう、で簡単なんだけどね。)
今日、派遣をクビになった
著者:増田 明利
販売元:彩図社
発売日:2009-05-14
おすすめ度:
クチコミを見る
しかし、労働市場に身をおいていると「確かに苦しんでいる社会人が大勢いる」これは肌で感じていた。この苦しみがどこからきているか調べて行く中でもっとも説得力のあった資料が下記のグラフ(平成19年度版 法人企業統計調査より作成 縦軸の単位は億円)だ。
これによると、
- 金融危機前の10年間で、企業の経常利益は28兆円から53兆円(+25兆円)に増加
- 一方、従業員給与は147兆円から125兆円(-22兆円)に減少
さて、もうひとつグラフを紹介したい。これは、総務省による労働力調査(平成21年度版)より作成した資料だ。
この資料によると、1998年から2008年の11年間で、
- 正規雇用は3630万人から3399万人(-231万人)に減少。
- 非正規雇用は1273万人から1760万人(+487万人)に増加。
ここらへんの話は
2008-08-03 正社員ポジションはどこへ?
にも詳しいので、是非読んで頂きたい。実はこの11年間で見るから正規雇用が減っているようにも見えるけれども、20年と言うスパンで見ると、正規雇用の人数はあまり変わっていない。より正確に言うと、年配の方の正規雇用が増えて、若年層の非正規雇用が増えている。これは人口動態の変化(いわゆる団塊世代が高齢者になったことと、少子化)と女性の就業機会の増加による変化と考えられる。
ちなみに1998年から2008年の11年間で日本の実質GDPは10%程度成長したが、11年間の間に他の先進国のように平均して3%程度成長すると、11年間で40%近い成長となる。日本は過去10年間の間に最も成長しなかった国なんだね。
それで、今出来ることって何なの?っていう話しなんだけど、世界で最も成長していない国なのであれば、成長戦略を描くことがなにより大事になってくるのは当然だ。で、その成長を実現するひとつの方法が雇用の流動化なんだな(もちろん他にもたくさんある)。
仮に解雇規制を緩和することができたら、力のない社員を解雇して、力のある社員を採用するってところは増えるだろうな。将来の成長性を保つためにやれるならこれはやったほうがいい。短期的には、ローンを返せなくなって自殺とか、妻に愛想をつかされて自殺。って社会問題は起きると思うので慎重に取り組まないといけない。段階的に規制緩和せざるをえないだろうね。中期的には能力に応じた給与を与える市場は、流動的で効率的になる。特定の会社に入社(してゴール!)ってインセンティブよりも、自分自身の力を高め続けようってインセンティブが働くし。結果、生産性は高まる。
一方、雇用規制を強める(あるいは維持する)とどうなるかっていうと、産業構造が変わったのに解雇できないって会社が増えて、倒産する会社があふれることになるだろうな。すごく短い期間で時代の花形となる産業は変わっていくのに、雇用規制のおかげで、売上が減ったのに社員を解雇できなくなる。優秀な社員は花形の産業に移り無能な社員だけが残るようになる。一部の例外を除いて、企業の寿命は人の寿命よりも短いんだ。
雇用規制を強めるとこっちは短期的には需要はほんの一時的に維持できるかもしれないけど、中長期的には事業の成長性にあわせて労働力を調整できなくなるので、成長率をあげることができなくなる。だから、企業ごと、国ごと沈没する。どっちを選ぶべきかっていうと自明だと思うな。今、痛みが激しいからといって、これだけはやっちゃいけない施策のひとつ。
最初に「給与所得が減っている」というグラフを見せた理由もここらへんと関係していて、まずは実際に給与が減った人がいるんだから怒るのもわかるよ。っていうところが第一。第二に、経常利益にいくべき配分が給与などの形で従業員に配分されていたとしたら…、これも短期的には延命されるかもしれないけど、将来の成長に対する投資の原資を失って中長期的には国家沈没ということになるだろうね。
ちなみに僕は個々の企業が戦略の一環として、終身雇用や年功序列をうたうことはまぁ、構わないと思う。採用戦略のひとつにすぎない。将来「嘘ついてました」って事になる可能性は高いと思うけど、それを信じて目指すことと、それを信じて入る社員がいてもまぁいいかな。とは思う。自己責任でね。また、極めて優れていて、一生成長を続ける優秀な社員を少数だけとり続ける会社であれば、そういうことも可能かもしれない。ただし永遠にその状態を続けることは不可能だ。永遠に続く会社はないのだから。20年や30年、あるいは最高50~60年ぐらいであれば可能かもしれないけれど。
本の感想がかけなかった。
意見が乱暴で説明不足な点もあるので、言い足りなかったことは次の機会にでも書くとしよう。
あとは、ここ10年の産業の構造変化で苦しんでいる人たちへのメッセージも。
(学生だったらまずは必死に勉強して力をつけよう、で簡単なんだけどね。)
今日、派遣をクビになった
著者:増田 明利
販売元:彩図社
発売日:2009-05-14
おすすめ度:
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