fukuidayo

人と組織と、fukui's blog

32歳にして会社を辞め、小説家になることを志し、食うために起業したある男のblogです。

GIFT-YLP

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ユニリーバから投資を引き出した、BOPのビジネスプラン:岡部氏へのインタビューその3

これまでのインタビューはこちら

■BOPビジネスの特徴とは何か


fukui:ここまでの話を伺っていると、腕利きの商社マンやコンサルタントが新興国や途上国で新たなビジネスを仕掛ける流れと、BOPビジネスは本質的にそんなに変わらないように感じますが、岡部さんが感じられた「BOPビジネス」ならではの特徴とはどのようなものでしょうか。

岡部:NGOなども含めたいろいろな組織や団体と進めていく必要があるという点が、BOPビジネスのひとつの特徴と言えるのではないかと思います。今回のプログラムでも、WaterSHEDやWSP、Women's Unionといった企業以外の組織・団体と協力しなければ、プロジェクトは前に進みませんでした。

わかりやすい例として、Women's Unionにディストリビューションをお願いしたことが挙げられます。日本であれば、何かプロダクトをつくってそれを販売しようとしたときには、西友などの大手の小売りチェーンに声をかけます。しかし、今回プログラムが行われたヴェトナムの農村部には大手のディストリビューターが存在しませんでした。

ディストリビューターの候補として、中小の卸売業者や小売店にインタビューは行いましたが、インフォーマルな形式が多く、とてもじゃないけれどちゃんと管理できないと感じました。そこで実際に今回販売をお願いしたのは、Women's Unionという現地に圧倒的な影響力を持っている女性コミュニティです。

BOPビジネスを展開するには現地に入り込んでいるNGOや、現地コミュニティと協働しなければならない。という話を聞きますが、こういうことなのか。と腹落ちしました。

fukui:
「企業」という形でビジネスパートナーが存在しない場合も多いので、現地に存在する様々な組織や団体と協力してプロジェクトを進めなければならない、ということですね。彼らとの協働で気をつけなければならないことはどのような点でしょうか。

岡部:
NGOや現地コミュニティは独自の価値観や行動規範をもって行動しています。ですから、その価値観を理解して話を進める必要があると思います。例えば今回参加したNGOであれば、「公平性」と「1年で成果を出す」という視点。Women's Unionに対しては、彼女たちの生活に具体的なメリットがあるスキームを組むことが重要だったと思います。

しかし、これがなかなか難しい。

fukui:どういった点が難しいのでしょうか。

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ユニリーバから投資を引き出した、BOPのビジネスプラン:岡部氏へのインタビュー その2

前回の記事はこちら

■GIFT-YLPヴェトナム・プログラムの概要

fukui:それでは、実際に今回のプログラムではどのようなミッションに取り組まれたのか、教えて頂けますか。

岡部:今回のプログラムの目的はヴェトナムの農村部に手洗い週間を普及させることによって、公衆衛生の改善をはかるというものでした。ヴェトナムの農村部では食事の前や労働の後に石鹸で手を洗うという習慣が十分普及していません。そのことが、病気に感染するリスクを高めたり、下痢などを引き起こす原因となっています。また、手洗い習慣の普及は鳥インフルエンザの感染への予防にも繋がります。

手洗い習慣の普及に関しては、これまでヴェトナムの保健省が中心になって地道に啓蒙活動を続けていましたが、ビジネスを通じてさらに手洗い習慣の普及を促進させる。というのが今回のミッションでした。

fukui:なるほど、ビジネスを通じてヴェトナム農村部に手洗い習慣を広める方法を、GIFT-YLPのタスクフォースが取り組む、というイメージですね。

岡部:そうですね。官公庁向けのコンサルティングに似ているようにも感じますが、実際には官公庁にプレゼンをするわけではなく、問題を分析し、改善策を立案し、その改善策を実行するためにNGOや現地企業を動かすことと、お金を集めることまでしなくちゃいけない。実行まで行う、という意味ではコンサルティング以上にハードと言えるかもしれませんね。

fukui:それを2週間で実行するというのは、大変難しいように感じますが‥。GIFTの本部はどのような事前準備をしてくれていたのでしょうか。

岡部:GIFTはこのプログラムの実行にあたって、何ヶ月も前から今回のプログラムに関係する多くのプレイヤーとコミュニケーションをとり、インタビューの対象やフィールドワークの準備をプログラム期間に凝縮してセッティングしてくれていました。そのため、私たちはビジネスプランの立案に集中して取り組むことができたのです。

GIFTworkbook

※今回、事前配布されたヴェトナム・プログラムのワークブック。(クリックするとダウンロード
これ以外にもそれまで政府やNGOが調査してきた20弱の資料が事前資料として配布されます。


fukui:それは助かりますね。今回のプログラムにはどのようなプレイヤーが関わっていたのでしょうか?
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ユニリーバから投資を引き出した、BOPのビジネスプラン:岡部氏へのインタビュー その1

僕はGIFT-Japanという団体に属して活動しています。
香港に本部があるNPOの日本支部なのですが、この団体が何をしているかというと、

アジアの途上国が抱える様々な問題を、ビジネスを通じて解決する。

ことをミッションとした団体で、途上国の政府やNGO、民間企業を巻き込んで、2週間の研修プログラムを提供しています。研修というと、

所詮お遊びでしょ?


という感想を持つ方もいらっしゃるかと思いますが、GIFTが提供する、GIFT-YLPというプログラムは全てが本気。学ぶ、ビジネスプランを立てるだけではなく、実際に政府やNGO、金融機関から資金提供を受け、持続可能なビジネスを立ち上げることをゴールにしています。

GIFTは、BOP(Base of Pyramid)という言葉が日本に紹介された年、2004年から活動をはじめ、合計17回のGIFT-YLPを実行してきましたが、17回目にして初の投資・事業化案件が生まれたのです!!(ビジネスプランコンテストではないので、本当に現実的に実現可能で収益が見込めるビジネスでないと、誰も投資なんてしないのです。)

投資を決定したのは、ユニ・リーバ。


実際にヴェトナムが抱える公衆衛生の問題を、ビジネスを通じて解決する第一歩が踏み出されたのです。

国籍もバックグラウンドも様々な22人が集まり、リサーチとプランニングをしてきたわけですが、その投資決定に大きな役割を果たした日本人、岡部さんにお時間を頂き、インタビューしてきました。

インタビューがとても感動し、参考になるものだったので、今日はそのレポートをまとめたいと思います。
(※BOPビジネスに関して概要を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。)


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インタビューの前に少し岡部さんのことを紹介しておきます。

もともとは外資系コンサルティング会社のアクセンチュアに勤務。このころ、シカゴで5年、ロスで1年、コンサルティングに従事。その後、アクセンチュアとソフトバンクの合弁会社として設立された、イー・エントリー株式会社の代表取締役に就任。イー・エントリーは海外の技術を国内に輸入・展開する会社で2000年に設立。

本来であれば、僕なんておいそれと口も聞けないようなビジネスの、そして人生の大先輩なんですが、たまたま世界を変えるデザイン展で行われていた新・貿易ゲームのワークショップに参加したときに同じチームになりまして、それ以来気さくにお付き合いして頂いております。(ゲームって、侮れないよ!)

IMG_0239

香港出発前の岡部さん。トレードマークは最高の笑顔!


岡部さんは、アクセンチュア時代にシニア・マネージャークラスのみが参加できるエグゼクティブ向けの研修をシンガポールで受けておられたりするので、GIFT-YLPのプログラムと、コンサルティング会社のプログラムの違いがどこにあるか聞いてみる、というのもひとつの目標にしています。

さて、以下は僕が思いのままきかせてもらったインタビューの抜粋です。

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自己紹介
プロジェクトデザイナー。富山県在住。人と組織の問題に興味があります。小説の原稿の断片、日々感じる社会や経済に関する疑問、書評を徒然なるままに。

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