fukuidayo

人と組織と、fukui's blog

32歳にして会社を辞め、小説家になることを志し、食うために起業したある男のblogです。

習作

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習作)140文字の物語3編

習作…。と言えるかどうかもアヤシイのですが、最近面白く読ませて頂いていた、Twitter小説を僕も書こうと思って書いてみました。

ある国の科学者が思い出の瞬間を再現できる機械を創り出した。人々は思い出を体験するためのカプセルに入り浸り、ついにはそこで生活するようになる。進歩は止まり、退化がはじまった。思い出のない人間だけが取り残され、荒廃の中で国はようやく新たな産声をあげる。

失業による自殺者の増加を憂慮した政府は、仕事と人材を完全にマッチングさせるソフトを開発した。求職者が勤めることが出来る会社で最も待遇のいい仕事を自動紹介するサービスだ。導入するや否や失業者は減ったが自殺者は以前にも増して増え続けた。国民は自分の価値をしったのだ。

勇者は暗黒の軍と絶望的な戦いを繰り広げ、ついに魔王を打ち倒す。魔王の手から麗しの姫を取り戻し、勇者は叫ぶ。「60億の人類よりも、僕は君一人を選ぶ!」「その発言は論理的にも、倫理的にも間違っているわ。」姫は答え、恋の魔法は覚める。こうして新たな魔王の脅威は去った。

書いてみて思ったけど、小説とは別物だなぁ。文字制限がある分、俳句や短歌に似ているかもしれない。でも、これはこれで面白い。プラットフォームが制限されるからこそ面白くなるものってあるんだな。それと、やっぱり起承転結があったほうがまとまるので、ストーリーを創る訓練になります。

しかし、少々現実逃避してしまった感もあり、もしかしたら年末まで仕上げられるかもしれない。と思い始めた作品の執筆はまったくはかどらず。

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習作) 命を読むひとの物語

シオン。それが僕の名だ。
物語を創り、その物語を求めるたったひとりのために、物語を読むことを仕事にしている。

多くの人に読まれる作品を書くことが僕の仕事ではない。
僕は、たった一人のために、物語を書く。
その人が、最も輝いていた一瞬を切り取り、その記憶を永遠のものとするために。

誰の依頼でも受けるというわけではない。時には断ることだってある。
必ず、依頼主が喜ぶ作品を書くというわけでもない。そこに真実が無ければ、僕の筆は進まない。
それがために、命を狙われることもある。

ひとことでいうと、割に合わない仕事だ。
けれど、僕はこの仕事を愛している。
時々出会う、人生の真実に僕は自分自身の生を感じる。

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植物が新緑に染まる5月。僕はある富豪から依頼を受けた。
日本でも有数の国際企業を営む創業者一族からの依頼だ。
執事とおぼしき男性から連絡を受け、僕は指定されたホテルのBarで一族の長と会う。

「母の物語を書いて欲しいのです。」続きを読む »
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習作)Home -2


前回まで
習作)Home -1

「隆の家は何人家族?」シングルモルトに口をつけながら、立見さんが唐突に訪ねる。
「4人家族です。父と母と妹。」
「昔から、そう?」
「そうですね。ずっと4人でした。もっとも今は一人暮らしですけど。」
「僕は学生時代はずっと、7人家族だったんだ。今は、知ってのとおり一人暮らしだけどね。姉と妹は結婚したので、田舎では父と母が二人で暮らしている。」そういって、立見さんは静かに話し始めた。

僕-立見高彦は、北陸の田舎町の出身だ。田舎だからスモッグなんてかかっていない。だけど、北陸の空の色は鉛色だ。そういう記憶が強いだけかもしれないけれど、とにかく、雨と雪の記憶ばかり残っている。空を見上げると、真っ白な雪が鉛色の空から落ちてくる。結晶まで見えてしまいそうな、大粒の雪。目を閉じるとそんな記憶ばかり思い出される。

両親が共働きだったから、小さい頃は、祖父母が遊び相手だった。祖母は教養のある人で、勉強は祖母から。遊びやスポーツは祖父から教わった。

祖父は若い頃柔道をやっていて、かなり有名な選手だったらしい。そのせいなのかはわからないけれど、祖父からはいくつも「奇妙な教え」を受けた。たとえば、「歩いている時にポケットに手を入れるな。」という教え。これは、交通事故とか、いつ、どんな不測の事態が起きても「受け身を取れるように」という理由から、繰り返し教え込まれた。柔道を学ぶと最初に徹底的に教え込まれるのが受け身なのだけど、祖父は受け身さえしっかり取ることができれば、車にはねられても、家の二階から落ちても大丈夫だと信じていたふしがある。そんなわけで、祖父の前でポケットに手を入れて歩くことは、絶対にやってはいけないことの一つだった。続きを読む »
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習作)Home -1

「時間が経つにつれ、深く重くなっていく後悔ってある?」
突然の質問に僕はとまどい、少しだけビールを飲み、口に手をあて考える。口に手をあてるのは小さい頃からの僕のくせだ。

「えぇと、そうですね。あると思います。僕は後悔だけは人一倍しているほうだと思います。受験に失敗して、浪人しましたし、大学時代は好きになった女の子に二股をかけられました。就職してからだって、1年目に起こした大きなクレームのことは忘れようにも忘れられませんよ。あのときは随分、立見さんにお世話になりました。」
僕は苦笑いをしながら答える。立見さんよりは、随分失敗してるし、後悔もしてるはずだ。

「なるほどね。まぁ、そういう後悔もあると思う。」
立見さんは、シングルモルトに静かに口をつける。ウイスキーが似合う人というのはこういう人のことを言うのだろう。
「でも、その後悔は今でも続いている?時間が経てばたつほど深く重くなっているかな。」

「うーん。そういわれると自信がなくなりますねぇ…。」
僕は少し迷う。確かに大学受験にも失敗したし、大好きだった彼女には裏切られたし、仕事だって忘れたい失敗が一杯だ。でも、よくよく考えてみると「後悔」 しているようなことを思い出しても、胸がきゅっと締め上げられるような気持ちになるのは一瞬で、あとは懐かしい思い出を愛でるような気持ちになる。浪人時代に出会った友達や先生は、かけがえのない財産だし、女性に対する理解だって深まった。あんな辛いクレームは仕事の励みになったし、後輩が問題を起こしたときにどのように振る舞えば良いかもわかるようになった。つまり、いろいろな辛い体験はあったし、二度と同じ経験はしたくないと思うけれど、後悔してるか。っていわれるとそうでもない。どちらかというと、「良い経験だった。」という表現が適切なのかもしれない。続きを読む »
自己紹介
プロジェクトデザイナー。富山県在住。人と組織の問題に興味があります。小説の原稿の断片、日々感じる社会や経済に関する疑問、書評を徒然なるままに。

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