僕は仕事がら、経営者にインタビューをすることが多い。経営者にインタビューし、それを適当に文字に起こし、ゴーストライターとして、ありがちな成功法則のまとめ本や、ビジネス雑誌に1ページあたりいくらという値段で買い上げてもらうのだ。

2ページの原稿を書くことができれば、1週間は暮らせるし、もし運よく3ページで採用になったら好きなバーに飲みに行くことだってできる。「将来は見えないけれど、悪くない仕事だ。」自分に言い聞かせる。言い聞かせた後、言い直す。「悪くない仕事だ。」このご時勢、仕事があるだけでも感謝しなければ。

インタビューというと、宣伝も兼ねて引き受けてくれる社長が多い。癖のある社長もいれば、正直電話するのが嫌になるような高慢な秘書もいるけれど、社長自身はおおむねいい人だ。秘書はわからない。秘書には嫌いな人が多い。自分で判断する頭も持たないくせに、「自分は秘書なのよ!」って感じでお高くとまっている。こういう人に限って権力者の前では媚をうったりもする。もっともそれは僕のコンプレックスがそう感じさせるだけなのかもしれないけれど。僕は不必要なほど、プライドが高い。プライドは邪魔だ。ライターとして一人で働き始めてから、何度この言葉を自分に言い聞かせたことか。

今日は一風変わった経営者の話をしたい。100人以上インタビューしてきた人の中で一番印象に残った方の話だ。しかし、ビジネス雑誌に送る原稿ではこの部分は省いた。記事のコンセプトに合致しなかったからかもしれないけれど、もう少しプライベートな場で公開したかっただけかもしれない。

その社長はITの分野で起業して30代にしてひと財産を築きあげた人だ。インターネットのあるサービス分野でNo.1のシェアを獲得している。仮にその人をN氏としよう。今日はその人の話をしたいと思う。

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