故藤子・F・不二雄氏のSF短編集に「ひとりぼっちの宇宙戦争」という作品がある。小学生の頃に、僕はこの作品をどきどきしながら読んだ。何度も読んで、何度も感動した。

高度に文明の進んだ宇宙人が地球を訪れる。宇宙人はその星を侵略する前に、「代理戦争」という形で一度だけ侵略を回避するチャンスを与えていた。
誰も知らないうちに住人のひとりがランダムに選ばれ、知能・体力が等しいコピーロボットと「時を止めた地球上で一晩だけ」戦わせる。住人が勝てば何事も無かったように立ち去り、コピーロボが勝てば、侵略する。選ばれたのは、運動が得意なワケではない、特別勉強ができるわけでもない、友達と笑い、恋をする、どこにでもいるごく普通の中学生だった。

という感じのストーリーで、選ばれた主人公の中学生は、宇宙人から剣と盾を与えられてコピーと戦う。ただ、知能も体力も同じなので、なかなか決着はつかない。そんなとき、コピーが足を滑らす。絶好のチャンス。主人公はトドメを刺そうとするが、自分とうり二つのコピーに剣を突き立てることを一瞬躊躇する。そこから、コピーの反撃が始まる。主人公は「ロボットに勝てるはずがない!」と叫ぶ。宇宙人はそんな主人公に、「地球人がもつたったひとつの武器」で戦え。とアドバイスする。

という流れ。主人公は盾をなくしたり、逃げ込んだ先が好きな女の子の部屋だったり。といくつかの事件をへて、「地球人がもつたったひとつの武器」を使って、最終的にコピーに勝ち、侵略を回避する。


小学生の頃の僕は、宇宙人が地球を静かに去ったのは、主人公が代理戦争に勝ったからだと信じて疑わなかった。やったぜ、守りきったぜ!というアルマゲドンライクな世界だ。

しかし、大人になった僕の感じ方は違う。続きを読む »