potos小説家になるためのトレーニングの一環として、少しテーマを決めて小説を読むことにしてみました。
とりあえず、過去10年分の芥川賞・直木賞の受賞作を全て読み込んでみよう。と思い、まず最初に手に取ったのが、本作『ポトスライムの舟』。

2008年下半期の芥川賞受賞作で、地下鉄の中吊り広告で紹介文を見かけたとき、「これは読まねば!」と思ったものの、ずるずる1年が立ってしまったのでこれを機会に読んでみることに。

中吊りでの紹介文はどんなだったかもう記憶もおぼろげなのですが、「工場で働く30間近の女性の日常」を描いた小説だということだけは覚えています。リーマンショック前後の受賞作だったので、妙に鮮明に記憶に残っています。

主人公のナガセは工場で働く29歳。
新卒で入社した会社から激しいモラルハラスメントを受け1年で退社。
勤めるのが怖い時期が暫く続き、今もそれは完全には直っていない。
周囲に支えられ、現在の工場に仕事を見つけ働き初めてからもう4年がたつ。
そんなとき、工場の休憩室に「世界一周ピースボートの旅」のポスターが貼られる。
渡航費用は163万円。それは、ナガセの年収とほぼ同じ金額だった…。

導入はこんな感じなのですが、本当に日常を丁寧に、職場や女性の心の移り変わりを本当に丁寧に描いています。
手帳に毎日使った金額を書き留めるナガセ。働いていないと不安になるナガセ。結婚した友人、カフェを開いた友人。奇妙な共同生活。この本には「12月の窓辺」という短編も納められているのですが、いずれの作品も「現代の蟹工船!?」と思うぐらい、企業に勤め、働く私達の悲喜交々の感情を表現していて胸を打たれました。

もし、3年前読んでも、僕はこれほど心をうたれなかったかもしれません。
「12月の窓辺」にはひどい同僚や上司の話が出てきますが、僕も知らず知らずの間に、後輩や部下を傷つける「心ない言葉を吐く上司」と同じような言動をとっていた面もあるように思い、おおいに反省しました。

働く全てのひとに、是非手にとって読んでもらいたい作品です。

(オススメ)
– いま、職場が思うようにならないと嘆いている人に。
– 部下をもつ、全ての上司に。