ここ10年ほどの間にオフィスでよく見かけるようになったものにウォーターサーバーがある。
最近は家庭でも見かけることが多くなった。

1ガロンほどの水が定期的に配送されてくる、というビジネスモデルで、美味しくて安全な水をペットボトル等よりも安い値段で飲むことが出来る。

この水を他の営業マンの30倍売る男(Yちゃん)の話をしたいと思う。  

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僕 「そういえば、Yちゃん元気にやっとんがけ~。なんかA社に勤めとったときとか、B社の時とかみたいに大変なことになっとらんけ」

Y母 「 最近は元気にやっとるみたいよ。なんか結構仕事も慣れてきたらしくて、他の職場への異動とかの提案もされたらしいけど、『水売りたい』っていって、今の仕事続けとるわ。」

僕 「それはよかったね。しかし、水を売って歩くって面白いのかね~。」

Y母 「わからんけど、いま会社のトップ営業マンらしいよ?この前○×っていうテレビにも出とったわ。売れたらやっぱり面白いがじゃないけ?」

僕 「へ~(まぁ、地方のテレビなんて出るの簡単だからな~)それはすごいね、 この前までなかなかいい職場がなくて転々としとったんにね。よかったね~。トップって、どれぐらい売っとんがけ?」

Y母 「なんかよくわからんけど、他の人の30倍売っとるらしいよ?」

僕 「は!?30倍?

Y母 「そう、30倍。」

僕 「他の営業マンの30倍売る営業マンなんて聞いたことないよ?3倍の間違いじゃないの?」

Y母 「それが30倍らしいよ。30倍売っとるけど給料あんまり変わらんって悲しんどるわ。笑」

僕 「なんでそんなに売れるの?Yちゃん営業とか販売とかの勉強しとったけ?」

Y母 「ぜんっぜん。勉強とかぜんっぜんやってないが。」

僕 「じゃあ、なんでそんだけ売れるが」

Y母 「友達が買ってくれるらしいよ?」

僕 「友達?」

Y母 「そう、野球部時代の友達がなんか買ってくれるらしいよ。友達だけじゃなくて、その友だちの親御さんとか、近所の人とか。Yちゃん水売っとるから、買ってあげてって。みんな喜んで買うらしいよ。」


そこには僕のしらない世界が広がっていた。


Yちゃんは昔から友達づきあいのいい人で、クラスの人気者だったのは間違いない。
勉強はあんまり好きではなくて、高校時代に打ち込んだ野球も残念ながら甲子園にはいけなかった。

野球のコーチになりたくて、コーチの職を探したけれど、なかったり、その後働き始めた職場も、僕に言わせればひどく理不尽な雇用契約だったりして、あんまり職には恵まれず仕事を転々としていたように思う。

そんなYちゃんが何故、人の30倍も売れる営業マンになったのか。
よくよく聞いていくと、もはや理屈ではないんだが、あえて理屈っぽく話すと、

 ・野球部時代の友達が買ってくれる。
 ・野球部時代の友達が宣伝、紹介してくれて、その周囲の人も買ってくれる。

結果、紹介が紹介を生み、自分でもよくわからないうちに、他の人の30倍も水が売れる構造をつくってしまったということらしい。 

商品が「安全・安心な水」という、生きていくうえで必要なものであり、使った分だけ払う。という形態が購入しやすい形だったのは間違いない。

しかし、水を売る業者というのは世にたくさんあるし、それだけでは差別化はできない。
Yちゃんから買いたい。と人から思わせる何かがあったことは間違いない。Yちゃんを応援したい。という気持ちを周囲の人に起こさせたのかもしれない。

「7つの習慣」の故スティーヴン・コヴィー博士の言葉を借りれば、
Yちゃんは今までの人生で、周囲の人に対して多くの「信頼残高」を得ていたのだ。ということになる。

 Yちゃんと一緒に何かしたい。
彼を応援したい。
彼が売る物を買いたい。

周囲の人との信用・信頼はそれがすべてではないが、それがなくては何もはじまらない。
信用・信頼という土台の上に、知識や技術が乗っかってはじめて、実をつける。

仕事とプライベートを無理に切り分ける必要はない。
自分の人格を磨き、周囲との信頼関係を築けば、仕事とプライベートは非常に強力な関係を築くことができる。

はたして自分は、そんな当然のことをできているだろうか。
まだ答えはでない。


まんがと図解でわかる7つの習慣 (別冊宝島) (別冊宝島 1805 スタディー)
まんがと図解でわかる7つの習慣

※7つの習慣は難しいので、これから読むならマンガ版をオススメします!
 「この庶民!」が口癖の高飛車な女子高生が変わっていく話で、泣けます…。