最近、いろいろなところで起業に関しての議論を目にしますが、基本はやりたい人はやればいいし、すすめたい人がいればすすめればいいのでしょう。国とか若者論とか持ち出して、どうこうするような話題でもないと思いますし。

ただ、起業という言葉が持つ意味は非常に多様で、アメリカのシリコンバレーで投資家からお金を集め、世界最高の頭脳を雇って行う起業もあれば、それまで勤めていた会社を辞め、仲間数人で始める起業もあるわけです。もちろん、副業で月収数万、数十万を得るという起業もあると思うのです。

ちなみに、僕の中では、優秀な20~30代が集まってネットビジネスに取り組むという姿のイメージがとても強かったのですが、富山にいるとそのイメージもだいぶ変わってきたので、ある地方都市のイチ起業風景を少し書いてみたいと思います。結構、こういうところ多いんじゃないかな。

----

僕は毎週一回、2時間ほど顔を出すミーティングがあるのですが、2ヶ月ほど継続するうちにだんだんその日が来るのが楽しみになってきました。

そのメンバーの一人は、過去のエントリ( となりの起業家と、爆発したい俺。 )で紹介したECに取り組みはじめて、1ヶ月少々の彼なのですが、最終的に4月度の売上は150万、その半分(75万)が利益として彼の手元に残ったとのことです。

また、もう一人のメンバーも経営者で、こちらはインキュベーションオフィス事業のようなことを行っているのですが、まだ軌道に乗っているとは言い難く、現在のところ固定費や原価を除くと彼の手元に残るお金は20万弱のようです。もっともストック型のビジネスですので、ゆっくりと収入は増え続けていますが。

まぁそんな感じで、週に一度お互いの近況報告を行ったり、得意分野を活かしてアドバイスしたり、取り組んできた成功体験を話したりするわけです。売上も利益もまだまだ微々たるものだし、先行きは不透明なままですが、自分の船で漁に出て、魚のいるスポットを教え合っている感じで、それがなんとも楽しいわけです。

朝は早く起き、昼は作ってきたお弁当を食べ、毎日確実に晩御飯の時間には帰る。そんな感じの起業家仲間です。

で、ECに取り組んでいる彼なのですが、「最近、パワーポイントを使い始めたんですよ!」ということで、彼が作成している事業計画を見せてもらいました。それがまた妙にしっかり出来ているんですよ。

「パワポ使いはじめたばかりなのに何でこんなにしっかりしてるんだろう‥」

と思って詳しく話を聞いてみると、越中富山企画塾なる、ビジネスや企画の学校があって、そこで教えられているフォーマットに従って取り組んでいるとのこと。ちなみに聞いてみると、ストック型のビジネスに取り組んでいる彼も、この企画の学校に通った後に起業したとのこと。

もともとは東京にあった学校らしいのですが、富山出身の受講生の成功率が異様に高かったらしく、卒業生が中心になって、富山校を設立することになったとのことです。アドバイザーを勤める講師陣はほぼ全員が企画の学校の卒業生で、しかも富山で成功している起業家たちなので、なんというか説得力があります。(もちろん、見せて頂いた資料も大変立派なものでした。)受講料は25万円だそうですが、まぁ、グロービスで2単位、クリティカル・シンキングとアカウンティングとかを取るとそれぐらいになるので、ECの彼なんかは十分元を取っているし安いのかな。と思いました。

卒業生と、受講生同士が様々な形で助け合うことによるメリットは受講料以上の価値は絶対あると思います。また、ビジネスのフレームワークは標準的なものを利用しているのですが、内容はグロービスよりももっと現場より、スモールビジネスよりの気がします。例えば、富山市の地図をもとに、交通の導線を引いて見て、事業をするのに適した立地を探す。とか、過去の受講生が作ったビジネスの企画書がサンプルとして渡される、とかです。

ビジネススクールとはまた違った趣ではありますが、これはこれでひとつの完成形だな。と思いました。成功者が実体験をもとに次の挑戦者を引っ張りあげる。華僑などのネットワークに近い組織を感じました。

----

その学校では、当面の目標設定が明確にできないようであれば、年収1,000万ぐらいになるようにビジネスを考えてみよう。と指導されているらしく、受講している彼らは、1~2年後に年収1,000万円となるようなプランを作成していました。これは、現実的で面白い目標だと感じました。

income


富山に限らず、地方の年収は都会と比べると低いと思うのですが、その代わり、生活費は格安です。自分の地元で起業するのであれば一時的に実家などでビジネスに取り組むのもありでしょう。

実際には起業のハードルって、大きく二つで、

  1. 事業が軌道にのるまで収入が激減する。
  2. 事業が軌道にのっても、良い状況が続くとは限らない。(先行きが不透明)

なのではないかな。と思います。もちろん、細かく見ていくと、得たステータスを失う不安とか、やりたい事がその会社でないとできない(あるいはしやすい)とかもあると思うのですが、一番の理由はやっぱり収入面に対する不安だと思います。

逆に言うと、もともとの収入が少なければ、起業して以前よりも多くの収入を得られるようになるまでそんなに時間はかからない。というわけで、生活費が安く、会社勤務で得られる収入に限界がある地方では、年収1,000万円ぐらいを目指して起業するっていうのは、手に届く挑戦だと思います。起業が生活の選択肢のひとつとして出てくるわけで、これはなかなか面白いことだなぁ。と思います。

収入が激減している例は、レンタルオフィス事業に取り組んでいる彼がその例だし、先行きが不透明ということでいうと、現在は軌道にのっているかのように見 えるEC事業の彼がまさにそれにあたるわけです。しかし、富山という土地柄故、平均的な収入も、生活コストもそこまで高くないが故に、挑戦するだけの価値はあったと。また、成功者が次の挑戦者を引っ張り上げる構造、文化が出来ているところも、起業しやすい環境になっているような気がします。

今後の課題は、県内で完結するようなビジネスばかりでなく、いかに大都市や海外から仕事を得ていくか。というところにあると思うのですが、そのインフラも徐々にではありますが、整いつつあると思います。

----

土地や環境によって、起業ひとつとってもその姿はいろいろだな、と感じます。
それこそ、ひとりひとりの幸せの形と同じ数ぐらい、起業の形もあるんじゃないかと最近は考えたりしています。