最近、出版関係者、音楽関係者、演劇関係者と立て続けにお話する機会を頂きました。いずれも現在不況に苦しむ業種です。しかし、彼らが強力なクリエイターであることは間違いないわけです。

既存のビジネスのやり方でどうにか儲けようとしているので苦しんでいるわけですが、発想を変えてみるというのも一つの手ではないかと思うのです。相談を受けたときに大体僕が提案するやり方を、この機会にちょっとまとめてみます。

デフレの時代は、コンテンツの作り手とコンテンツの消費者を可能な限りダイレクトにつなぐことが成功の条件だと思います(僕はこれをクリエイターたちの「悪巧み」とよんでいます。)。例えばマドンナが収益源をCDの販売収入からライブにシフトさせていったのもその流れの一環ですし、日垣隆さんなど、力のある書き手が有料メールマガジン等を通じて直接収入を得る体制を作っているのもその流れのひとつです。

昨日のエントリでも伝えたかったことですが、ネットビジネスの本質は、アクセスを集め、アクセスを(何らかの形で)お金に変えることにあるわけですから、コンテンツの創り手もこの原則を理解して利用すると何かと便利なのだろうと思います。

すなわち、

   1. 良質のコンテンツを安定的に供給し、アクセスを集める。
   2. 営業部隊は設けずネットを通じて収益を得る。(アフィリエイト広告の活用など)
   3. より高品質なコンテンツをネットを通じて紹介・販売する。
(自作CDや、演劇チケット、有料メルマガ)
   4. セミナーや講演、コンサルティング、商品開発など、収入源を増やす。
   5. サイトやコンテンツを英語及び中国語で記述し、市場を国内から
国外(とくに新興市場)に広げる。


という取り組みです。

contents上記のような取り組みは、これからコンテンツ産業の必勝パターンになると思います。これまでは編集や加工、販売に多くのコストを割いてきました。松下幸之助は不況は贅肉を落とす注射である。と述べましたが、力あるクリエイターやプロデューサーにとっては、必要以上に肥大化したプロセスをいったん省略し、顧客とダイレクトに取引するいいチャンスが到来していると思います。また、低コストでの運営ができるぶん、小規模で小回りのきく個人や組織で勝負できる時代でもあります。(もちろん実力不足だと、予想以上の市場の厳しい反応にさらされるだけに終わりますが…)

例えば演劇関係者であれば、年間数十本作られて、舞台で上映されたのちは死蔵される作品を動画で残しておき、ウェブ上で公開すればいいのだと思います。以降の作品の販売にも繋がりますし、Adsense広告などで一定の収入を得ることも可能です。字幕を付ければ海外展開も可能です。

自主製作系の映画や音楽も同じで、劇場で上映することを考えるのも良いのですが、オンラインで公開して、ある程度の収益を得ることができないか模索するのもいいと思います。

1本1本の作品の売上は微々たるものですが、これが100本ほど集まると結構なインパクトを持ってきます(版権の問題をクリアする必要はありますが)。昨日のエントリとも関連しますが、ウェブ上のコンテンツは定期的な更新とストックが大事になってきますので、そこさえおさえておけば、小規模のプロデュース会社やクリエイター集団が持つチャンスは大変大きいのではないかと思います。

また、IT化の時代にはコンテンツの再生産は限りなく低コストで行えます。コアとなるコンテンツが出来たら、表現や流通、品質、パッケージを変え、何度も利用すればいいのです。

ただ、ブログもそうなのですが、世間に存在を認知してもらえるようになるまでには、一定の時間が必要になりますので、その間「今やってることは将来につながる大切なことなんだ」という信念を持って続けられるかどうかはとても大事なことだと思います。

もちろん、年収1,500万とかもらっている管理職を雇うことなんて、この方法ではできません。あくまで、若く実力のあるクリエイターやプロデューサーのための方法です。大手の出版社やレーベルも小さく分割してみると面白いかもしれないですけどね。

コンテンツの創り手になることが出来ても、あるいは敏腕プロデューサーになれても、プラットホームを抑えないと世界では勝てないんだよ!という意見は当然出てくると思いますので、それについてはまた機会があれば書こうと思います。