KIGYOKA.comに素晴らしい記事が載っていたので紹介したいと思います。GMOインターネットの熊谷社長が陥り、そして乗り越えた4年前の危機の話です。

【私の危機突破】GMOインターネット 代表取締役会長兼社長 熊谷正寿

僕なりに記事を要約すると次のようになります。

飛ぶ鳥を落とす勢いだったベンチャー界の優等生、GMOインターネットは2005年8月にオリエント信販を買収する。しかし、半年後、最高裁で「グレーゾーン金利は違法である。」との結論が出て、過払い金請求に備えて突如200億円を過払い金請求の引当金として用意しなければならなくなった。

財務情報は急速に悪化し、当初は味方のような顔をして近づいてきた外資金融のアドバイザー(文中では外資ハゲタカ)が、突如「500億を用意した。GMOを売れ」といってきた。そのような状況の中、あおぞら銀行を中心とするメインバンクからは、「他が手を引くなら全部ウチが面倒を見ます。」という応援を得る。同行したCFOは短時間に両極端の対応を見て、男泣きに泣いたという。

様々な企業家や仲間の支援を受け、最終的には400億をつぎ込んだオリエント信販を500万で売りとばし、危機を脱する。

熊谷氏はこの出来事を脱することが出来た理由を次のように振り返る。「GMOが生き残れたのは金融機関が手を引かなかったからでもないし、私が資金を投入したからでもない。素晴らしい仲間たちの支えにあります。」

素晴らしい内容なので、是非本文を読んで頂きたいと思いますが、この記事から読み取れることは何なのか、ということを僕なりに考えてみたいと思います。


この文章からは実に多くのことを学べると思うのです。例えば、

  • 外資ハゲタカ(注:文中表現)とメインバンクのやり方の違い
  • 信念を持ち、行動することの大切さ。
  • 成功しているときに陥る自信過剰の危うさ
  • 熊谷社長の器、人格。人に信頼されることの大切さ
  • 熊谷社長を支えた、プロフェッショナルや社員、企業家。人と組織の力
  • 自分がコントロールできるリスクの範囲内で勝負することの大切さ

上記のようなことを文章から、感じ取ることができるかもしれません。

学ぶこと、受け止めることは人によって違うと思うのですが、僕の個人的な感想としては、外資ハゲタカやメインバンクの対比がドラマチックに描かれていますが、ここに惑わされると、学ぶべき本質がずれてしまうような気がするのです。

外資ファンドも危機的状態に陥ったGMOインターネットではあるけれど、十分立て直し及び採算化が出来ると感じて熊谷社長に提案したわけですし、客観的に見たら助け舟を出したともいえます。ある意味、仕事をしただけでしょう。

一方、メインバンクのほうも倒産する可能性はあるものの、GMOインターネットは実業で利益は十分出ていたわけですし、資本金を入れるのではなく、貸付を行うわけですから企業が危機的状況に陥っても優先して権利を主張することが出来ます。十分採算の見込みがあったのではないかと思います。


僕が感じたことは、熊谷社長を消費者金融の買収に走らせたものはなんだったのだろう。ということです。

当時から消費者金融は社会問題化しており、規制が強化される可能性も十分ありました。それにも関わらず、買収を実行した。その僅か半年後に最高裁でグレーゾーン金利が違法という結論がでるわけですから、オリエント信販の価値を算定したプロフェッショナル達はそのリスクを見込んで試算し、情報を伝えたのでしょうか。

熊谷社長もリスクがあるということはわかっていたはずで、それでも買収に踏み切ったわけですから、それほどまでの決断を熊谷社長にさせてものはなんだったのでしょうか。

以下は、オリエント信販買収直後の熊谷社長のブログからの抜粋です。

金融事業は、社会のインフラであり永遠に無くなりません。また、インターネットの出現と規制緩和で、大きく変化している業界であり、そこにビジネスチャンスがあると考えています。また、僕たちの強みであるインターネットともっとも相性の良い事業の一つです。

さらに、今回進出をした融資関連の事業は、ストック型の収益構造であり中長期的にGMOインターネットグループの収益を成長させる事が出来ると思います。

そして、オリエント信販は非常に高収益な会社であり、これで3年後のグループ連結利益経常利益100億円台が視野に入りました。業績の先行きに対して、個人的に超強気です(笑)

いずれにしても、そのどん底の状況から首の皮一枚つながって生還したのは、熊谷社長のお人柄であり、仲間達の力あってのことで、素晴らしいことだと思います。

熊谷社長のようにご自身の信念と周囲の助けを得てギリギリで踏みとどまり、より大きな挑戦をされる方もいらっしゃれば、残念ながら道半ばで諦めざるを得ない状況に陥る人もいるわけです。企業の規模に関わらず。

その両者の間にあるものは何だろう。そして、コントロール出来る範囲のリスクを超えて起業家に勝負を強行させてしまうものは一体なんなのだろう。

そういうことをどうしても考えてしまうわけです。


参考:

大阪ふたば法律事務所~弁護士10年、そりゃいろいろあるわな~:「GMO、金融事業から撤退」の不思議【松井】

クマガイコム:【ご報告】金融事業進出と資金調達について




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※本題と直接関係はありませんが、多くのことを学んだ本です。