プロダクトライフサイクルという考えがあります。経営に興味・関心のある方であれば、誰でも知っている考えだと思うのですが、商品が市場に投入されてから、次第に売れなくなるまでの商品の寿命を表す考え方です。

plc


どれぐらいの期間で、どれぐらい売れるか。という程度の差はあるものの、ほぼすべての商品がこのライフサイクルを描きます。

  • 市場に商品が認知されておらず、売上が伸びず、コストばかり膨らむ赤字の導入期
  • 徐々に認知が広まり、ある段階を超えたところから急激に売上・利益が伸び始める成長期
  • 売上の伸びがピークに達し、競合が参入を始める成熟期。コストを抑え、利益を享受。
  • 商品に対するニーズが衰え、ゆっくりと市場が縮小していく衰退期。

というように分類できるわけですが、プロダクトライフサイクル理論を経営に応用しようとしたときには、さらにみっつぐらい、抑えておかなければならない要素があるのではないかと思います。
それは、

  1. 開発した商品がすべて市場で売れるとは限らない。
  2. 商品が損益分岐点を超える時期を見誤ってはならない。
  3. 以上を踏まえ、コンスタントにヒットが生まれる組織を設計する。

というものです。


■開発した商品がすべて売れるとは限らない


BtoCメーカーに勤務されている方でしたら、これは痛いほど実感されているのではないかと思います、例えば清涼飲料水やお菓子の世界は、千みっつという言葉があるぐらいでして、1000ぐらい商品を開発して、そのうちヒットするのは三つぐらいしかない。という考えです。ゲームソフトもそうだと言えるかもしれません。(さすがに極端かもしれませんけどね)

多くの商品は成長期すら迎えることなく(黒字化することなく)市場に淘汰されていきます。それでも、いくつかヒット作がでれば、他の淘汰されていった商品のコストの分までカバー出来るので、ヒット商品を出すことを願って、メーカーは知恵を絞るわけです。

ヒット商品を産み出すことが出来るかどうかが、生命線になりますので、こういった企業は定期的にコンサルティング会社に

  • ヒット商品を産み出す確率を高める方法
  • ヒット商品を産み出す創造的な組織をつくる方法

に関してソリューションを依頼したりします。もちろん、そんな便利な方法はなかなか思いつくことが出来なくて、結局のところ新たな発想法を見出したり、稟議・承認などの手続きの省力化(チェックが減れば基本的に多様な意見が生まれやすくなる)にソリューションは落ち着きがちだったりするわけですが。


■損益分岐点を超える時期を見誤ってはならない

もうひとつ僕が気になるのは、いつから売れ始めるのか(損益分岐点を超えるのか)という見積もりがしっかりなされているかどうかです。現在のように不況になると、企業は将来に向けた中長期的な投資というものを控えたりします。

先行きの見えない経済環境の中で、これから売れるかもしれない導入期の商品への投資をやめ、既にある程度の売れ行きが見えている(しかし競争が激しい)成熟期や衰退期の商品に経営資源を投入したりすることもあります。これは悲劇です。悪しき選択と集中です。

スティーブ・ジョブズの自伝を読んでいて、凄いな。と思ったことは彼が、いつブレイクするかもわからないピクサーに対して私財を投資し続けたことです。ピクサーのブレイクを足がかりに彼は、アップルの経営に復帰するわけですが、いつ成長期に入るかも分からないデジタル映像を信じて投資を続けたジョブズはやっぱり凄いな。と思うわけです。見極めがすごかったのか、勘が恐ろしく働いたのか、それにすがるしかなかったのかは謎ですが…。


■ヒット商品を産み出す人と組織

そういうわけで、現在の日本のように景気が下向きになると、ヒット商品を産み出す環境は非常に悪くなるわけです。新商品への投資をやめ、競争が激しく衰退している市場に経営資源を投入する。そんな企業が出てくるわけです。その罠に陥らなかったとしても、新商品が世に出るまで(予算的に)耐えきれず、開発をストップさせてしまう組織も出てくるわけです。

そういう罠に陥らないようにするために、経営者なり商品開発担当者が意識すべきなのは下記の5点なのだろうと思います。別にコンサルティング会社に依頼しなくても、自社で制度を整えることも可能だろうと思います。

  1. いつ、どの段階でヒットするかという予測の精度を高める。
  2. 小さいヒットを産み出し、追加投資の原資を得る。
  3. 開発コストを抑え、長く勝負できる状況をつくる。
  4. 常に複数のトライをする。(多様性を保つ)
  5. パフォーマンスを最大化できるトライをする。

以上です。Googleもいってしまえば、検索と、検索連動型広告(これすらGoogleオリジナルの発想ではない。)で大ヒットを生み出したあとは、大きなヒットは生み出してはいないわけです。しかし、勤務時間の20%を自由な研究開発に利用しても良い。というルールを設けることで、上記の3,4,5の要素は抑えているわけです。だから、これから大ヒットとまではいかないまでも、プチヒットは結構産み出すのではないでしょうか。

優秀なエンジニアに小規模のチームで自主的な活動をさせることで、コストを抑えている。そういう集団が複数あることで、多様性を担保し、次々と新たなサービスが生まれる状況を作っている。個人に好きな研究をさせることで、モチベーションを維持しパフォーマンスを最大化している。

そんなところでしょうか。数多く商品やサービスが世に出されれば、そのうちいくつかはヒットする可能性も出てくるわけです。(今のところ、満足行く成果は生まれていないかもしれませんが。せいぜい小さなヒットというところでしょうか。今のところそれで十分だとも思いますが。)

一方、Googleのように商品開発に余裕のない企業の多くは、ヒットに至るまでの予測の精度を高める。ということになるでしょうか。

製薬業界のように、ひとつの新薬を出すまで10~15年の研究・臨床・審査期間が必要とわかっていれば、開発にかける時間が長くても、耐えきれるような計画をつくることは可能ではないかと思います。製薬業界は極端ですが、長い目で商品を見、それでも引くべきときは、迷う事無く退却するために、成果のマイルストーンを設けておく。撤退ラインを決めておく。そういう割り切りが必要になってくるのでしょう。

もちろん、例外的に短期間で開発が終了し、しかもヒットするという商品があることはあると思うのですが。


■なんでこんなことを書きたくなったのだろう

それはたぶん、商品が売れ始めるまでの時期を極端に短く見積もって諦めたり、あるいは無計画に投資を続け経営が傾いたりした事例を短期間でいくつか見てしまったからではないかと思います。

Googleの20%ルールを礼讃するわけではないけれど、環境の激変や将来のリスクに備えて、多様性を保ち、個人と組織のパフォーマンスを最大化するような仕組みを社内に保有しておくことは大事ではないかと思います。

資源を集中する。という戦略の原則論からいうと、セオリーからは少し離れてしまうかもしれないのですが、利益の中核となる商材に集中しつつ、一定の商品開発の多様性を保つような組織。そういう組織をつくることは出来ないか。そういうことを考えています。


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