僕は学生時代に「将来起業するつもりなら、営業できなきゃダメだよ。販売なくして事業なし。」という言葉を耳にして以来、営業能力を磨くことに取り組んできたつもりです。でも正直言って、(他の多くのセンス同様)僕には営業のセンスはそんなになかったように思います。

顧客の前に出て、気を使うこともできなければ、ほとばしるような熱意を示すこともできない。実力もないくせにプライドだけは一人前だし、なんというか可愛げがない。

とはいえ、営業できないと将来食いっぱぐれるという恐怖感みたいなものがあって、必死に営業の勉強にも取り組んだわけです。おそらく、営業に関する本は100冊近く読んだんじゃないかな。随分時間をかけました。そして、そんな今だからこそ言えることがひとつあるとすれば、

役にたたない営業の本が多すぎる

ということです。もちろん、どんな本でも全ての人にとって役立たないということはないと思います。しかし、店頭に並んでいる多くの営業本は次の3点のいずれか(あるいは全て)を弱点として持っています。

   1.  自分の成功体験について語るのみで、論理や数字の裏付けがない。
   2. 特定のパーソナリティを持っている(みにつけられる)ことを前提に書かれている。
   3. 営業には様々なパターンがあるのに、最初にその事実に触れていない。



1に関しては説明するまでもないでしょう。気合と根性、感動系の話です。起業家の成功談と同じで、文脈から大切なことを読み取ればいいのですが、著名な起業家であればともかく、No.1セールスパーソンなんて、毎年毎年、何万人と生まれているのです。(リクルートグループだけで毎年100人は誕生していることでしょう。)そういう人たちが出している本を買っても、文脈から自分なりの法則を導き出せる必要がある人であればいいのですが、要約すると、努力と根性と出会いです。になりがちで、何冊も買う必要はないのではないかと思います。

2に関しては、人格改造や容姿・笑顔の改造が容易に出来る人であればいいのですが、僕はどうにも苦手でした。笑えば作り笑いっぽくなるし、ちょっとした気遣いなどもなかなか出来ないし、気の利いた冗談も言えない。まぁ、出来る人であればいいのですが、僕のフィールドではない。という印象を持ちました。

最後は、特定の商材・セールスプロセスを前提に書かれている営業本が多いことが問題です。

Sales

営業はもの凄く大きくわけても、顧客と出会う発掘のプロセス。対面で商談するプロセス、一度顧客になった人に対して継続的にモノを販売するプロセスと最低3段階に分かれるのです。しかも、発掘の仕方もプル型(引き合い中心)とプッシュ型(売り込み中心)で大きくスタイルは違いますし、Salesも100万円以下の商品が中心の小型商談か、それ以上の大型商談かによって違います。

最後はリピートオーダーを受け取る場面で、毎月利用料がかかる携帯電話のようにリピートを得る際の営業コストがほとんどゼロでいいものもあれば、百科事典や使えない情報商材のようにリピートオーダーを得ることがほぼ不可能な商材もあります。

ここらへん、わけて語るべきなのに、特定の経験をベースに全部一緒くたにして語っている営業本が多い。だからこそ科学もされないし、営業に関する本を読んでいるけどいつまでたっても、営業の能力を伸ばせない。という人が多いのです。

さて、もうひとつ、役に立たない営業本が多いことの弊害を述べましょう。
それは、時間を集中的に投資できないことです(参考:何かをモノにするために必要なたったひとつのこと)。語学の学習などと一緒で、営業も本を一冊読むだけで出来るようにはならず、結局のところ自分にあったやり方を見つけ、実践を通じてその力を磨かねば、身につけることはできません。しかし、いろいろな本をつまみ食いしてしまうから、結局どれも身につかないのです。

こうやって見ていくと、自分が気持ちよく営業にあった営業スタイルを身につけるためには、

  1. 自分自身の性格・資質を知ること
  2. 自社のセールスと商材の特徴を知ること
  3. 良書を選び、時間をかけて実践し、営業を身につけること

が重要であることに気付きます。実際には、企業にいると先輩がやり方を教えてくれたり、本を紹介してくれたりすると思うのですが、いい先輩に出会えないと終わってしまいます。また、特定の企業でなければ通用しない営業スタイルになってしまうこともあります。更には、時代が変わり極めて非効率になっているにも関わらず、その非効率で続ければ続けるほど顧客が失う営業をしているかもしれません。

実際にはセールスって一番人件費が高くつく専門職なので、わざわざセールスパースンを導入するからには、顧客が向こうからやってきて(Pull型で)、何百万・何千万の商談(大型商談)で、黙っていてもリピートオーダーに繋がる(リピート営業のコストが小さい/ストック型のビジネスとも)営業を手がけたいものですよね。それ以外のセールスは出来る限り、人以外のモノに代替させるのがこれからの基本戦略になるんじゃないかなぁ。と思います。

上記全てを満たすのは無理でも、小型商談だけど、リピート営業コストは小さい。とか部分的に理想の営業を実現することはできそうです。

長くなりそうなので今日はこのくらいにしておきますが、次回は僕が「素晴らしい!」と感じた営業の本を紹介しつつ、僕みたいな営業下手な人でも実践できる、実践的営業スキルみたいなものに関して紹介していきたいと思います。

これからの時代、どんな人であっても少なからず営業の素養は身に付けておいたほうがいいと思いますので。