昨日、ずっとお会いしたいと思っていた、徐(@cloudgrabber)さんとお会いしてきました。Twitter上ではいつも、すごく大人な発言をされている方で、尊敬していたのでどんな紳士が来るのだろうと思っていたら、いらっしゃったのは、韓流スターと見紛うようなイケメン。ツイートで年齢を想像してはいけないなあ。と感じた一日でした。

徐さんは赤十字やユネスコといった国際機関で働かれたあと、現在はベンチャー企業で役員なども努めつつ、戦略コンサルタントとして活躍されています。個人的にはアフリカでベンチャーキャピタリストとして活躍されていた頃の話を伺うのを楽しみにしておりました。

徐さんに伺った話でもっとも印象に残ったのが、missing middleの話。BOP市場と言われる新興国では、グラミン銀行やKIVAなどに代表されるマイクロファイナンスのインフラは徐々に整いつつあり、また、一方で政府などを通じての開発援助もかなりの額のお金が動くといいます。しかし一方で、産業の中核となるような中小企業の育成に関してはまだまだ十分なインフラが整っていない。これが、missing middle の問題です。

そこで、この missing middle の問題の解決のヒントになりそうだと僕自身が感じたのが、アフリカで活躍している中小企業の社長のお話。

その方は、日本のある中小繊維メーカーの社長さんなのですが、ウガンダ(ルワンダだったかも)で最も有名な日本人の一人で、地域への貢献(ビジネスも、それ以外も)を通じて、非常に尊敬を集めているとのことでした。

ウガンダ(ルワンダ?)は新興国として猛烈に成長は続けているものの、まだまだ経営に関してのノウハウや考え方に関しては洗練されていない部分も多く、意欲のある経営者がアフリカ に行くと、その技術や経営の知識が役立つことがおおいにあるとのことなのです。そしてそれは、縮小する市場で苦しんでいる日本の中小企業の再成長の一助にもなるのではないかと思います。(半分は、そうあって欲しいという願望でありますけれど)

実際に、中小・ベンチャー企業の社長さんの中で、新興国と言われる国々と積極的に仕事をされている方がどんどん増えてきているような気はしています。現在は、労働力に関してコスト競争力があるという面が今は大きいのだと思いますが、業種によって市場としての魅力も高まってきているように思います。


BOP市場で活躍する人と組織の研究をしていると、必ず出てくるのがソフトスキルの重要性なのですが、このソフトスキルに関しても、中小・ベンチャー企業の経営者として、リスクを負いつつタフなビジネス経験をされている方のほうが、身につけやすいような気がします。
十分なソフトスキルを身につけていないビジネスパースンがBOP市場の責任者になると、その市場の開拓は決してうまく進まない。例えば、以前本ブログ(参考:何故、優秀な学生と出会えないのか)にコメント頂いた、あぱかばーるさんの言葉を紹介したいと思います。(あぱかばーるさんは、かつて中国、今インドで働かれているそうです。)

海外では日本人は基本的にマネージャーあるいはダイレクターであることが多いですが、まったく○○人は能力もモラルも低くて・・・という物言いはよく聞かれます。しかしスタッフ側の意見を聞くと、あの日本人上司何考えているんだかわからない、どうせ頑張ってもあの人のポジションになれるわけじゃないし、欧米系企業に転職したい、といった声を聞きます。

面白いことに、10数年前に中国が新興国として急激な経済成長を遂げていたときに、日本のマネジャーに足りないのは、「戦略性や論理性である」とコンサルタントが書いた本が何冊かあったことを思い出します。

物語の形で、文化や価値観を理解すれば同じ人間なんだからうまく行くはず。と意気揚々と乗り込んでいった日本企業の現地法人社長が「戦略性や論理性がないためにイタイ目にあう」

という内容が多かったと思うのですが、実際のところ戦略性や論理性以上に、異国の文化や価値観をまだまだ理解しておらず、相互に尊敬できる関係性を築くことが出来なかったという理由でビジネスが失敗したケースが多いのではないかと思います。これは人や組織構造に起因する問題が大きいと思います。

ソフトスキルというのは、本や講演者によって定義が曖昧であるため、「これだ!」と断言することはなかなか難しいのですが、僕もプロジェクトに関わっている香港のGIFTというシンクタンクの代表、Chandranは次のように述べています。

softskills


そして、先進国企業がBOP市場に進出したときに失敗する理由を次のように分析しています。

fail

Chandranはアジアの企業、金融機関、行政のケーススタディーに関して、現場体験に基づいた広い知識と深い理解をしているために、こういったスキルや失敗理由は十分説得力のあるものだと思うのですが、日本向け(あるいは地方の中小メーカー向け)にはもう少し僕なりに噛み砕いて伝えないといけないかな。と思っています。

ただ、こういったBOP市場で成功するために必要な能力を見ていると、中小・ベンチャー企業でタフにビジネスを展開してきた人達と新興国でのビジネス展開の親和性は非常に高いのではないかと感じました。自分でリスクをおって事業を展開している分、現地の人々の理解や尊敬も得られやすいような気がします。また、本部の指示を仰がず、自分で意思決定できるところがポイントになるのだろうと思います。

僕の分析はまだまだ非常に甘いですが、徐さんから頂いた刺激をもとに自分なりにわかりやすく、BOP市場(といっても広いですが)に進出して成功するための人と組織の問題に関して考察していきたいな。と改めて感じました。


追伸:
GIFTでは、中国四川省・被災した高齢者向けサービスの事業化により高齢者救済と被災地の復興に挑戦するプログラムの受付を開始しました。社会問題をビジネスを通じて解決出来ないか試みる取り組みの一貫です。世界各国から集まる人材(日本からの参加者はごく一部です)との交流、新興国で求められるスキルを体感を通じて学びたい方、個別説明会に是非お申し込みください。(個人で参加を希望される方には資金面でのサポートプログラムも用意しています。)

http://www.jobweb.co.jp/gift/seminar/new_seminar/830/