さて、僕はTwitterで優秀(と勝手に僕が判断した)学生のツイートを見るのが結構好きなんだけど、昨日立て続けに3件ぐらい同じような内容の発言を見かけたので、今日はそれについて書こうと思う。どんな発言かというと、

龍馬伝に出てくる、龍馬や弥太郎のように何か大きなことを成し遂げたい。
しかしまだ力がない。志が見つからない。


というものだ。これは学生時代と言うことを考えるともっともな悩みで、こういった閉塞感が時代を動かす力となるのだろう。これから彼らがどういう人生を歩むのか、とても楽しみだ。


今の閉塞した環境を打破するための象徴としてNHKは龍馬伝の制作に取り組んだだろうから、脚本・演出には時代を十分に反映した内容を目指していることは間違いない。脚本家の福田靖さんは次のように語っている。

とはいえ、誰もが知っている『坂本龍馬』を大河ドラマで描くのですから、絶対に面白いものを作らなければなりません。しかし、視聴者のイメージをそのままなぞったような龍馬を見せても仕方がない。『竜馬がゆく』が発表されてからすでに46年が経っています。昭和から平成に時代は変わり、今、僕たちは21世紀の世界に生きています。その後の研究で当時は知られていなかった龍馬像も明らかになっています。今、描くべき龍馬は、46年前のものとは違うかもしれません。

龍馬伝は現代の視聴者に訴えかけるメッセージをふんだんに持っているはずだ。これまで(第8回)の放送を振り返りながら、脚本家が込めたメッセージを僕なりに(強引に)7つにまとめてみた。



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まず、印象的だったのは、上士・下士・地下浪人といった身分制度。生まれながらにして身分が決まっている社会。決められた役割を果たすしかない社会の閉塞感。これを凄く感じました。当時に比べれば、今は驚くほど平等だ。しかし、同時に身分制度とは異なり(目に見えない)閉塞感を感じている人は多い。この目に見えない閉塞感の打破がひとつのテーマなのだろうと思います。


1)そして、「目くそは何故、目尻ではなくて目頭から出るのか」という龍馬の言葉。最初の頃、龍馬はよく誰もが悩まないことに疑問を持ち、深く考え込んでいます。これは、皆があたりまえと思っていることに疑問を持ち、問いをたて考える。という、変化の時代に必要とされる哲学や批判的思考の考え方の重要性を説いているように思います。


2)龍馬と弥太郎は吉田東洋に「お前は何者だ」と問われ、答えることができません。それはまだ二人が未熟だからではありますが、己が何かを成し遂げるために必要な武器は各々既に見出しています。龍馬は剣、弥太郎は学問がきっかけとなって江戸にでる機会をつかみます。これは、自分が少しでも他人に秀でたところを見つけ、伸ばすことの大切さを説いているように思います。


3)千葉道場での修行。「剣で黒船に勝てますか!」と言い放って千葉道場を離れた龍馬は、道具が戦うのではない。ということに気付き戻ってきますが、僕はここよりも、高知という極めて厳しい身分制度の世界から、剣術道場という非常にフラットな世界に触れ、入ってくる情報の多さと、身分制度のない 世界に触れる新鮮な感動をもっと描いても良かったのではと思っています。当時の剣術道場や学問所は身分関係ないフラットな場だったからこそ幕末の志士を育んだのだと思います。


4)黒船との遭遇。黒船遭遇に関しては今更語ることもないのかな。と思います。黒船は大きな外部環境変化のメタファーであり、その変化に対して志士たちの多種多様な振る舞いが大変興味深いです。龍馬は変化を受け入れ、黒船を平和で世界を豊かにするものとして活用する道を見出します。


5)松陰の使命と龍馬の使命。自分も黒船にのせてください。という龍馬に対し、松陰は一喝します。自分の夢や使命は自分で見つけろ。というメッセージが込められているように思います。正直いって、第六回の吉田松陰はアツすぎるので、それ以外にも山のようなメッセージが込められているのですが、涙で前が見えなくなりそうなので、このぐらいで…。(桂小五郎の自分の大事を人にきくな!というメッセージも似た意味として捉えました。)


6)弥太郎の帰郷。父親が倒れ、30日の道のりを走り続けて半分の日数で駆け抜けて家に戻るところは、弥太郎の見せ場です。僕は猛き黄金の国という弥太郎が主人公の漫画が凄く好きでバイブルとして持っていたのですが、そこでも弥太郎は母の、「自分の根を見失ってはいけない。」という言葉を胸に刻み、故郷を離れ、父親が倒れたという知らせを聞き、全力で戻ります。今の時代になくなりつつある、家族の絆、大切さ。というものを感じます。


7)龍馬は何故モテるのか。龍馬は凄くモテます(龍馬を主人公にしたどんな本でもそのモテっぷりは凄いです)。でもそのモテ方が非常に現代的にアレンジされています。僕が関心したのは、龍馬は女性にこうあるべき。というものを押し付けていないこと。素の女性の良さを見つけていること。です。武市半平太は妻に「侍の嫁たるもの~~ではならぬ。」と言ってますし、平井収二郎も加尾に「嫁入り前の娘が~~」と説いています。非常に女性の価値観や生き方を尊重した描き方のように思うのです。(さなとの恋愛に関しては、未だ展開が不明ですね。なんとなく加尾に一途な龍馬として描くような気がしますが…。どうなんでしょう。)



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なんとなく龍馬伝を見て、感じたことを書き連ねてみました。完全に妄想が入ってます。僕は、龍馬伝を福山龍馬で一般の目を惹きつけ、香川弥太郎という影の主人公で真のメッセージを伝えていると信じているぐらい、偏った見方をしていますw(さすがに、龍馬暗殺の黒幕が弥太郎という脚本にだけはして欲しくないですが…。頼みますよ!!)

ですので、以上の意見は冗談半分で捉えて欲しいとは思います。
ただ、何らかの閉塞感に悩み戸惑っている学生さんの方は、7つとは言わないまでも、

  1. 己の武器となるものを見つけ、磨く
  2. フラットな人的ネットワークを築き、活用する
  3. 環境の変化を受け入れ、利用する
  4. 志は悩みながらゆっくりと見つけていけばいい。

とりあえず、この4点を心にとどめて悩みながら生きていけばいいのかな。と思います。
他にも皆さんが龍馬伝を見て気付いたこと、感じたことがあれば、是非教えてください。ではでは。