クリティカル・シンキングの良い訓練になるエントリを見つけたので、今さらではあるが取り上げてみたい。

僕自身Twitterで頂いた指摘によって、深く考える事の重要性を改めて感じたので、参考になればと思う。若干自分自身の考えの浅さを広めることにもつながるので、恥ずかしくはあるのだけれど。

該当エントリが下記

Chikirinの日記: アフリカが発展しない理由

主たる主張は下記の通りだ。
  1. 国際援助の半分~80%は途中で搾取され、貧困層に届かない≒援助の効率が非常に悪い
  2. 圧倒的な貧困しか知らない無教育な人たちに、社会秩序、投資の概念や効果、道徳や約束の概念、家族の助け合い、などは期待(共有)できない。
  3. 被害者意識に基づく国際援助詐欺と、特権意識に基づく自国民からの搾取にいそしむ指導者達は、アフリカの貧困の主要原因である。
よって、このままではアフリカは発展しない(経済的発展及び、国を牽引するリーダーが登場しない)ので、アフリカを発展させるためには植民地化して、次の100年間の国家運営を先進民主国に委ねよ。
というものだ。1~3という観察事実に基づいて、植民地化せよ。という結論を帰納的に導いている。こういった一見論理的な構成の文章が一番たちが悪いと思うのだ。

しかし、僕はブログを炎上させて認知度を高める炎上マーケティングか、本当にネタが尽きたのかのどちらかだと思ったので、倫理観にかける。と呟いただけで、深く考えることをストップしていた。

そうしていたところ、cloudgrabberさんから的確なご指摘を頂いたのだ。



さて、このcloudgrabberさんの指摘は、思考の技術のひとつ、因果関係に基づいたご指摘だ。Chikirinさんの提案は、植民地化が原因で問題が発生しているのに、問題を解決するために植民地化せよ。という馬鹿らしさ。これは仰る通りだろう。

もちろん帝国主義の時代に行われた植民地施策が政治的な自律を奪い、経済的に搾取し、文化・民族の根絶に繋がるものであったのに対して、今Chikirinさんが提案しているのは、国連の信託統治あるいは、イラク戦争で利用された連合国暫定当局のような臨時機関を利用することであって、植民地化とは異なる。ということはできるかと思う。

しかし、それらの制度なり機関を利用したからといって、1~3の問題が解決されるという因果関係の根拠はどこにも記されていない。これは論理の飛躍と言える。

少し整理してみよう。帰納法を行って論理展開を行う際に間違えてしまうケースは3つあると言われている。
  1. 間違った情報に基づいた結論
  2. 不適切なサンプリング
  3. 軽率な一般化
今回のケースはこの3つの問題が全て発生している。Chikirinさんが根拠とした2冊のアフリカの書籍に書かれている情報が間違っている可能性がある。

書籍に書かれていることが真と仮定して論理展開をしていると思うので、ここを指摘するのはナンセンスだと思うが、情報が真だとしても、
  • エジプト等の裕福な国々の例を挙げず、内陸部の最貧国を対象にしてそれをアフリカ全てにあてはめて考えていること
  • 事例として、香港・マカオのように一部経済がうまくいった地域だけを取り上げ植民地化が良い。と論じていること
以上は不適切なサンプリングであり、軽率な一般化であると言えるだろう。


さて、該当エントリはアフリカの最貧国が抱える問題に関して、問題提起する役割なり狙いなりがあったと思うのだが、植民地化もまたいいんじゃない?という声があがっていることを考えると、問題提起自体が失敗に終わっているように感じる。たぶん、普通に書評を書くとか、もっと他のやり方をしたほうがよかった。

僕が指摘した問題はコメント欄やはてブで繰り返し指摘されていることと同意なので、本エントリにそんな意味はない。おかしいぞ?と違和感を感じることがあったら、立ち止まらず考えてみるといい。というぐらいの主張でしかない。それを怠った僕自身がいうのもどうかと思うのだが。


最後に、政治的に自律し、経済的に発展し、文化・民族的に独立を保ちながら国家を運営して行く方法はどこにあるのか考えてみたい。結局のところ、時間をかけて教育を行い、KIVAやグラミン銀行などのマイクロファイナンスの制度を整え自立を促すしかないのだろう。時間もかかるし、援助の効率も悪いだろうが、それでいいのだ。

一企業のコンサルティングと異なり、国が抱える複雑な問題に簡単な解決策はない
ひとつひとつ解決していくしかないのだ。



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