昨日、出版社の方と電子出版に関してディスカッションした。
KindleやiPadの普及によって、電子書籍が一般的なものになっていくと、出版社もそれを見越して戦略を立てなければならなくなる。

Kindleで電子出版を行えば、様々な条件はつくものの著者の印税(正確には情報配信料などの言葉を使うのが適切か)を70%まで引き上げることが可能になる。

紙の場合は、著者に入る印税は10%程度だから、この印税はまさに破壊的だ。情報の配信や複製にコストが掛からないのだから、Amazonとしては、30%の取り分でも十分儲かる。ネットの世界ではプラットフォームを抑えてしまったものが圧倒的に強い。

出版社が今まで果たしてきた役割は、発掘・編集(企画)・印刷・流通・販促だ。電子書籍の場合、印刷と流通にかかるコストはゼロになる。出版社に残る付加価値は発掘・編集(企画)・販促だけになる。

発掘・編集(企画)・販促という残された部分で付加価値を残せる存在にならなければ、出版社自体、時代に淘汰されてしまうだろう。

故にこれからの出版社に求められるスキルは、

  1. 新人の著述家を発掘する能力
  2. 無名著述家が有名になるまでの初期プロモーション
  3. 初期段階で著者と有利な契約を結ぶこと

以上3点になるはずだ。
ご覧頂ければわかるように、この3点で優れた能力を発揮するには必ずしも組織である必要はない。

新人の著述家を発掘するのはネットやブログを見まくっている見る目のある人であればできると思うし、初期プロモーションも書店等のネットワークをもっている人以上に、影響力のあるソーシャル・メディアをネット上に持っている人が強力だ(有名な書評ブロガーなどがこれにあたるだろう。)

初期段階で著者と有利な契約を結ぶ(最初の三作は必ず○○書店から出すなど)ことは、法務の知識がないとなかなか難しいかもしれないが、法律家の助けを借りて最初にスキームを組んでしまえば、二回目以降は、個人でも無理なく実現できことである。

そうなってくると、電子出版の時代には、著者の取り分が多くなることに加えて、著者をサポートする周囲の人もフリーランスとして活躍し始める可能性が高いことがわかる。

もちろん、大手出版社が認めた品質というブランドは残すことができるし、それをプロモーションに活用することは十分可能だ。ただ、力のある人が個人として独立して働くようになると、彼ら個人編集者と伍して出版社が組織として争うためには、人材採用と育成の機能をもっと強化しなければならなくなる。OJTのみならずトレーニングの標準化と高度化が必要になるだろう。卒業生との強固なネットワーク(アルムナイ・ネットワーク)も同様に必要になるはずだ。