P.F.ドラッカーの残した言葉は素晴らしいものばかりだけど、中でも心に残っているのが、この一節。ドラッカーの父と、偉大な経済学者ヨーゼフ・シュンペーターのやり取りだ。(プロフェッショナルの条件より引用)
父はにこにこしながら。「ヨーゼフ、自分が何によって知られたいか、今でも考えることはあるかね」と聞いた。シュンペーターは大きな声で笑った。私も笑った。というのは、シュンペーターはあの2冊の経済学の傑作を書いた30歳ごろ、

「ヨーロッパ一の美人を愛人にし、ヨーロッパ一の馬術家として、そしておそらくは、世界一の経済学者として知られたい」

と言ったことで有名だったからである。
彼は答えた。

「その質問は今でも、私には大切だ。でも、むかしとは考えが変わった。今は一人でも多く優秀な学生を一流の経済学者に育てた教師として知られたいと思っている。(中略)私も本や理論で名を残すだけでは満足できない年になった。人を変えることができなかったら。何にも変えたことにはならないから。」
シュンペーターはこの会話の五日後になくなった。ドラッカーは、シュンペーターのこの言葉から3つのことを学んだと言う。それは、
  1. 人は何によって知られたいかを自問しなければならない。
  2. 問いに対する答えは、成長に伴って、変わっていかなければならない。
  3. 本当に知られるに値することは人を素晴らしい人に変えることである。
とのことだ。
ドラッカーの言葉は本質的なものなので、ブレようがないのだけど、今の自分にあった形であえて解釈しなおすと次のようになる。
  1. 自分自身が実現したいことを自問し続けることはとても大切なことだ。
  2. 個人的な願望や欲も、自分を磨くための武器になる。
  3. 成長に伴ない、願望や欲は姿を変える。個人的なものからパブリックなものへ。
  4. もし、人を素晴らしい人に変えることが出来たらそれは最高に価値あることだ。
と、言ったところだろうか。

どこかで見たことがあると思ったら、バガボンドで宮本武蔵が歩んでいる道と同じだということに気付いた。ドラッカーや自己啓発書を読まなくても、バガボンドを読んでいれば十分なのかもしれない。

この道に罠があるとすれば、2のフェイズを飛ばして3を実践しようとすることだろう。自分自身の磨き方が足りず、パブリックな貢献をしようとして、道が頓挫してしまうケースだ。諦めなければ最後には成功するけれど、結果的に遠回りになってしまうこともあるだろう。

今、自分がどのフェイズにいるのかも常に意識するようにしたい。自戒を込めて。


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