湯川鶴章さんがライブドアと組んで新しいblogメディアを立ち上げられた。IT潮流時代から、記事はずっと追っていたのだが、今回のメディア:Tech Waveも近いうちに軌道に乗ることだろう。

成功したビジネスの横展開というのは、非常に成功しやすい。共通で利用できるパーツが非常に多く、相互にシナジーをもたらすからだ。例えば、トヨタであれば、ボディやエンジンに関する基礎技術は車種が異なっても使い回しがきくし、マイクロソフトで言えば、ユーザーインターフェースなどは、使い回しがきく。予備校や資格の学校であれば、校舎や集客の仕組みは既にあるわけだから、学べる科目を増やすこと自体は難しくない。

今回のTech Waveの立ち上げで凄いと感じるのは、BLOGOSで実現したモデルをさくっと横展開したところだが、仕掛け人のtabbata氏は完全に「ブログメディア収益化の仕組み」が見えているようだ。

ライブドアのメディア事業部長のtabbata氏の言葉を読み取っていくと、ブログメディアのマネタイズには3つのポイントがあるようだ。 
  1. 良質の記事を定期的に投稿する
  2. 検索エンジン経由でのユーザー流入を増やし、コンテンツマッチ広告のCTRを高める
  3. 媒体そのものを低コストで運用する(営業部員や編集部員を自社で持たない)
言ってしまうとポイントはこれだけなのだが、もちろん以上のことを実現するためにtabbata氏は非常に細かな工夫をされている。(そして、それらの工夫は同時に他のメディアの参入障壁となっている。)

どういった工夫をしているのか、
TABLOG:検索経由でのユーザー流入は、ブロガーへの印税収入だ!
を追いながら見ていくことにしたい。


さて、まずtabbata氏のいう(ブログメディア上の)良質なコンテンツとは何か
ネット上でブログメディアをマネタイゼーションしていく文脈に限定して乱暴に言い切れば、記事の質とは、その記事が、どのくらい、ネット上の様々なコミュニティで話題になり、ソーシャルブックマークのブクマ数を稼いだり、有力な(個人)ニュースサイトや、当該分野の有力なブログから、多くの被リンクを獲得できるか?ということになる。
(そういう意味で言えば、ツッコミどころもあるが、極めて斬新な「問題提起」型の記事のほうが、退屈で無難な「模範解答」型の記事よりも、遥かに「良質」だと言えるのが分かるだろう。)
赤字で示した部分が一番のポイントだ。ネット上での論者たちの叩き合いは、プロレスだのなんだのと揶揄されることもあるが、間違いなく世間の注目を集める(≒アクセスを集める)のに一役買っている。(そして我々は悪態をつくためだけであっても、その記事を見てしまう。)

他にも、極端な見解や記事を見ると賛成であれ、反対であれ、つい反射的に反応してしまう。2chでいう釣りに引っかかった状態だ。まず、第一のすごさは「良質のコンテンツ」の定義をブクマ数や被リンク数と割りきって考えられている時点で、発行部数を得たいのか、ジャーナリズムを追求したいのか、どっちつかずで右往左往している既存メディアからは一歩も二歩もリードしている。

次に注目したいのが、(tabbata氏のいうところの)品質向上を実現する編集方針だ。
編集長の方は、もちろん、ライブドアの社員ではない。社員ではないからこそ、サラリーマン的な保身とは真逆の姿勢から、特定の専門分野でエッジの立った問題提起や、百家争鳴の議論のトリガーになるような深い考察を発表して頂けるものと信じている。
従来のメディアの概念からは随分外れた発想だ。会社の名前を汚さないことを第一に考える、既存の新聞社や雑誌社はなかなか怖くて、このような取り組みが出来ない。また、外部の編集長を迎えることによって、編集長のモチベーションを高めるとともに、問題があったときにライブドアが被るリスクも減らしている。

最後に書き手の質に言及したい。
これまでのフリーライターの業界などは、最初に原稿を提出したときにもらえる。記事1本ごとに幾ら?のギャラがほとんど唯一の収入源だった。しかし、ネット上でブログ形態で自分の記事を蓄積していく書き手には、これからは「検索エンジン経由での流入」⇒それにコンボで伴なう、「コンテンツマッチ広告の高CTR&アマゾンアフィリの高コンバージョン」という、ある種の「印税収入」が獲得出来るようになっていく。
フリーの書き手に活躍の場を与えたい。というのは、tabbata氏の本心だと思うが、フリーの書き手に活躍の場を与えることで、ライブドアは低コスト化(原稿料がいらない)を実現している。編集部員や社内で抱える記者を極力減らすことにより、媒体運用にかかる固定費もめちゃくちゃ少なくなっているはずだ。

一方で、こういった話は書き手にとって決して損な話ではなく、書き手自身のサイトにアクセスを流入させることによって、間接的に書き手に報酬を支払っていることになる。(記事品質の維持、向上は完全に市場原理に頼っていると思われるので、今後はこの点が課題になるかもしれない。)

さて、tabbata氏が意識しているこの一連の取り組みは、
  • 編集部門及び書き手のモチベーションアップ(高品質化)
  • 若手の書き手の発掘、育成(低コスト化)
  • 間接部門の排除(低コスト化)
  • 実名主義(会社のリスク低下、幅広いファンの獲得)
を実現している。まさにネット時代の新しいメディアの形だ。それを支えているのは、ライブドアが保有するメディアの総合力と、蓄積された広告マッチングのノウハウだろう。

さて、この記事に関しては、ジャーナリズムの視点から改めて続きを書きたい。読者ウケする記事だけを書いていていいのか?現在のテレビのように、視聴者に合わせてどんどん内容が低俗化していくということはないのか?そういう疑問は当然出てくると思う。

僕自身は問題ないと思っているし、メディアが発展していく中でそのジャーナリズムの精神を失い、不必要に巨大化していったその問題をブログメディアは解決してくれると思っているのだが、次回、僕なりの視点でまとめてみたいと思う。