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さて、今回は学生時代に起業し、成功した人の共通項に関して考えてみたいと思います。


■学生時代に起業し、成功した人たち

たくさんいらっしゃると思うのですが、4人の方をサンプルとして考えてみたいと思います。
  • 江副浩正氏:リクルート創業(1960年:大学新聞広告社として)
  • 孫正義:ソフトバンク創業(1980年:ユニソン・ワールドとして)
  • 堀江貴文:ライブドア創業(1996年:オン・ザ・エッヂとして)
  • 内藤裕紀:ドリコム創業(2001年:有限会社ドリコムとして)
4名の共通点は学生時代に起業していること。株式上場しているか、できるだけの財務基盤を持っている(持っていた)こと(リクルートは何度か上場の噂があったが、未上場)です。

また、本来であれば南部靖之氏:パソナ創業(1976年:テンポラリーセンターとして)も70年代に創業した経営者の代表として入れるべきだと考えますが、僕が南部氏の創業時の話などを詳しく知る機会がなかったため、割愛させて頂きました。笠原健治氏:ミクシィ創業(1999年:イーマキュリーとして)も候補にすべきですが、堀江氏と同時期であることと、東大出身の方が多くなるので今回は取り上げないことにしました。

前回のエントリで述べたようなリクルート、コンサルティング・ファーム、ベンチャーで1~2年経験を経て起業する隠れ新卒起業家の方々は本当にたくさんいらっしゃるので、取り上げたいところですが、今回は断念します。

■4人の共通項

1.事前にビジネスの修行をし、勝算を持って起業している

当 たり前のことですが、4人はいきなり起業したわけではなくて、その前に準備の期間があります。江副氏は東京大学新聞の広告営業として、孫氏は翻訳機の発明と権利売却を 通じて、堀江氏はIT会社でのアルバイトを通じて、内藤氏は学生団体の運営を通じて、それぞれ、将来の起業への足がかりをつくり、そこでの体験の延長線上 にビジネスを初めています。ビジネスの修行期間があり、十分やっていける自信がついた時点で起業しています。孫氏は当時のお金で1億を超える金額をシャープから得たし、堀江氏も就職するのが馬鹿らしくなるぐらいの収入を得るようになっていたから、もはや就職という選択肢を選ばなくても良かったのだと思います。

これは、前回のエントリで紹介した「成功した起業家にリスク志向の人はいない。」という言葉に通じるものがあります。彼らは合理的に自分の将来のの働き方、稼ぎ方を考えていたと思います。

# 起業は勢いでするものだ。という意見も聞きますが、そう主張されている方も実際には十分な見込みがあって起業されているケースが大半だと思います。ただし、準備しすぎて、起業の志を持っているにも関わらず、機会を逃している人がいることも多いと思われるの で。「勢いでする」という助言自体は間違っていないと思います。


2.自分が持っているリソースを活用する

学生時代に自分が持てるソースと言うのは極めて少ないと思います。しかし、どのような企業でも機会を利用し、僅かなチャンスと強みを利用して勝負をかけるしかないのではないかと思います。

江副氏が利用したのは、東大生というブランド。優秀な学生を企業に送り込みます、というセールストークは、起業後おおいに役立ったと思います。当時は「お金を払って採用広告を出すなんてとんでもない。」という時代。でも学歴重視の採用活動の中で、「ウチに次世代を担う優秀な人材がくるのであれば…」と 思わず広告費を出したところもあったのではないかと思われます。初期のリクルートは、東大生を全リスト化し、人材の優秀さを何段階かで評価して、一番いい 人材を自社に口説き、二番目にいい人材を大手企業に勧め…。というやり方をしていたと聞きましたが、これは真偽のほどはわかりません。ただ、ブランド大学 の学生をリスト化し、客観的な評価を加えていた。という点は、学生ならではの強みを有効に生かした例と考えられます。


孫氏が利用したのは、大学内の卓越した頭脳。
学生時代に1億円以上を稼いだ孫正義の「ブルドーザー営業術」 よりその手法を引用させて頂きます。
最終的に発案した250ものアイデアの中から選んだのが音声付き電子翻訳機。(中略)しかし決めたはいいものの、一人だけでプログラムを書き、設計していては卒業までに間に合わない。そこで孫氏は校内から専門家たちを集めプロジェクトチームを結成することにした。

ノーベル賞受賞者を多数輩出する大学だけに優秀な研究者や言語学者には困らなかった。コンピュータ学部の教授を中心に電話をかけまくり、熱心にリクルートした。だ がそのアイデアには興味をもった教授たちも「忙しいから」と断られてしまう。それでも先方に報酬を支払うことで合意を取り付けた。もちろん手持ちの現金は なかったが、試作機ができた時点で日本の会社に売り込み、その契約金を成功報酬として支払うことで納得してもらった。こうして一流の教授たちを口説き落と し、孫氏は自らの発明を商品化するための最強のチームを結成した。
早くからコンピューターに目をつけるという先見性、気難しい 教授たちを口説く交渉力、プロジェクトチームを束ねるリーダーシップ、自らがセールスに動く行動力は、孫氏個人の力ですが、最初のビジネスを成功させた裏 には、学内の優秀な頭脳を効果的に活用した。という側面もありそうです。


堀江氏が利用したのは、インターネットの黎明期に、ウェブ開発の最先端にいる。というそのポジションです。堀江氏は東大生だったけれど、学 校が持つリソースに頼らず企業した。という点が他の3人と異なるっています。外部環境を効果的に利用したことに代わりはないけれど、当時は同じようなウェ ブ開発の会社が多数あったはずで、その中で頭ひとつ抜きん出た存在になり、成長を続けたのはすごいことだと思います。

内藤氏が利用したのは、やはり京都大学の人的リソースでしょう。理工系に強い学生が多数在籍する京都大学ならではの開発力で、一気にサービスをオープンさせたのはすごいことだと思います。当時の京都は東京に比べてインターンシップ先も少なく、ビジネスの体験をするにはドリコムに加わるのが効果的だったのでしょう。ブログという当時出始めたばかりで、競合がいない分野のサービスに取り組んだのも良かったのだろうと思います。シリコンバレー的な起業出会った点が面白く感じます。


3.お金を稼ぐために起業した

起業には高邁なビジョンが必要だ。という話を聞きます。起業が目的で起業してはならない。とも聞きます。しかし、4人の発言や自叙伝を読むと、最も稼ぐのに合理的だったから、その事業を行っただけで、特に最初から高邁なビジョンや社会的使命を掲げていたわけではないです。

稼ぎつつ、高邁なビジョンも実現する。というのは、限られたリソースで起業せざるを得ない学生起業家には難しいのではないかと思います。高邁なビジョンは後付けでいいのです。力をつけてからでいいのだと思います。

詳しく見ていくと、江副氏と孫氏は最初から起業が目的で起業しているタイプと思います。マクドナルドの藤田氏や、ワタミの渡辺美樹氏なども、当初はとにかく起業したくて、起業するのに必要なお金を通帳に貯めるまで、毎日通帳を眺めながら暮らした。というようなエピソードを聞いたように思います。

堀江氏や、内藤氏、あとはミクシィの笠原氏などは、最初から起業が目的だったわけではなくて、結果的に起業する選択肢が一番合理的だったから起業したように思えますので、事業が既にあったので、起業した。というパターンは成り立ちそうです。

4人はその後、事業の形態を、劇的に変化させていますので、ある程度稼げるようになったら、その後より社会的価値が高く、より稼げそうな事業にダイナミッ クに事業を変化させていったように思います。力がついたので、出来る範囲が広がったのです。学生が起業する際はこういった考えが必要になるのではないかと 思います。



さて、続きは明日にでも書こうと思います。起業に必要な能力について、もう少し詳しく見ていきつつ、「起業にセールス能力は必要か」「コンサルティング会社で起業に必要なスキルは身につくか?」といった、起業にまつわる様々なウワサを分解して見てみたいと思います。