僕は「人」「組織」という切り口で10年ばかり仕事をしてきたんだけれども、だからこそ、

政治にしても経済にしても、一人一人が考え、判断できるように強くならなければ、どれだけ良い指導者が生まれてもムダだろう。

と、どうしても考えてしまう。だからこそ、ネットで政治や経済に対して自分なりの意見を述べている人に対しては、それがどういう意見であれ、大変好感を持ってしまう。

国という存在も、企業という存在も、僕の目から見たら似通った存在で、トップがどれだけ優秀でも、その下で働く一人一人が優秀でなければ、トップが変わったとたんにその組織はダメになってしまうんですよ。僕は、このブログの場を提供してもらっているライブドアという会社が好きなんだけれども、ホリエモンというカリスマが去った後も、一人一人が卓越した技術者で自己責任で生きる人たちだったからこそ、ここにきて企業価値をまた上げ始めているんじゃないかと思う。

もちろん、組織を構成する一人一人が優秀でも、トップが無能だと、やっぱり組織は腐ってしまう。しかし、日本は民主主義の国で、どれだけ腐った集票の仕組みがあり、民意が反映されない政治の仕組みになっていたとしても、結局のところ、その腐った集票の仕組みを認めているところまで含めて民意なんではないかと思うのです。

僕は多くの時間をネットを見て過ごすので、ネットの世界の論者達の意見はすごく大きく聞こえる。顔が見えないからこそ、論理的に話すしかないし、データをもとに議論する必要がある。でも、多くの人はまだまだネットで流れている意見なんて知らずに政治や経済に参加しているとも感じる。NHKと新聞と、僅かな知り合いから集めた意見で、日本や政治に関して論じている。

ネットの力は大きいように見えてまだまだ小さい。でも、それでもなお、そこで発言し何らかの形で日本にメッセージを発していこうとしている人たちの存在は素晴らしいと感じる。

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革命の前には必ず大規模な混乱が起こるように、政治も経済もぼろぼろで、過去の成功体験が通じないどころか弊害になってしまうような現在の状況は、まさに 革命前夜といっていい。そういう意味では現在の日本の状況を僕は極めてポジティブに捉えていて、混乱期に様々な思想が生まれるように、ネットの内外で、日本に対する様々な議論がされている状態は素晴らしいと思う。

そして、日本が民主国家である以上、良い方向に動こうとも悪い方向にふれようとも、それを選択しているのはやはり国民である自分たち自身であることを強く自覚すべきだし、たとえ、政権や政策や人物の選択で間違ってしまったとしても、それはより優れた民主主義国家に至るための国の成長の儀式のようなものではないかと思う。

「日本にはエリートがいない」と論じる方もいらっしゃると思うが、一部のエリートが国を動かすモデルはやはり20世紀で一種の限界に達したのではないだろうか。インターネットでのオープンな議論を通して、一人一人が成長すべき時期じゃないか。そんなことを考えます。

オバマ氏のスピーチも、ノーベル平和賞受賞の時のように疑問に残るものもあるにせよ、就任時のスピーチはやはり素晴らしかったと思う。
「自民も民主もなく、よりよい日本があるだけだ。」とかいってみたい。というか、思っている議員はいるだろうな。自民にも、民主にも。そのほかの党にも。

また、より優れた民主主義国家になるために、可能であれば
インターネット選挙をいち早く実現して頂きたいと思う。ネット投票が一般的になれば、投票者は自然とより多くの情報にアクセスするようになるはずだ。それは、一人一人が強くなることをきっと助ける。

余談だけれど、

自己の問題意識を「小説」という形で間接的に表現している作家もいる。専門的な分析は経済学者に劣るだろうし、具体的な実行力は官僚や政治家に劣るだろうけれど、多くの人の心に問題意識を届けるには効果的だと思うし、「一人一人ができることをする」という意味で、文章を書くという力を政治や社会問題にぶつけるというのは、イイ動きだと思う。

僕個人が読んだ本では、伊坂幸太郎氏の魔王がそれに当たるだろうか。
主人公の口癖、「考えろ、考えるんだ」というのは、一人一人が自分の頭で考え判断しなければならない。という作家の問題意識が表現されているし、優れた政治家があらわれた場合に、たとえその意見が正論だとしてもそれに扇動され自分の考えを失う怖さみたいなものもうまく描かれている。一人一人ができることをしよう。というメッセージも、「ムッソリーニの死」のエピソードを通じ、人間が持つ道徳観の素晴らしさと共に描かれている。

他には、随分昔に読んだスペースオペラ「銀河英雄伝説」もいろいろ考えさせられる。この大長編は、最終的には「最高に優れた独裁者」と「最低の民主主義」のどちらが国として素晴らしいか。という問題を論じている。最終的には、「最高に優れた独裁者(=ラインハルト・フォン・ミューゼル)」が率いる銀河帝国軍が、民主主義国家を打ち倒すのだが、皇帝の死と一部の宙域に民主主義の自治体を残すという形で、物語は終わる。この終わり方も非常に考えさせられる終わり方だ。独裁国家の強さと弱さ、民主主義国家の、脆さとしたたかさ。両方感じる

 生物の進化に最も必要なのは「多様性」だという。多様性があれば、環境の変化が起きても、その環境にあう種が進化し生き残る。民主主義とインターネットは現在のところ最も多様性をもたらす政治形態であり、ツールだと思う。きっと、今も日本は進化し続け、よい方向に向かい続けている。

夜明け前が、いちばん暗い。


魔王 (講談社文庫)魔王 (講談社文庫)
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銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)
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