IT業界徹底研究就職ガイド 2011年版 (日経BPムック)IT業界徹底研究就職ガイド 2011年版 (日経BPムック)
販売元:日経BP社
発売日:2009-11
おすすめ度:5.0
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日経BPさんから機会を頂き、「IT業界徹底研究就職ガイド 2011年版」のネット業界に関するページを書かせて頂いた。昨年までIT業界の中にネット業界を特に含めていなかったとのことだが、市場的にも人気的にも取り上げざるを得ない状況になったとのことだ。執筆させて頂いた「ネット業界特集」はありがたいことに巻頭に持ってきて頂いたが、ムックの中で僕が最も興味深く読んだのは、「Googleの人事評価制度」に関するインタビュー項目だ。

評価制度は難しい。組織の規模によって、構成員によって、時代によって、文化的背景によって、その他様々な要因によって、最適な評価制度は異なる。かつては最高だった評価制度が、現代では機能しなくなることだってあるのだ。

Googleは人材の評価を「ページランク」方式でやっているとのこと。もちろんそれだけで評価しているわけではなく3つほどの評価方法を組み合わせているらしいが、「ページランク」による評価は人材評価の中でも大きなウェイトを占めるという。ページランクと言えば、Googleの検索システムの考え方の根幹を担っている考え方で、「他からよく閲覧される、引用の多いウェブサイトはページランクが高くなる。」というものだ。人事評価に応用すると、他人から評価の高い人が評価した人は、高い評価になる。という考え方だ。そして、その評価は相互に(名前入りで)完全にオープンにされる。

この記事を最初によんだ時は、「ん?はたして有効な評価方法なのかな?」と疑問に思ったが、考えてみればGoogleにとってはかなり理に適った評価方法だ。もちろんGoogleだから、ウェイト付けの部分にその技術や評価制度の真の価値はあるのだと思うが、この人事制度はベストではないけれど、多くの会社にベターな評価と言えることができそうだ。優秀な人が集まっている組織ほど、より効果的に機能するだろう。

たとえば、人によっては公正と思える判断を下す人もいれば、いつもえこひいきをする人もいる。人事評価においては公正な判断を下す人ほど評価され、「ちょっとどうかな」という判断をする人の評価ポイントは下がるだろう。

自分に有利な派閥を作ろうという引力は働かないのだろうか。

人事評価のやり方で、僕がエクセレントだと思っている国内の企業にライブレボリューション(以下、LR)という会社があるが、LRの360度評価では、評価をする人は5人ランダムに選び、評価ポイントは社長も平社員も均一。という形をとっている(「宇宙一愛される経営」より)。確かに、このやり方であれば、「派閥を作ろう」という考え方は無くなる。全員に対して公正に振る舞おうという動きが生まれるだろう。ただ、ランダムに5人選ぶ分、「今年の評価は運が良かった、悪かった」という発想ももしかしたら生まれるかもしれない。(もちろん、LRの社員にそういう考え方をする方はいないと思うのだが、私のような俗物はつい、そう考えてしまう。)

Googleのやり方はどうか?どうしたって、派閥的なものはできるんじゃないかな。と思う。どのように派閥(評価が公正に行われない状態)を回避するかについては書かれておらず残念だったが、まぁ仮に派閥が出来たとしたら、他の人からの評価が低くなることでプラスマイナスゼロぐらいになるかもしれない。

無能な上司がいて、その上司が会社の不利益に繋がっている場合は、若手社員が結託して上司の地位から引きずりおろすことも出来そうだ。

こういうと必ず出てくるのが、「立場が下のものには、立場が上の人間の視点や考え方はわからない」という反論だ。しかしそれは、説明不足・コミュニケーション不足に過ぎないことが多い。結局は立場が上の人間の責任回避と怠惰の言い訳であるケースが少なくないのだ。Googleのやり方であれば、そのウェイトが大きいにせよ小さいにせよ、自分たち一人一人が経営と評価に参加している。という実感はあるだろう。これがまず素晴らしい。また、「みんなの意見はだいたい正しい」「邪悪にならない」というGoogleの価値観をそのまま評価制度に落とし込んでいるという意味でもまた、素晴らしい。

学生時代は「面白いやつ」「優秀なやつ」っていうのは、自分が「面白いと思う人」「優秀と思う人」に聞けばだいたい分かった。Googleでは立ち上げ初期から、スタンフォードの超優秀な教授のネットワークを使って、世界中にいるとんがった優秀な人を知り、一人一人ヘッドハントしていったという。その背景から考えれば、「優秀な人が優秀な人を評価する」というこの精度は非常に有効に機能するような気がする。

何故、学生時代は有効に機能していたこの評価方法が、会社に入ると有効に機能しなくなるのか。ひとつは、立場と経験が客観的な判断を阻害するようになるから、と思われる。後は、自己責任の考え方が浸透しているプロフェッショナルな組織である必要もあるだろう。更に、正当に評価された場合、他の多くの会社よりもらえる(精神的、金銭的、将来的な)報酬も高くないとダメかもしれない。

そう考えると、面白い制度ではあるが、国内企業に関して言うとごく初期のベンチャー企業に導入する以外に有効に機能する組織はなさそうだ。LRの評価制度のほうが、国内に導入するには最適な評価制度かもしれない。ただ、「本当に優秀な人を公正に評価する方法」の導入が難しいっていうのは、日本が経済的に長期停滞を招いている遠因とも言える。残念なことだ。

宇宙一愛される経営宇宙一愛される経営
著者:株式会社ライブレボリューション/増永 寛之
販売元:総合法令出版
発売日:2007-09-25
おすすめ度:4.5
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